成宮アイコ

【メインはTwitter、noteはチラ裏の日記】朗読詩人。赤い紙で詩の朗読ライブをしたり、生きづらさをテーマに文章。好きな詩人はつんく ♂ さん、好きな文学は風俗写メ日記。著書→『伝説にならないで』(皓星社)『あなたとわたしのドキュメンタリー』(書肆侃侃房)

成宮アイコ

【メインはTwitter、noteはチラ裏の日記】朗読詩人。赤い紙で詩の朗読ライブをしたり、生きづらさをテーマに文章。好きな詩人はつんく ♂ さん、好きな文学は風俗写メ日記。著書→『伝説にならないで』(皓星社)『あなたとわたしのドキュメンタリー』(書肆侃侃房)

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  • TABLO連載【加筆修正】

    ニュースサイト「TABLO」に連載をした過去記事に加筆修正をしてまとめています。

最近の記事

24時間営業をしている喫茶店で聞いた「お前がぜんぶ自分が決めたことだろ」

雨の日の歌舞伎町はザリガニの匂いがする。 コロナ渦で足を運ばなかった期間のうちにすっかり忘れていたのだが、久しぶりの雨降りの歌舞伎町でなつかしい匂い、と思った。ザリガニなんてたぶんいないのに、どこからなぜそんな匂いがするんだろう。(そもそも正式なザリガニの匂いなんてよく知らない気もする) 日が暮れると、風俗情報の看板ばかり目にはいる道のことを、わたしはとても気に入っている。 24時間営業をしている喫茶店。少し遠くの席で、「お前がぜんぶ自分が決めたことだろ」と、怒られてる

    • エモーショナルな毎日ではない

      そう、エモーショナルな毎日ではない。 なぜなら、心があまり動かないように注意をはらって生きているからだ。 貼れる予防線はぜんぶ貼る。あらかじめ心の防御水準をマックスまであげておく。 回遊魚のように生きている。 止まったら死ぬぜ、という心意気ではない、止まったらもう動けなくなるかもしれないからだ。わたしは容易にがんばることをやめる。 毎日ホットケーキを食べたいし、自分で焼きたくない。洗濯機をまわしたくないし、洗濯物もたたみたくない。文章を書かなくても会話で完了したい。 そ

      • 週7歌舞伎町日記

        ※これは2019年の冬にメモしていた日記です。2020年の春に緊急事態宣言が出て、解除され、それでもますます悪化していく社会状況のなか、いつまでも下書きのまま大切にしてしまいそうなので、またいつもの日常になる日までを生きるという気持ちで、「手放すため」に公開をします。 * * * だいたい毎日、歌舞伎町にいる。 いる、といってもいるところは正式には歌舞伎町ではないのだけれど、なんだかんだで毎日歩く。そのついでに散歩をする。さっき通り過ぎた黄色い看板の無料案内所から漏れ聞

        • あなたのエンターテイメントは人を傷つけてもいいものなのか?

          「文句を言う人ってだいたい当事者じゃないよね」って、歌舞伎町を歩きまわり、いちごミルクの缶ジュースを探していたのは、どんよりした気持ち甘いものでごまかせるかなと思ったからでした。 お昼ご飯を食べるついでに散歩をすることが多い裏通りで、わたしには見向きもしないキャッチの男性が「無料案内所」の看板をテーブル代わりにしていちごミルクの缶を灰皿代わりに使っているのを見かけてから、「そういえばいちごミルクって紙パックでしか飲んだことないな…」と、気になっていたのを思い出したのです。

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        • TABLO連載【加筆修正】
          33本

        記事

          勝手に他人をかわいそうな人にしてしまう癖

          勝手にかわいそうなストーリーを他人にあてはめてしまう  寒くなる時期に思い出すのは、大きな鍋で煮込まれたおしょうゆの匂い。  まだ幼いころのお話しです。  お母さんに連れられていったスーパーの駐車場に、玉こんにゃくの屋台が出ていました。冬が近づくとやってくるその屋台は、家では見たことがないような大きな両手鍋からグツグツと白いゆげを立ち上らせていて、子どもながらにおいしそうだなと思ったものです。  ただよう匂いに誘われて、「食べたい」とねだってたびたびそれを買ってもらって

          勝手に他人をかわいそうな人にしてしまう癖

          釜ヶ崎のおっちゃんとわたしが終わらせないでいる日常

          ドヤ街で初めて手に入れたあだ名 これは数年前の終戦記念日翌日の出来事です。  わたしはとある"おっちゃん"がどうしても行きたいと言っていた土地のことを何年も探していました。(そのおっちゃんは「あおさん」と名乗っていて、わたしも「あおさん」と呼んでいるので、今後は表記を「あおさん」とします)  あおさんは、大阪の西成・釜ヶ崎で出会った友人です。  初めて会ったときに、「成宮アイコ」というわたしの名前を見たあおさんは、「俺は横文字が苦手だから」と照れながらわたしのことを「あ

          釜ヶ崎のおっちゃんとわたしが終わらせないでいる日常

          自分は処方箋をもらう権利なんてないし、人一倍に性格がだらしないだけかも…という不安の先

          再び、通院前回の「いつも意識散漫、頭がとっちらかっている、頭の中に教授がいる」といった内容を書いたのですが、あまりにも生活と仕事に支障が出てしまったので、再度、通院を始めました。 そもそもは機能不全家庭がバックボーンにある抑うつと、それにともなった社会不安障害に長年悩まされていたのですが、その治療が数年前にやっとひと段落して突出してつらかった部分が落ち着いたことで、今度は、ふと根本にあった自分自身に気がついてしまったようです。 なんで自分は人よりすごくだめな気がするんだろ

          自分は処方箋をもらう権利なんてないし、人一倍に性格がだらしないだけかも…という不安の先

          人の話がちゃんと聞けない。何度姿勢を正しても、気づくと違うことを考えて壁のシミを見ている

          いつも意識散漫、頭がとっちらかっている片手でドライヤーをかけながら、「やっぱり今日のメールの文章はやなやつに見えたかもしれない、無理にでも絵文字とか入れればよかったな」と思いながら、テーブルに置いたスマホで好きなアイドルの週末のライブ情報をスクロール、目はテレビの『アメトーーク!』を見て、ドアのむこうで「あとでアイス食べるー?」と聴いてくる家族に「食べる」と大声で返事をしました。メールチェックをしようとしてPCを開いたら、ドライヤーのコードにひっかかって並べていたヘアオイルや

          人の話がちゃんと聞けない。何度姿勢を正しても、気づくと違うことを考えて壁のシミを見ている

          電気が切れても電気が選べない。取るに足らないようなことで世界から拒絶された気持ちになる

          文字は読めるのに、わけのわからない呪文に見えるずいぶん前から部屋の電気がひとつ切れています。 天井に取り付ける形の、よくある円形の電気です。蛍光灯が二重になっていて、どちらか片方が切れたからといっても生活ができるので、ずっとそのままにしていました。 もちろん、買いに行こうとは思っていたのですが、電気屋さんの前まで行っては躊躇して帰ってきてしまいます。「また買わずに帰ってきてしまった(=だから自分はだめなんだ)」と自己嫌悪することに疲れて、気づけば足も遠ざかり、買おうとする

          電気が切れても電気が選べない。取るに足らないようなことで世界から拒絶された気持ちになる

          黙っているのはなにも考えていないわけじゃないことをわざわざ説明するなんてうんざりする

          なにも思わなかったの? の裏側に見えるもの日々の報告をするような日常会話がどうもうまくできないので、自分の気持ちや考えていることを、瞬発的に言葉にすることが苦手です。だからこうして文章を書いているのですが、瞬発力を良しとする文化もあるようで、ときどきこんなことを言われます。 「なにも思わなかったの?」 戦後最大級と言われた殺人事件のニュースのときも同じでした。わたしが人生の糧にしている「アイドル」業界で事件がおこったときも、MeTooタグも、不謹慎なドラマも。思っているこ

          黙っているのはなにも考えていないわけじゃないことをわざわざ説明するなんてうんざりする

          DVが生むのは反撃じゃなく自己肯定感のなさ 祖父に暴力されたわたしは他人に暴力をふるわない

          怒りよりも先にあるもの港区南青山に、児童相談所と母子シェルターなどの施設が入る「子ども家庭総合支援センター(仮称)」の建設が予定され、さまざまな声があがっています。 テレビでは影響力のあるタレントさんが、「親に暴行されて『キーッ』となってる子が外にボーンと飛び出して、暴力をふるったりカツアゲしたりするかもしれない」といった発言をされました。 その発言を知ったときには、正直、「はあ? まじか…」と思いましたが、生まれ育った環境で感じ方はそれぞれですし、自分の常識がほか

          DVが生むのは反撃じゃなく自己肯定感のなさ 祖父に暴力されたわたしは他人に暴力をふるわない

          一生イヤホンは絡まるし、充電器は見つからない。散らかった部屋で自分を雑に扱ってしまう夜中

          部屋が散らかるのは調子が悪い証拠早く寝なくちゃ、と焦るほどに眠れない夜。 わたしは、真っ暗な部屋のなか、イライラしながらベットの足もとで探しものをしていました。朝刊を配るバイクの音が聞こえて、「ああ、早く寝なくちゃ」とますます焦ります。バイクの音はすぐに通り過ぎていきましたが、探しものは見つかりません。 部屋を明るくして探せばいいのですが、ここで蛍光灯をつけたらますます目が覚めてしまう…という強迫観念でつけられません。手さぐりでずっと探しているiPhoneの充電器はどこに

          一生イヤホンは絡まるし、充電器は見つからない。散らかった部屋で自分を雑に扱ってしまう夜中

          嫌な記憶に癒されてしまうから幸せになれない。

          懐かしいと聞いて思い出す世界には、だれもいない「なつかしさって、やっぱり感情というだけでは片付けられないものかもしれないよね」 インドカレー屋さんでナンをちぎりながら、机をはさんだ向こう側に座っていた彼はポツンと言いました。 Rooftopというニュースサイトで書いている連載 「『なつかしい』という感情はもう少し手加減してくれないと困る」 を読んで、「おもしろかった」と言ってくれたことから、かれこれ1時間ほどわたしたちは、「なつかしさ」について話していました。 「じゃあ

          嫌な記憶に癒されてしまうから幸せになれない。

          「死んだら負け」に救われる人と、救われなかったわたしが受け取った肉まんの皮のにおいのような優しさ

          その前に、できること「あのコインロッカー、いつの間に使えるようになったんだろう」 少し大きな荷物がはいる一番下の段。その右はしのボックスは少し前まで、使用不可の張り紙がされていたはずです。隣のボックスは使っていいんだ…と少しギョっとしたのでよく覚えていました。 あらゆる情報が雑に配色されている繁華街で、道のはじにさりげなく設置されていた灰色のコインロッカーは、よっぽど注意をしていないと風景に埋もれて見落としてしまいます。あの日、ニュースにうつったのが見覚えのある風景でなけ

          「死んだら負け」に救われる人と、救われなかったわたしが受け取った肉まんの皮のにおいのような優しさ

          わたしと忌野清志郎

          ※これは2015年9月7日にシミルボンに書いた記事です わたし、この人知ってる!小さいころ、路地の一番奥に住んでいたわたしは、家の前のアスファルトにチョークで絵を描くのが楽しみでした。 わたしはだいたい片目をつむった(多分ウインク)うさぎの絵を描いていました。お母さんはいつもチョーク全色を使って、なにやら派手なおじさんの絵を描きます。 チカチカした洋服とカラフルな髪の毛、目の上や頬まで色が塗られたそのおじさんの絵は幼心に強烈で、今でもはっきりと思い出すことができます。

          わたしと忌野清志郎

          ふっと意識が自分だけになる「自分スイッチ」

          ふっと意識が自分だけになる「自分スイッチ」思えば、小学校のころからそうでした。 「2組の転校生、なまってるけどかっこいいよね」「音楽の先生、すぐ怒るし、むかつかない?」「新しい文房具屋さん見つけたんだよ」 近所の女の子たちと、集団登校で盛り上がっている途中、なにげないことをきっかけに、たとえば道が日陰から日向になるとき、アスファルトがふっと明るくなったあの瞬間に、「自分スイッチ」のようなものがパチンと押されてしまうのです。 『あ、そういえばきのう観た映画に出てきたのって

          ふっと意識が自分だけになる「自分スイッチ」