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24時間営業をしている喫茶店で聞いた「お前がぜんぶ自分が決めたことだろ」

雨の日の歌舞伎町はザリガニの匂いがする。

コロナ渦で足を運ばなかった期間のうちにすっかり忘れていたのだが、久しぶりの雨降りの歌舞伎町でなつかしい匂い、と思った。ザリガニなんてたぶんいないのに、どこからなぜそんな匂いがするんだろう。(そもそも正式なザリガニの匂いなんてよく知らない気もする)

日が暮れると、風俗情報の看板ばかり目にはいる道のことを、わたしはとても気に入っている。

24時間営業をしている喫茶店。少し遠くの席で、「お前がぜんぶ自分が決めたことだろ」と、怒られてる人がいて、わたしに言ってるのかと思ってコーヒーを倒しそうになった。机に残る水滴を眺める。

そうです、わたしの人生はわたしがぜんぶ決めたことです。
だって今ここにいるのもわたしが決めたこと。

ときどき、心を失くす。
なにも考えなくても駅から家まで足が歩き続けられるように、意識しなくてもまばたきができるように。ときどき、心を失くす。

生きるための営みは自動的に継続される。なにも意識しなくても、起きて顔を洗い、化粧をし、手を動かす。強い意識がハッとわたしに戻ってくる瞬間だけ、ロボットのように自動的に生き、いつのまにか化粧をしているなんて立派だなぁと思う。

化粧水をぬり、乳液をつけ、日焼け止めをぬり、やっとカーテンを開ける。たとえ曇っていようが雨が降っていようが、日焼け止めを塗り終わるまではカーテンを開けない。よく無感情のままその判断ができるなと感心する。

わたしがわたしのことを動かすには、ちょっとした感情のブレが必要になる。

ほんとうはそのめんどくさい理屈を解明しようと思ってnoteを開いたのだけど、その事実に向き合おうと思ったら心を失くしかけたので、まだ無理だった。

穏やかでいたいのに、穏やかを保とうと努力すると心を失くす。
でもそれもたぶん、ぜんぶわたしが決めたことなのだろうと思う。