マガジンのカバー画像

散文詩

192
運営しているクリエイター

#詩

水と風の音 《詩》

水と風の音 《詩》

「水と風の音」

遠い昔 

僕等は静かな森の中で

ひっそりと約束を交わした

非現実的な永遠のお伽話

僕は水の音を聴き 

君は風の音を聴く

水面に波紋が広がる 
でも其処に水は無い

木の枝が擦れた様な音がした
でも風は吹いていない

僕等は文化的スラムな街に生まれ

幻想の中の森で出逢った

僕が瞳を閉じ 君が眠る時

水と風の音を聴く 続いている

何もかもが続いている

到着点を示

もっとみる
2024 第8病棟 《詩》

2024 第8病棟 《詩》

「2024 第8病棟」

2024度目の世界に立ち尽くす僕は

瓦礫に巣を喰う黒鼠の夢を見る

神様どうか御加護を下さい 
救いを下さいと囁きながら

其処に神が居るのなら祈るさ

迷える子羊を助けて下さいと

大地を引き裂いた断末魔 

欲に駆られた灰色の背徳

燻んだ瞳で何を見る

誰一人として聞こうとはしない

隣の人の泣き叫ぶ声

知らぬが仏 
馬鹿が原色を着飾り尻を振る

国際的な都市に

もっとみる
6•6•6 《詩》

6•6•6 《詩》

「6•6•6」

限りなく暴力的に

相手に対して報復を行う

其の周辺にある

立体を破壊して去って行く

隠語とスラングの類とか

口頭と字面の質差とか

リアリズムはいつだって
見えない場所に隠される

僕の中の傲慢さと無神経さが

独立し機能し始める

其れはある種の権力に似ている

社会的権力を握る事が
何よりも大切であり全てであると

無意味な必然性が

読み捨てられた新聞の様に風に舞

もっとみる
カティサークとXYZ 《詩》

カティサークとXYZ 《詩》

「カティサークとXYZ」

僕はある日 

風の吹く丘の上で君と出逢った

キラー通りの安ホテルの前には
朽ち果てた車が停めてある

古い時代のアルファロメオ

通りでは犬を喰らう国の人々が

鯨を殺すなと叫んでる

ミートソースを口の回りに付けた

巻き毛の少女が

ピストルズのレコードを

手に持ち僕の前を通り過ぎる

シーバスリーガルとカティサーク

ポケットの中のコイン

僕はカティサーク

もっとみる
一人称 《詩》

一人称 《詩》

「一人称」

私は…で始まる

一人称の文章を永遠と書いていると

何故だか警察の

取調べ室での調書みたいだと

妙な風景と其処にある
終わりの無い長い時間を思い出す

調書に文学性を

求められては居ないのはわかるが

書き上げた調書を読み上げるのを
ただ退屈に聞かされる

絶望的に感情の欠落した事柄だけが

時間軸に従い記されている

其れを警察の上官に提出して

添削され赤字で修正及び追記

もっとみる
夏霞 《詩》

夏霞 《詩》

「夏霞」

大義名分とか 不変の真理とか

価値観の錯乱とか

閉塞した状況にある抜け道だとか

浮浪者の様に貪り酒を煽り

深夜に台所のテーブルで
詩を書き続ける事だとか

赤子を抱いて
子守唄を歌う反社の女だとか

永遠に失い続ける宿命だとか

人生における
正常な軌道から ずれ始めた事だとか

確かあれは三日前 

空から綺麗な星が落ちて来た

その時 始めて知ったんだ

幻想に似た夏霞

もっとみる
スカイツリーとウクレレ 《詩》

スカイツリーとウクレレ 《詩》

「スカイツリーとウクレレ」

其の機能は全て 

論理的で倫理的であり

其れに伴う取り扱い説明書と

保証書が添付されている

スカイツリーはいつに無く

高くそびえ立ち

今もなお天高く 

伸び続けている様に見えた

救世主教会の尖塔 

頭頂部には其れが有り

地上の僕等を見下ろしている

街の路地裏は砂利で出来ており 

草すら生えない荒地だった

其処には 
無能、無知、馬鹿や偽善は

もっとみる
有り余る余白 《詩》

有り余る余白 《詩》

「有り余る余白」

不自然な程の有り余る余白

形容詞の選び方や句読点の打ち方が

何処か微妙に
ずれた文体の中に僕は居る

世間とは外れた場所で

僕の中の何かが進行している

少数者の為にある様な文章を好んだ

其れを読む人間なんて
ほとんど居ない

誰かが僕に占いを信じますか 

そう聞いて来た

僕は即座に興味は無いとそう答えた

其処に並べられた 

とりあえずの道具に

特別な価値と力

もっとみる
悪魔と青く深い海のあいだで 《詩》

悪魔と青く深い海のあいだで 《詩》

「悪魔と青く深い海のあいだで」

その水は何処までも
透明で純粋だったんだ

それを知る者は誰も居ない

灯りすらない夜の闇 

誰かの足音

くだらない
辻褄合わせに僕等は泣いている

銃声の音が聴こえますか

また大切な何かが失われて行く

知らぬ間に

目隠しをしていた愛の調べ

不釣り合いな恋に

傷付くのが怖かった

水平線の向こうには
花は咲いていますか

僕等の話を聞いてください

もっとみる
Good Luck 《詩》

Good Luck 《詩》

「Good Luck」

ソファーで猫が眠っている

アメリカンショートヘア

バルコニーから夜の海 

その上に琥珀色の月が輝いて

僕はワインの瓶を静かに開ける 

そんな風景を信号待ちの
サイドミラーの中に描いて

素敵な夜を想像していた

信号は青に変わり

僕はアクセルを踏み込む

時事的で複雑な
定義に溢れた街を走り抜ける

思想性は何処にあるの 

助手席の彼女はそう僕に聞く

多分

もっとみる
ハイボール 《詩》

ハイボール 《詩》

「ハイボール」

小さいけれど確かな幸せって

人は見逃してしまう

夏の夕暮れの風が心地良かったり

あの娘が笑いかけてくれたり

確か前に 

私は不適切な人間だと 
あの娘は話してた

其れは社会に対してであり 

また自分自身の心に対して

上手くコントロール出来無いんだ 

そう言って俯いた

居場所がわからないと

だったら此処に居れば良い

此処が君の居場所であり
僕の居場所だよ

もっとみる
善導 《詩》

善導 《詩》

「善導」

其れは無意味で

硬直した幻想でしか無い

四方を囲む幻の壁 

其の中で僕は

単純で一面的な
発想の微笑みを浮かべる

疑心暗鬼を押し殺して

口に出すべき
事柄で無いものの中に真実はある

非論理的で無意味な心の通わぬ善導 

僕は今日も異論はありません 

そう笑って答える

世界の認識なんて知らない 

社会の秩序だってどうでもいい

お前達の事だって興味は無い

僕は自分の

もっとみる
龍の国 《詩》

龍の国 《詩》

「龍の国」

金で買えない物なんて
誰も欲しがらない

いつから俺は

そんな世界の中に居るんだろう

神経が少しずつ狂い始める

まだ死ぬには早過ぎる 

理由なんて無い

ただ漠然とそう思っただけだ

尻の軽い女と口数の多い女は苦手だ

買収される奴と買収されない奴

世の中には明日の来ない
今日だってあるんだぜ

教えてやろうか 

それがお前の口癖

新月の闇 

その中に

あるはずの無

もっとみる
ALL YOU NEED IS LOVE 《詩》

ALL YOU NEED IS LOVE 《詩》

「ALL YOU NEED IS LOVE」

時の海の中にひっそりと漂う

今は無き物質と其の記憶が

長く白い砂浜を音も無く歩き続ける

彼女はまだ僕の中で歩き続けている

確か随分前にも君を見かけたよ

同じ時間に同じ場所で

そう 話しかけたかった

微かな波の音が聴こえた

太陽は動かず時間は止まる

時々僕は彼女に出逢う 

ふとした瞬間に

何処か遠い世界にある場所で僕等は
強く繋が

もっとみる