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いつかのための詩集

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どこかで酒と出会うための詩集。
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2019年2月の記事一覧

【ショートエッセイ+詩】たばこにまつわる憧れなど。

【ショートエッセイ+詩】たばこにまつわる憧れなど。

本日は冒頭にショートエッセイを、その後に詩を載せます。少しばかり書いた動機だとか、何を描きたかったとかを書きたいなと思いこんな形式にしてみました。では、始めますか。

唐突だけれど、わたしはたばこを吸ったことがないのです。ふかしたことも、ありません。

中学生の頃は早熟な(?)同級生がそれを(あまり美味しくなさそうに)顔をしかめて吸っているのを見て「うわー、吸ってるよ」と思っていました。しかも後で

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空想日記第一番冬・土と熱

空想日記第一番冬・土と熱

呼吸している 息が跳ねかえる

外は真っ暗 少なくとも

わたしの周りは 真っ暗で

誰の目も届かない宇宙の 端

という名の 羽毛布団の中

たぶん 朝は来ているのだろう

オレンジのライトが 土を照らす

蒸らす 焦がす

無邪気な熱が わたしの

人工的な 思い群を

頭のてっぺんから 蒸発させてゆく

水気は あなたに届くだろうか

科学的で 情緒的な考察をひととき

といっても まあ

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お日柄よく、柄にもなく

お日柄よく、柄にもなく

いのちに火をつけます

燃えます

いのちに火をつけます

くすぶります

水をかけたって燃えます

日が当たったってくすぶります

いのちは大胆です

大胆に回転します

たまにいのちⅡをまきこみます

いのちⅡはおどろきます

一緒に燃えます

一緒にくすぶります

しかし

いのちは止まりません

一緒にも止まりません

親指ひとつで燃えます

人差し指ひとつで消えます

目を開けても燃え

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ついたり、きえたり、願ったり

ついたり、きえたり、願ったり

明滅 明滅

今日も、また

明滅 明滅

あかりがつき、消える
 
 
 

またひとつ

部屋の明かりが灯りました

オレンジのカーテン

中には

ダークブラウンの年代物テーブル

その上に

ニトリのテーブルウェア

ずらり

家族の笑顔がありました

似てる顔似ていない顔

総じて笑顔

明るいな

またひとつ

部屋明かりが灯りました

ピンクのサンダル

ベランダから

叫ぶ人

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日々ポテトあるいはチップス

日々ポテトあるいはチップス

今はもうない

実家の階段の途中



クソ狭いステップ

に身を

かがめ 今日もまた

何度も読んだコミックに熱中

意識の外に母の声が

宿題とか やれとか

へえ

そうかコレ

6巻はこんな感じだったっけ

主人公のバッシュまがいが

破れ敗れた

シーンを読んでる、いや

見てる

空想の負けを見ながら

狭いスペースで

心地よい広さをとるには

どうしたらよいのか

考えていた

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空想日記第七番夏・水と幻

空想日記第七番夏・水と幻

練習試合は午後のはじめから

水道水を勢いよく噴射

かかる手ごろな虹を裂きつつ

わたしに一言

ごめんごめんと

伝えるきみ

修学旅行のミサンガが

切れかけては結びなおされる

晴天南中真っ只中の

白昼夢に打たれる

わたしは素顔

あおぞらを描く あおぞらを

校庭の端の

緑色の雑多なホースから

あふれてくるは夕方ののろし

ずいぶんと冷たい

まくる袖にしみこんでいく

少しの擦

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スイートホームな小人たち

スイートホームな小人たち

私には帰るところがある

時にそこは暖かかったりする

寝室が

味噌汁が

2歳児の手が

私には帰るところがある

時にそこは冷たかったりする

サッポロ黒ラベルが

一白水成が

それらを注ぐグラスが

私には帰るところがある

のだ

少しだけ誇っていいだろうか

だからこそ

ボロボロになれるらしい

思う存分

2歳児に負けぬほど

だからこそ

ボロクソに言われてもいいらしい

扉を

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インディゴ・ブルーのシャツの袖

インディゴ・ブルーのシャツの袖

月が青いな 

いつにも増して

気分のせいか

不意に

ギターが鳴り響く店

僕が視線をやる先には

ちいさな

男がすわる

粗い木目の

椅子に腰掛けて

そいつは昔の

流行歌を流す

一つも調子が外れないことが

調子外れであるような夜

名もなき

スコッチのロックを

指でかきまわす

ぼうっと蒸留酒の

棚を見つめる

名も知らぬあなたの

上気した頬に

見とれている

ひとり

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ムーン・オーシャンの夜話

ムーン・オーシャンの夜話

舟を漕ぐ

月の道のまんなかを

僕はゆく

片手に

スキットルと

満潮の入り江を

とじこめる

バーボンは振り返らせる

笛を吹く

そんな時間でもないのに

こたえたのは

調子はずれのうみねこと

急ぐ蟹の群れ

ささくれをけずった

木製のオールは

今宵も手には少し大きい

身に余るものたちを

ダーク・グレーのハット

の内側にしまって

少し

灯台を見る

(彼は元気にしてい

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ディアフューチャー/ディアパスト

ディアフューチャー/ディアパスト

レシートを引っ張り出した 夕べ

過去の財布から 一枚 二枚…

上から順に読んでゆく

レシートを読んでゆく

昨日はラーメンなんて食べたのだっけか

目頭が 気がつくと熱くて

手元のミカンを転がしていまう

自分の心情に待ったをかけている

いま

ああ、精算できなかった分の

気持ちがそこ、ここに

散ってゆく

みかんの皮を剥く

オレンジ色の内側に

置いてきた重い虹色の

油を見た 

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火星のひとよ、さようなら

愛する人は地球の人で

愛した人は火星の人さ

「さようなら」の口の形が目に浮かぶ

置くとパスする七並べみたいな

意地悪な笑みが似合う

火星の人よ

若葉の頃は不純さまでもがまっすぐで

葉脈の隅々まで

極彩色の血がうごめき駆ける

季節はまあ予想通り去って

君のいない地球で

僕は少し太った

階段をのぼり

階段を のぼり

熱いな

ふうふう ふうふう

ずるずる ずるずる


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モノラル、モノクローム、響く鐘の音

モノラル、モノクローム、響く鐘の音

未だに自分のたましいに

重さがあるなどとは考えられず

今日も腐っているわけなのですが

ああ から ころ 鈍い色の音

教会の端っこ 犬小屋の隅

僕の空想はそこに生きてます

そこに生きてるものを掬ってます

どうやらちいさな生き物のたましいは

揮発しやすいものであるようで

あとに残らない虫のたましい

あとに残らない僕のたましい

モノラル、モノクローム、響く鐘の音

ステレオタイプに

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空想日記第三番夏・紙と煙

空想日記第三番夏・紙と煙

押し入れから引き出してきたノートにはあ

の夏の先が書かれていたような気がして、

どうにも僕は開くのをためらっていた、こ

の紙の先はどこへつながっているのだろう

朝の鳥たちはもう夕方に向かって飛んでい

る、誰も追いつけない時間を超えた速さを

身にまとっている、僕の手には花束、いつ

でも花束。君には両手があり手に取るかど

うかは自由な意思に任せられているような

心持がした、と33ペー

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モア・スローリーに世界よまわれ

モア・スローリーに世界よまわれ

たとえば船一隻のほどのなみだを積んで

後悔の旅に出かけるとして

どれほどの期間が経ったら

ぼくはなみだを使いきれるだろ

最初の港で出会ったひとは

大きなヒスイ色の目をもって

ぼくの産毛と産毛の間を

じっと見ていたものであった

あなた あなた 自分の宝石に

耐えられずカモメとともに飛んだ

あなた

あなたと過ごした日々を浮かべて

船からまた雫がこぼれてく

ゆらゆらきらきらその

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