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ムーン・オーシャンの夜話


舟を漕ぐ

月の道のまんなかを

僕はゆく

片手に

スキットルと

満潮の入り江を

とじこめる

バーボンは振り返らせる

笛を吹く

そんな時間でもないのに

こたえたのは

調子はずれのうみねこと

急ぐ蟹の群れ

ささくれをけずった

木製のオールは

今宵も手には少し大きい

身に余るものたちを

ダーク・グレーのハット

の内側にしまって

少し

灯台を見る

(彼は元気にしているだろうか)

確かめようのないことばかりを

逐一 いちいち 思い浮かべては

微笑で受けて 海に溶かした

僕が去ったあとにも

きっとこの道は残るのだろう

そうして

僕のおじいさんも

お父さんも

お兄さんも

この入り江から

たくさんの憂いを流しては

オールをひと漕ぎ ふた漕ぎ

誰にも語られないようなことが

これほど胸を安心させるとは

(それでも、海はすべてをさらってゆく)

金銀その他散る

星よ

星よ

この空よ

今日もお前たちはその気もなしに

海の憂いをきれいに映す

そうやって僕らは

また、誘われてゆく

僕らは大海に散る

塵がまた僕らになる頃

夜空の星星は

一層輝きを増すことだろう 

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。