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空想日記第三番夏・紙と煙

押し入れから引き出してきたノートにはあ

の夏の先が書かれていたような気がして、

どうにも僕は開くのをためらっていた、こ

の紙の先はどこへつながっているのだろう

朝の鳥たちはもう夕方に向かって飛んでい

る、誰も追いつけない時間を超えた速さを

身にまとっている、僕の手には花束、いつ

でも花束。君には両手があり手に取るかど

うかは自由な意思に任せられているような

心持がした、と33ページに記載してありま

した。さんさん陽がふるページ中段。
 

(…。)

(こんな時間か。) 


ああ心には残っていた、と思う。
ノートにも残っているくらいだから。
おーい。
から始まるほんの少しの出来事。
夢からさめた僕はまた違う夢を見てるのか。
紙上で君が笑って跳ねて。
一層曇りは消えてゆく、ここで。
それとも未だに全ては夢の中なのか。
ああやっぱり開くべきではなかったのだろか。
僕は玄関のページをこじ開けて。
坂道を素直に下ってゆくのさ。
あの夏のにおいはこっち。
違うそっちではなくて。
あの夏のにおいは、こっち。
目次だけちぎってきたんだ。
においをかげば場所がわかるでしょ。
そう君が微笑んでいる気がした。
砂利を飛ばして先へ行き学校。
がんばろっかな、煙を目指して。
3年3組後ろのドアへ。
開くと黒板消しが落ちてく。
落ちる、避ける、叩く、床を。
心に今も煙が舞ってる。
最後の言葉をぼくは待ってる。
君が消してく最後の言葉を。
煙だけが知るこの世の秘密。
白く苦い粉を今も嚙んでる。
緑の木々がまた風揺らしてく。

(一切は過ぎてゆくのであり)

時と擦れた、傷だけが残る。

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。