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モア・スローリーに世界よまわれ



たとえば船一隻のほどのなみだを積んで

後悔の旅に出かけるとして

どれほどの期間が経ったら

ぼくはなみだを使いきれるだろ

最初の港で出会ったひとは

大きなヒスイ色の目をもって

ぼくの産毛と産毛の間を

じっと見ていたものであった

あなた あなた 自分の宝石に

耐えられずカモメとともに飛んだ

あなた

あなたと過ごした日々を浮かべて

船からまた雫がこぼれてく

ゆらゆらきらきらその他大勢が

大挙し大挙し海のまんなか

張り合う銀色の群れにもまれて

ぼくの涙は擦れて消えてく

先の港で拾ったひとは大きい

大きな影が透けて見えてた

夏の日光が照り付ける甲板

光の色は君の胸色

転げまわった替えのマストの上

海の底をみせてと言った

あなたの底をついに見なかった

あなた あなた 自らの深海を

はかりかねて笑顔で振るまった

あなた

今日もあなたの深海へ

旅立つようにとなみだを散らす

今日も甲板 揺れる水面の

はかれぬ奥に 君の胸色

ああ

あれからずいぶん

まわりまわってここにいるけど

どこまで行っても

なみだは減らない

減らない涙の一筋の謎

あなたが沈む大海に問うてた

しょっぱい




酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。