火星のひとよ、さようなら



愛する人は地球の人で

愛した人は火星の人さ

「さようなら」の口の形が目に浮かぶ

置くとパスする七並べみたいな

意地悪な笑みが似合う

火星の人よ

若葉の頃は不純さまでもがまっすぐで

葉脈の隅々まで

極彩色の血がうごめき駆ける

季節はまあ予想通り去って

君のいない地球で

僕は少し太った

階段をのぼり

階段を のぼり

熱いな

ふうふう ふうふう

ずるずる ずるずる

階段を上り下りして運動し

へばったとお思いだろうか

否、田舎の駅二階にある

ラーメン屋で

麺と戯れているだけである

まあ

脳細胞は茶色に枯れて

腹細胞は黄金色の日々

少し腹で考えるようになり

なんだ、まあ

極彩色の血は戻らない

そろそろ後ろ向きな考えはやめ

澄んだスープに飛び込もう

木星についた頃

僕らは他人であるからして

笑って麺をすするくらいは

訳もなし、訳もなし

木星の日本人になりたいな




ところで

ぼくは幹にしがみついていたよ

若葉の頃

からだごと預けて

幹は宇宙であって故郷であって

それを失うことは

死ぬことと同じかと思われた

けれどもそれはもう

いかんせん

まるごと火星の出来事なのであった

(おれは 地球人なのでな)

だから今こそ

葉で唇を切って

赤い血を流して

かけてゆくのさ

星を食う妄想をしながら

夜空のさきへ またさきへ

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。