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#エッセイ
第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド−3_Q .
Vol.3 テルル・デカ・ダンス
蒸し蒸しとした空気がいつの間にか少し軽くなった気がした。夏の澄んだ青がどこか薄くなって入道雲が小さくなっている。小さな窓から見える木漏れ日に僕は目を凝らしていた。この檻の外で起こっていることがどうなっているのか。僕は思いを爆ぜながら静かな時を過ごしていた。彼女達が来なくなってからはや1週間ー。来なくなったという事は、彼女達はきっと動き始めたという事なんだろうと思
第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド−2
Vol.2 悪戯のアリストテレス
「ルドラになりたい。」そう決意してから、私は具体的にどうしたらいいのか分からなかった。彼にこの想いを伝えるべきであるか。否か。彼が私にそんなことを言ってしまっても、裁判中の彼は何も言ってくれないかもしれない。ここで、ルドラのなり方なんて言ってしまえば、いやでも証拠になってしまう。そんなことはしないだろう。でも、そんな用意周到な彼がどうして警察に捕まってしまったのか
第15章 運命の女神−2
Vol.2 仙石原
シヴァ:教祖は、あなたに興味を持っています。
セレン:なぜ?
シヴァ:あなたは、我々には向かい、降り注ぐ不幸の豪雨を前にしても、我々に牙を向けてきた。その、行動力に。その執念は、教祖の心すらも動かしているということですよ。
セレン:教祖の心を動かしても僕には何の嬉しさもない。
シヴァ:まあまあ、そう言わずに。我々からすれば、素晴らしいことです。我々が教祖の心を動かすこ
第十五章 運命の女神-1
Vol.1
「私が貴方と初めて出会ったのは小学生の時。多分覚えてないと思う。」
黒奈は、僕の方を見ていった。僕は黒奈の言う通り、何も覚えてはいない。黒奈と出会ったのは大学生に入学してからだったからだ。
「あれは、私が九州に空手の遠征に行った時。鹿児島県の鹿屋という場所にあるバラ園に行くことになったの。バラなんてあの頃の私には興味はなかったけど、両親はせっかくの九州ということではしゃいでいたわ。私
第十一章 恩讐の彼此
Vol. replay evil with evil
部屋に戻ると、妹がソファーに寝転んでテレビを見ていた。テレビでは年末番組が放送されており、もう今年が終わるのだと僕に告げているようだった。時刻は、午後10時ー。寝るにはまだ少し早い気がした。かといって、何か特段したいこともない。年末番組を見るほど退屈なこともないわけだし。僕は、自分の部屋だった場所に置いたリュックから本を取り出し、読むことに