崔 真淑/エコノミスト『投資1年目のための経済・政治ニュースが面白いほどわかる本』(大和書房)
記事一覧
個人投資家はトレーディングで本当に投資リターンを出しているのか?〜損失要因をデータから探る〜
ブラックマンデーという言葉が、久々にメディアから聞こえてきました。8月5日の日経平均株価が歴史的な暴落により、過去の株価暴落との比較のために使われました。その値下がり幅だけでなく、その後の値下がり率も歴史的なものとなりました。このコラムを執筆している8月16日現在は、日経平均は3万6千円を回復しており、少しづつ日常を取り戻しつつあります。
とはいえ、新NISAで投資を始めてみた方、私のように
西武・そごう、ストを株主利益と従業員利益の立場から考える〜ストが起こる潮流について〜
西武・そごうの労働組合によるストライキに対して、応援する声もあれば、厳しい声も出ていたりと注目が集まっています。私は、今回のストライキに対して株主利益と従業員利益の2つの立場から考察する必要があると考えています。この考察が、経営者、ビジネスパーソンが将来予測をする際のヒントになればと思います。
株主利益の立場から 株式会社の使命は何かと言われたら、あなたは何と答えますか?社会・従業員・取引先・
なぜ海外機関投資家は投資先企業のダイバーシティーを促したいの?〜データ解析から見えた意外!?な事情〜
上場企業に対して人材のダイバーシティ(性別・年齢・人種・能力・障がいなど)を促すことが上場市場(≒ガバナンスコード)から求められています。表面的なダイバーシティとして、トークン(象徴)のように女性役員を増やして株主アピールをするのではなく、将来的なことを見据えて管理職のダイバーシティ、誰もが働きやすい環境作りなどの長い目で見たダイバーシティ構築が求められています。下記の記事もあるように、最近では
もっとみる2022年を振り返る〜キャリアの「焦り」はリカレント教育でカバーしていこうと感じた1年〜
2022年も、もうすぐ終わろうとしています。私にとっては、今年は全ての価値観が吹き飛ぶような1年間でした。というのも、出産と育児という初めての経験をさせてもらったからです。
仕事には、産後3ヶ月で復帰にしました。早期復帰の背景には、役職的に育児休業が取得できないというのもありますが、「焦り」があったからです。仕事が無くなったらどうしよう・・という「焦り」です。しかし、本当に有難いことに産後も仕
出産準備10万円も嬉しいけど、出生率上昇の兆しが見える中で、こういう支援策があると更に嬉しいかも?!〜有難いと感じた支援策ベスト3〜
出生率の低下が止まりません。コロナ禍の2021年の出生数が過去最小の84万人を記録しました。感染拡大で婚姻や出産を控える動きがあったと推測されています。しかし、これは本当でしょうか?
実は、一部の女性層に限って見ると、むしろ出生数が上昇しているのです。下記の記事にあるように、主にデスクワークを主体としている女性の2021年出生動向を見ると、子どもの数が1.74人と19年ぶりに上昇しているのです
為替介入は、金融市場に影響力を与えられないは本当か?〜33ヵ国データの最新研究で見えた動き〜
急激な円安による物価高への影響が懸念されています。急激な為替変動は企業活動にネガティブな影響(投資に消極的になるなど)が及ぶことが先行研究でも報告されています。物価高だけではなく、日本経済停滞も懸念されています。こうした環境を見過ごすことはできないとばかりに、下記の記事が指摘するように日本政府は為替介入を行なっているようです。つまり、政府が金融市場でドル売り円買いを行うことで、円安を食い止めるよ
もっとみる社会人博士課程学生の日常〜英語査読論文という壁について〜
先日、ある尊敬するジャーナリストの方から、社会人博士課程学生に関する取材を受ける機会がありました。社会人の学び直しといえば、リカレント教育と、リスキリングがあります。下記の記事では、リカレント教育は個人手動で行うことが多く、リスキリングは会社主導のケースが多いことが記載されています。そして、リカレント教育は社会人が教育機関や社会人向け講座に戻り、学び直すことを指します。そして、このコラムを読んで
もっとみる男女賃金差の企業開示義務化は、賃金格差と企業価値にどのような影響をもたらすのか?〜2006年のデンマークの事例より〜
多くの国が、男女賃金格差の是正に動いています。例えば、男性が平均的に100ドル稼ぐと、女性はドイツでは78.5ドル、イギリスでは79ドル、EU諸国では平均83.8ドル(Eurostat 2016時点データより)と、女性の方が賃金が低い傾向にあります。もちろん、女性が家事育児のために時短勤務を選んでいたり軽作業を選択しているからではないかという反論の声もあります。しかし、これは同様の仕事や職種での
もっとみる戦争はESG投資家の行動を、どのように変化させたのか?〜ESG理念と投資リターンのジレンマ〜
ESG投資のパフォーマンスに注目が集まっています。というのも、下記の記事にもあるように、ここ数年のESG(環境・社会・企業統治)意識の高まりで、ESG投資家(国連PRIに署名した機関投資家)が投資対象に脱炭素の動きから石油や石炭関連の株を持たないことが増えてきたのです。持続可能な社会作りとして素晴らしい取り組みに見える一方で、ESG投資の理念を再考する契機にもなりつつあるのです。
ESG投資の
プロ投資家(機関投資家)は、株主総会のESG関連議案に対して議決権行使をどのように行使する傾向か?〜大型ファンドと中小型ファンドの違い〜
6月の株主総会シーズンを目の前に、機関投資家(プロ投資家、私たちの年金を運用するファンド等を含む)の動向が注目されています。特に、ESG関連(環境・社会・ガバナンス関連)の株主提案議案が、下記記事にあるようにアメリカでは昨年比20%も増えていることから、日本でも増加する見込みとなっています。しかし、世界共通で株主提案が50%以上の賛成率を取るようなことは、滅多に無いのです。少し古いデータ参照にな
もっとみるアメリカのように「ジョブ型雇用」と「雇用の流動性」を高めようと聞くけど、アメリカの労働環境は意外に手堅い側面もあると感じた話〜ファイナンスの視点から〜
部署やポジションごとに最適な人材を起用するアメリカで散見される「ジョブ型雇用」が注目されています。記事あるように、経団連も提唱しています。しかし、日本はアメリカのように雇用の流動性が低いことから、ジョブ型雇用が進みにくいとも指摘されています。こうした論調や変革は、日本経済をより良くする可能性もある一方で、少し心配になることもあります。とというのも、雇用の流動性が高いアメリカでは、労働者の生活を守
もっとみる持ち合い株式の削減は、ビジネスパーソンにどんな影響をもたらすのか?〜株主の影響力と働き方〜
今年4月、東京株式市場で約60年ぶりの市場再編が実施されました。下記の記事にある通り、注目は海外からの投資マネーを呼び込むことを目的としたプライム市場の動向です。このプライム市場で企業が上場を維持するためには、その上場企業が自社の流通株式比率を上げる(または下げない)ことが必要です。そして、流通株式比率が低い企業の多くは、持ち合い株式比率が高い企業が散見されます。今回の市場再編は、骨抜きの改革と
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