マガジンのカバー画像

(勝手に)Good note賞 選考候補

106
運営しているクリエイター

#毎日note

私が「フランシスコ・アキラ」を応援する理由

私が「フランシスコ・アキラ」を応援する理由

全参加レスラーが素晴らしい試合を見せてくれる「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」は過酷なリーグ戦です。怪我はやむなし。将来のある選手ゆえ、ムリに出て悪化させるよりはしっかり治して今後に備えてもらえれば。

いまは新日本プロレスを主戦場としていますが、かつてフランシスコ・アキラ選手は全日本プロレスに留学生みたいな形で参戦していました。その頃から注目しています。後出しジャンケンではなく、絶対スターに

もっとみる
ハードボイルド書店員日記【184】

ハードボイルド書店員日記【184】

「すいません、抜けます」

GWの真っ只中。通常よりもやや大きいハヤカワ文庫のカバーを折っていられたのは開店から20分までだった。

「絵本を3か所に配送したい」という小柄な老婦人が来た。送料がどれだけかかっても構わない、孫に贈りたいとのこと。遅番が出勤する13時半までは3人しかいない。店長が伝票の作成や梱包のためにカウンターから離れ、残りはふたり。電話がずっと鳴り続けている。

そしていま、客注

もっとみる
イチ書店員が9年ぶりに読みたい「青春小説の傑作」

イチ書店員が9年ぶりに読みたい「青春小説の傑作」

なんと。

昨年6月にコーマック・マッカーシーが亡くなった際も思いましたが、なぜこの方にノーベル文学賞が与えられなかったのか。。。

私がオースターの本を初めて読んだのは2015年。↓です。

ひとりの若者が人生に絶望して街を彷徨い、やがて師となる存在に出会う。住み込みで働き、奇妙な暮らしを続けるなかで、彼は少しずつ成熟を遂げていく。青春小説の傑作です。

当時、まさに人生に絶望しかかっていました

もっとみる

私小説「ハードボイルド書店員の独り言」

雨上がりの朝七時。誰もいない路地を歩く。

タバコの残り香が鼻孔を掠める。湿ったアスファルトに自転車が踏みつぶした吸い殻。舌打ちはいつしか堪える方に過半数を譲った。

今日は昨日よりも混むだろう。

連日前年比を超えている。外国人観光客のおかげだ。彼ら彼女らが買うのは帆布を使った鞄。北斎や写楽や鹿苑寺のポストカード、そして文房具各種と期間限定で並べている動物のぬいぐるみだ。イングリッシュブック? 

もっとみる
本好き&本屋好き&書店員にオススメの「ほぼ哲学書」

本好き&本屋好き&書店員にオススメの「ほぼ哲学書」

暇な時間にレジで同僚と話をします。

基本的には本に関することだけ。ちょっとした一言が選書や仕事への取り組み方を見直すヒントに繋がります。

数年前、純文学好きの同僚と某作家の話をしました。好きだけど「面白い?」と訊かれて「面白い」と返せる本ではない。不遜にもそう伝えたら、彼は軽く笑ってこう返しました。

「それが文学のいいところじゃないですか?」

たとえばある書籍が「さほど売れそうにない」と評

もっとみる
「毎日、毎日、本を売る人」が某知事の発言に思うこと

「毎日、毎日、本を売る人」が某知事の発言に思うこと

撤回しても考え方が変わらなければ。。。

「県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです」

↑から「毎日野菜を売る人や牛の世話をする人は頭脳・知性が高くない or 高くなくていい」という発言者の思想を読み取らない方が困難でしょう。

毎日本を売って

もっとみる
ハードボイルド書店員が「職場のBGM」に流したい楽曲

ハードボイルド書店員が「職場のBGM」に流したい楽曲

都内の某書店で働く身です。

開店から閉店まで、ずっと有線が流れています。

以前勤めていた街の本屋では、社長が選んだジャズの名曲をiPodでリピート再生していました。

BGMの素敵な書店といえば、表参道にある青山ブックセンターです。

足を運ぶと、少なくとも30分以上はお店にいます。ゆっくり歩きながら各ジャンルの棚を眺め、目と耳で心地良さを味わう。本好きにとってはある種のパワースポットかもしれ

もっとみる
「クロスオーバーの調和力」を感じる一冊

「クロスオーバーの調和力」を感じる一冊

8日の仕事中に同僚から聞きました。

「鳥山さんって、あの鳥山さんですか?」と訊き返したのを覚えています。頭の中にファミコン版「ドラゴンクエスト2」の復活の呪文である「ゆうてい みやおう きむこう ほりいゆうじ とりやまあきら ぺぺぺぺぺ……」が浮かびました。我ながら相当戸惑っていたようです。

多くの書店が関連作品を版元に注文し、追悼コーナーを作ろうと考えているはず。もうしばらくお待ちくださいま

もっとみる
ハードボイルド書店員日記【173】

ハードボイルド書店員日記【173】

書店の1日は荷開けから始まる。

雑誌と新刊、そして補充分。雑誌は付録を付けて棚に出す(コロコロコミックやゼクシィみたいに大量に入るものは、積める分だけ開ける。残りは仕入れ室にストック)。書籍は新刊と補充分を分け、ジャンルごとに長机の上へ置く。置けなくなったら各担当が使うブックトラックへ移す。

すべての書店が同じ方式で動いているわけではない。都内の大型店だと雑誌と新刊は前日の午後に入る(雑誌とム

もっとみる
ハードボイルド書店員日記【172】

ハードボイルド書店員日記【172】

「ない? ああそう」

閑散期の平日。しかし荷物は多い。先月ひとり辞めたから尚更そう感じる。混み具合に留意しつつレジを抜け、品出しを急ぐ。昼休憩を半分削るという切り札が脳裏を掠めた。だがよくよく考えたらそんなカードは配られていない。あったとしても私には見えない。少なくとも最低賃金でサービス早出を繰り返す非正規書店員の手元には。

「取り寄せもできないの?」「すんません」「そこは『申し訳ございません

もっとみる
ハードボイルド書店員日記【144】

ハードボイルド書店員日記【144】

「こういうことしてるから、じゃないすか?」

3連休を控えた平日の午前中。穏やかなレジ時間だが手元は忙しない。絵本をシュリンク用の透明なプラスチック袋に詰める。女性誌や幼年誌に付録を挟み、ゴムで留める。カバーも各種折らねばならない。

一緒にカウンターに入った雑誌担当がぽつりと漏らす。朝礼でレジ誤差が続いていると注意された件についてだ。「俺らは買いに来るお客さんにもっと集中すべきっすよ」「まあな」

もっとみる