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#詩

【現代詩】『プラネタ★リウム』

【現代詩】『プラネタ★リウム』

『プラネタ★リウム』
赤黄緑紫

散らかるということは

なんだ

散らかるということ

それは

名も知れぬ

プラネタリウムの

お星様たち

食べ残しの皿 飲み残しの缶

もう誰からも

求められなくなって仕舞には

言葉に詰まってしまう景色の中に

「ひとり」取り残された仕方のない、私

あれは可哀想なベテルの神様

口を啞然と開いたまんまで

炭酸の抜けきったコカ・コーラ

この景色を作

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詩 「そこにいて」

詩 「そこにいて」

そこにいて

ただ そこにいて

まだ そこにいて

ずっと そこにいて

でもさ とか

もっとさ とか

そんなの ないよ

きみが

そこにいて

そうやって 

いきていることが

うれしいから 

そこにいて

ねえ

ねえ

あのさ

そこにいて

ボードレール『バルコニー』Le Balcon|訳してみました

ボードレール『バルコニー』Le Balcon|訳してみました

『バルコニー』

想い出の母なる泉、恋人のなかの恋人よ
君こそは歓びのすべて、我が忠誠のすべて
あの甘やかな抱擁を思い起こさないだろうか
暖炉辺の安らぎ、夕な夕なの魅惑を
想い出の母なる泉、恋人のなかの恋人よ!

石炭の熾火で彩られた黄昏
薔薇のヴェールにけむる バルコニーでの夕まぐれ
君の胸はなんと柔らかく、その心臓はなんと心地よかったことか!
我らは不滅のことどもについてよく語り合った
石炭の

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詩 「存在」

詩 「存在」

1.

生まれなかった息子よ
今どこで何してる
顔も知らぬ娘よ
苺味の飴をあげる

広い宇宙のどこかに
影を持たない君がいて
まだかまだかと待っている
わたしの連絡待っている

草や木のように
石や砂のように
揺るぎない信念で
ただそこで待っていて

2.

どこへ行くのときかれたら
ちょっとそこまでと答えます
存在しない手のひらの
ぬくもり探しに出かけます

愛をささやく船が出て
君の名前を呼び

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星と金属

星と金属

冬の季節風がかき集めた
記憶の中から
端がまくれ上がった手記を
一冊見つけた

葉を落とした欅が
毛細血管のような枝を
空の曲面に張り巡らせていた
優しい言葉をかけてくれる人が
優しい人ではない

あなたにはもう何も言うことはない
そう言われた
取り返しがつかないことを数えあげてみる
忘れてしまった悲しみと
忘れられない悲しみの間を
君は風のように
吹きぬけてゆけるか

あしたの時刻が懸けられてい

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「頷きは息をさせる」(詩)

「頷きは息をさせる」(詩)

許さないと決めたこと
それは弱さだと詰られるけれど
私はそれをそのままお腹にいれたい

許す自身でありたい見栄と
許せない理由の最たる私自身
それは同じ地平に立っている

どうか 許すことに倣わないで

太陽の光と出逢っても
乾くことのない湿地はあり
そこにはたしかに豊かな命の巡りがあること

私は
許さないで居続ける私を
何一つ欠けさせることなく 
許したい

「詩は花」(詩)

「詩は花」(詩)

詩は花だ
私に根を張り
遠い空へと咲く
風の兄へ微笑む
淡い月に甘やかされて
こそばゆい振動で
私に表す

世界はうつくしいこと
この愛はたゆたって
表面は照り返り
あなたという俤に
恋を重ねて染まる
白は白へ
光は光へ

花は詩であることを
時々忘れて涙する
その姿に空は振り返り
風は少し多く花弁に触れる
月は瞼を伏せて淵をぼやかす
私に滴るいたみが
深くに溜まり また種を生む

詩は花だ
鮮や

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【読書感想文と訳詩】一生をかけて内なるシヴァ神を追い求めた詩人(1529字)

【読書感想文と訳詩】一生をかけて内なるシヴァ神を追い求めた詩人(1529字)

”The Poem of Lal Ded”という素晴らしい本を読みました。インドの神秘主義者で詩人ララの詩集です。自らも詩人のRanjit Hoskoteが、英訳した146の4行の詩と詳細な解説が含まれています。ララはインドのカシミール地方で、14世紀に活動していたそうです。

ララの詩の特長は簡潔で力強いことです。

寺院からもう一つの寺院へ、隠者は息継ぎのために立ち止まらない
魂よ、これを掴め

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「うつくしい音」(詩)

「うつくしい音」(詩)

私はうつくしい音で在りますように

そりゃあ
光の方が速く手を触れるでしょう
けれど
音の方がよりつよく
触ることをつよく
あなたに与えてくださるだろうと思うので

だから
私にはうつくしい音が鳴ってほしいと
祈るのです

「無口で無愛想で無為な」(詩)

「無口で無愛想で無為な」(詩)

いい子だねと言った口に
泥だんごを

かわいいねと言った手に
ひっかき傷をつけた

無口で不愛想でへの字口の
私の苛立ちをそばにしゃがんで笑ったのは
あなただった

遠くまで歩いて
道も天気もころころ変わったけれど
振り返るときの心持ちは少しも変わらない

わがままで 無遠慮で 生意気な
話すことをできるだけ聞いてくれたひと
あなたは

あなたはひとりでいったこと
私にはわかった
あなたに怒りをぶ

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わかれを越えて

わかれを越えて

わかれは告げなかった
粗鉄色の空のしたで
都市の歩道橋で
アパートの狭い通路で
まるで挨拶のように
わかれはかわされていたから

荒野の電話ボックスは
風に吹かれて思慮深げだ
電話番号と悲劇の関係は?
糸電話による世界通信の方法は?
電話を何回鳴らせば約束は果たされるのか?

大切な言葉はいつも遅れたので
ぼくらは思い出を
未来に保留していた
それにしてもよくいったものだ
 〈ぼくらは〉と・・・・

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「ひかり」(詩)

「ひかり」(詩)

迷うことも 苦しむことも
光が見えないからじゃない
光が見えるから
ゆらり 小さく揺れるものだから
ただ一点の 美しさを刺すから
ひとは迷い
苦しむのだと

迷い描いた 私の光
苦しみ紡いだ 私の怒り
誰の目に それが光とは映らなくても
これは私に根差した灯火
この一点から指し示す
私の行方を 私の前へ
ただ生へ 私の生へ

生きて死ぬ光
それが私の光

「夜より咲く」(詩)

「夜より咲く」(詩)

静かな星の降る
静かな故に降る

導きは山を越えて
導きに山は光りて

小さな言伝を託して
小さな言葉は連なる

瞬くあいだより近づいて
瞬く合の手闇に口付けて

遠くへと流れていく夜よ
遠くまで流される日々に

目を閉じましょうか
閉じて睫毛の哀の朝

先触れが鳴く
先触れが咲く