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かったぱしから読書生活

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大学卒業以来、ずっと出版業界。本が好きで、ずっとこの世界で暮らしている。読書はフィクション派。ファンタジー好きなれど、時代物、ミステリー、純文学、何でも来いで、ひたすら濫読。読書… もっと読む
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2023年2月の記事一覧

天沢退二郎先生の忘れ形見「アマタイ句帳」

天沢退二郎先生の忘れ形見「アマタイ句帳」

2月25 テレビ体操、通算4,850日目。天沢退二郎「アマタイ句帳」(思潮社)。

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 天沢退二郎先生のご自宅にご焼香に伺った際に、奥さまから頂いた句集。「買いますから」と固辞したが「もう品切れで買えないから」と言われて、受け取った。1998年から約20年間、親しい同人と編んでいた「蜻蛉句帳」に掲載されていた千首以上の

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安藤隆人「ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色」

安藤隆人「ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色」

安藤隆人「ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BVWD9V8X/
 昨年11月のカタール🇶🇦サッカーワールドカップのルポである。著者はフリーランスのサッカージャーナリスト。単身カタールに乗り込んで28試合を観戦して取材に臨んだ。この大会は日本🇯🇵が死の組Eグループを勝ち抜いて、日本

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辻村ジュサブロー先生と「真田十勇士」

辻村ジュサブロー先生と「真田十勇士」

2月15 テレビ体操、通算4,840日目。訃報の話しばかり続いて恐縮だが、辻村寿三郎先生がお亡くなりになった。天沢退二郎先生のように特に親しかったわけではないけれど、代表作「新八犬伝」「真田十勇士」の書籍復刻をした時に、何度かお会いしてお話しさせて頂いた。喋った印象は『女性的な方』で、歌舞伎の女形と話しているような気分になった。

 かつてはNHK教育テレビで、ずっと人形劇が放送されていた。放送が

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天沢退二郎先生、逝く😭

天沢退二郎先生、逝く😭

天沢退二郎先生が1月25日に86歳でお亡くなりになった。FB友だちの一報を読んで、慌てて奥さま(マリ林)に電話した。以前から介護付き施設に入居されていると聞いていた。亡くなる直前には、頭を強く打って、聞くことはできたが、話すことはできなかったそうだ。実際には2/5、2/6で葬儀が行われていて「何で来なかったの?」「すいません、知りませんでした」「新聞に出ていたじゃないの」「気がつきませんで」。とい

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夢枕獏「歓喜月の孔雀舞」

夢枕獏「歓喜月の孔雀舞」

夢枕獏「歓喜月の孔雀舞」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓

https://www.amazon.co.jp/dp/B0BTST4QQP/

目に見えざるものが見えること。近親相姦と憎悪。血液への性的渇望。隠された親子関係。人間の業への神の制裁。成仏できない白拍子。遠野に伝わる呪術。七つの物語が、背徳的な美に包まれて繰り広げられる。作者の実体験に基づいているかと思われる箇所も多い。そして何よりネ

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松宮宏「万延元年ニンジャ茶漬け」

松宮宏「万延元年ニンジャ茶漬け」

松宮宏「万延元年ニンジャ茶漬け」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓

https://www.amazon.co.jp/dp/B0BTSSXD2M/

松宮宏は「ちょっといい話」が書ける、腕のいい小説家だ。気の利いた板前が、彼だけが知っているとっておきの材料を仕込んで、独創的な肴を鮮やかにサッと出す。そんな雰囲気だ。表題作と続く作品は、滑稽な漫談のようで、思わず吹き出してしまう。しかも歴史的事実を

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早見俊「観相同心早瀬菊之丞 死のお告げ」

早見俊「観相同心早瀬菊之丞 死のお告げ」

早見俊「観相同心早瀬菊之丞 死のお告げ」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BTST8R1R/
 早瀬菊之丞は南町奉行所定町廻り同心。大坂で観相見の達人・水野南北に師事。容貌や身なりから人の性格や運命を判断できる。容貌怪異で力士のような巨漢ながら、人をそらさぬ茶目っ気も持つ性格。手下の岡っ引き、薬研の寅蔵(出来はともかく愛嬌たっぷり)と巷

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「BRUTUS」2/15号「温まる、洋食」

「BRUTUS」2/15号「温まる、洋食」

「BRUTUS」2/15号は「温まる、洋食」特集。2016年10月「町の中華」以来の素晴らしい特集企画だ。サブタイトルは「ハンバーグ、オムライス、ナポリタン・・・日本が誇る洋食店92軒の物語」。うち東京は数えてみたら26軒。なかなかのお店のチョイスである(もちろんここに載っていなくて素晴らしいお店も多いが)。中には喫茶店や洋食を出す町中華まである、フリーな視点での絞り込み。全国という点では熱海、京

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自分が出版業界に進んだのも恩師の薫陶

自分が出版業界に進んだのも恩師の薫陶

横浜市立田奈中学校時代の恩師である今野泰男先生(76歳)が昨年末に心不全で急死されていた。クラスメイトと二人でご自宅に焼香に伺った。中学三年生の時の担任だった。僕らはふざけて「こんのじ(痔)」とあだ名で呼んでいた。中学の向かいにあった「珍家」という町中華からラーメンを取って、みんなによく奢ってくれた。当時はずいぶんおおらかな時代で、僕ら男子生徒は騒いだり悪戯したりで、パンチやステッキで今野先生に年

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原泰久「キングダム67」桓騎の生き様

原泰久「キングダム67」桓騎の生き様

原泰久「キングダム67」(集英社)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNL253LV/
 趙北部に侵攻した秦の桓騎軍14万人。それを平原で迎えた李牧将軍率いる趙軍31万人。数で圧倒された桓騎軍だが、主翼の桓騎本隊が動かない。しかし突如として、軍略には存在しないX型の陣を敷く。真意が掴めない趙軍は様子を伺うが、これは桓騎軍が闇に乗じて突破する時間稼ぎ

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増淵敏之「韓国コンテンツはなぜ世界を席巻するのか ドラマから映画、K-POPまで知られざる最強戦略」

増淵敏之「韓国コンテンツはなぜ世界を席巻するのか ドラマから映画、K-POPまで知られざる最強戦略」

増淵敏之「韓国コンテンツはなぜ世界を席巻するのか ドラマから映画、K-POPまで知られざる最強戦略」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓

https://www.amazon.co.jp/dp/B0BTDH8F1D/

 かつて日本をベンチマークとした韓国🇰🇷は完全に日本🇯🇵を抜かした。一人当たりGDPという経済性で抜かれ、何よりエンタメで差をつけられた。映像・音楽・グッズ・ツーリズムなど

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横井裕之『フードアナリスト3級認定教科書「食レポ・食の審査員」の教科書』

横井裕之『フードアナリスト3級認定教科書「食レポ・食の審査員」の教科書』

横井裕之『フードアナリスト3級認定教科書「食レポ・食の審査員」の教科書』(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓

https://www.amazon.co.jp/dp/B0BT1KX2HQ/

著者はフードアナリスト協会の理事長にして、ジャパン・フード・セレクション審査委員長である。日本における食レポや食の審査を標準化して、フードアナリストを権威として確立した立役者である。読み進むうちに「食レポの常

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