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中沢新一著『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』などを読む

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中沢新一氏の著作『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』『精霊の王』『アースダイバー神社編』などを読み解きます。
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#深層意味論

中沢新一氏の新著『精神の考古学』を読み終える

中沢新一氏の新著『精神の考古学』を読み終える

中沢新一氏の新著『精神の考古学』を読む。
三日間かけて最後のページまで読み終わる。

というわけで、これから二回目を読み始めよう。

前の記事にも書いた通り、わたしは中沢新一氏の著作のファンで、これまでもいろいろな著書を拝読してきたが、この『精神の考古学』も鮮烈な印象を残す一冊でありました。

最後のページから、本を閉じた後も、いろいろとめくるめく言葉たちが伸縮する様が浮かんでは消えていく。

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人類の”心”のアルゴリズムを解き明す神話論理×十住心論 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(44_『神話論理2 蜜から灰へ』-18)

人類の”心”のアルゴリズムを解き明す神話論理×十住心論 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(44_『神話論理2 蜜から灰へ』-18)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を”創造的”に濫読する試みの第44回目です。

これまでの記事はこちら↓でまとめて読むことができます。

これまでの記事を読まなくても、今回だけでもお楽しみ(?)いただけます。

この一連の記事では、レヴィ=ストロース氏の神話論理を”創造的に誤読”しながら次のようなことを考えている。

則ち、神話的思考(野生の思考)とは、Δ1とΔ2の対立と、Δ3とΔ4の

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”心”の意味分節システムを発生させる鍵は”両義的媒介項”にあり  -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(13)

”心”の意味分節システムを発生させる鍵は”両義的媒介項”にあり -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(13)

4歳になる下の子を保育園に送る途中のこと。犬が石畳の道を歩いていた。

犬の四本の足が、それぞれいそがしく宙に持ち上げられては石畳に降ろされる。そのとき、パタパタというか、パシパシというか、パラパラというか、冬の空気にぴったりな音がする。

その、わたしにとっては ”犬 の 足音” である音。

その音を聞いて、下の子がいう。

「足あとの、声がする!」



足跡の声
私: 犬 / の / 足

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意味分節理論は大学入学共通テスト「情報」の範囲に入るか??

意味分節理論は大学入学共通テスト「情報」の範囲に入るか??

大学入学共通テストが行われているということで、意味分節理論と絡めて書いてみる。意味分節理論は近い将来新たな試験科目になる「情報」に、深いところで関連すると思われる。

◇ ◇

さて、意味分節理論というのは何かといえば、意味ということの発生の仕方を考える理論である。

といったところで、さっそく迷路の入り口に落とし穴が開いている感じになる。

第一に、意味分節理論でいう”意味”とは、「もの」ではな

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意味分節理論は「書く」と「読む」の役に立つ

意味分節理論は「書く」と「読む」の役に立つ

意味分節理論などというと、”いかにも抽象的で、現実離れして、とても何かの役に立つとは思えない感じがする”といった印象を持たれることも多い。

ちなみに、意味分節理論というのは意味(意味する)ということの発生を、次のようなモデルで考えるものである。



まず、ある二つのシンボルの二項対立関係を二つ重ね合わせ、そこに第三の二項対立を直交させる。この第三の二項対立を軸にして、最初の二つの二項対立の重

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月は、紐を使わずにどうやって海を引っ張るのか? -カルロ・ロヴェッリ著『世界は「関係」でできている』とレンマの論理

月は、紐を使わずにどうやって海を引っ張るのか? -カルロ・ロヴェッリ著『世界は「関係」でできている』とレンマの論理



「月は、紐が無いのにどうやって海を引っ張っているんだ??」



忙しい朝の保育園への登園の途上、不意に長男がこんなことを訊ねてきた。潮汐の話を、おそらく園で聞いたのだろう。

紐がないのに引っ張る。

月と海

月と地球

二つの物体が存在する。

二つの物体が引っ張り合う、綱引きする。

綱はどこに行った?



子どもの質問だからと言って、子供扱いしてはならない。

いや、子供とか

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意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

(本記事は有料に設定していますが、全文「立ち読み」できます!)



中沢新一氏の『アースダイバー神社編』を引き続き読む。

(前回、前前回の続きですが、今回だけでお楽しみいただけるはずです)

『アースダイバー神社編』には、諏訪大社、大神神社、出雲大社、そして伊勢神宮といった極めて古い歴史を持つ神社が登場する。

中沢氏はこれらの神社に今日にまで伝わる神話や儀礼やシンボル(象徴)たちを媒にして

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創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

(このnoteは有料に設定していますが、最後まで無料でお読み頂けます)



中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note、その7回目の後編である。(前編はこちら↓ですが、前回を読んでいなくても大丈夫です。)



(最初から読みたいという方はこちら↓からご覧ください。)

境界性『精霊の王』、単行本の208ページには、精霊の王=宿神は「境界性」を象徴する、とある。

境界性とはどういう

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"現実”の深層へ -中沢新一著『精霊の王』(と『アースダイバー 神社編』)を精読する(7-1)

"現実”の深層へ -中沢新一著『精霊の王』(と『アースダイバー 神社編』)を精読する(7-1)

(このnoteは有料に設定していますが、最後まで無料でお読み頂けます)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note、その7回目である。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても、今回の話だけでお楽しみいただけます。)



今回は第8章から最後までを一気に読んでみよう。・・・と思っていた所、2021年4月20日に中沢新一氏の新刊が発売されました。その名も『アースダイバー 神社編』

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精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

中沢新一氏の著書『精霊の王』。その第二章「奇跡の書」、第三章「堂々たる胎児」を読んでみる。

第一章「謎の宿神」では、宿神が蹴鞠の精霊、「鞠精」として姿を現した。それが第二章「奇跡の書」では、今度は宿神が能楽の「翁」として姿を現す。

幽玄の世界に入り込むと同時に、それを言葉によって理論化した金春禅竹。その善竹の筆による『明宿集』には「「翁」が宿神であり、宿神とは天体の中心である北極星であり、宇宙

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両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

中沢新一氏の『精霊の王』を精読する連続note。

第一章「謎の宿神」を読む。



「侍従成通卿と言えば、比類のない蹴鞠の名手と讃えられ…」(『精霊の王』p.4)

この一節から始まる第一章は「蹴鞠」の話である。

「精霊の王」たるシャグジ−宿神は、日本列島に国家が成立する遥か以前から祀られてきた神である。

その精霊の王の話をするのに、なぜ国家が成立して数百年を経た後の時代の芸能のことから始

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中沢新一著『精霊の王』を精読する(1)

中沢新一著『精霊の王』を精読する(1)

これまでしばらくの間、中沢新一氏の『レンマ学』を精読していたのだけれども、ついに読み終えてしまった。

もう一度読めば良いのだけれども、せっかくなので別の本を精読してみることにする。同じ中沢新一氏の『精霊の王』である。

『精霊の王』については前にnoteにまとめたことがあるが、今回は「精読」してみることにする。

『精霊の王』は中沢氏による2003年の著作で、『レンマ学』を遡ること10数年前の話

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ロゴスの生成変容をレンマでモデル化する科学へ -中沢新一著『レンマ学』を精読する(12)

ロゴスの生成変容をレンマでモデル化する科学へ -中沢新一著『レンマ学』を精読する(12)

中沢新一氏の『レンマ学』を精読する連続note。今回は「第十二章 芸術のロゴスとレンマ」と「エピローグ」を読んでみる。



今回のところに直結する一つ前のnoteはこちらです。

喩の力、相即相入『レンマ学』305ページに次の一説がある。

「ホモサピエンスとしての人間に特有な「喩的」言語が発生する。それまではどの生物もコミュニケーションのためにある種の「言語」を用いていたが、そこにはまだ「相

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ソシュールからチョムスキーまで「相即相入」で、ことばの不思議を解明する -中沢新一著『レンマ学』を精読する(10)

ソシュールからチョムスキーまで「相即相入」で、ことばの不思議を解明する -中沢新一著『レンマ学』を精読する(10)

中沢新一氏の『レンマ学』を読む連続note、今回は276ページからの第十一章「レンマ派言語学」を読んでみる。

言語、ことば個人的に、この第十一章は『レンマ学』の中でも一番盛り上がるところである。

何がおもしろいかと言えば、言語ということ、それも「言葉が意味する」ということを、ソシュールからチョムスキーまでの一見相反することを主張しているかのように見える理論を華厳的に相即相入させて、レンマ学の”

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