マガジンのカバー画像

せーかつ

94
まいにちのららら。*・゚
運営しているクリエイター

#心

あなたが名前をつけるなら?

あなたが名前をつけるなら?

大学の友人たちと、久しぶりの再会。
なじみのカフェで
めいめいに好きな飲み物を注文して、
話に花を咲かせます。

そのなかで私はふと、
そんなことを尋ねました。

ひとりが、「私はね、」と話し始めました。

キラキラと楽しげに話す彼女。
洋画が好きな彼女らしい、
小粋なアイデアです。

つづいて、もうひとりが言いました。

菫やあやめ、桜に楓。
小さなことに目を向けて、心を動かせる人は
いま、それ

もっとみる
青いもみじの下、キミとの電話

青いもみじの下、キミとの電話

それはまだ、キミが恋人だったころ。

5月の昼下がりに
私はキミに電話をかけた。

いつもの公園。ベンチにひとり。
清々しい天気がかえって虚しく感じるのは
さっきまでの母との口げんかで
落ち込んでいるせい。
仕事への迷いと将来の夢、
私の考えはやっぱり甘いのかな。

キミは私が話終えるのを待って
言葉を返してくれた。

***

***

まだ青い色のもみじを見上げながら
キミの声を聞いていた。

もっとみる
--- 人と人の  あいだ  を繋ぐ糸 ---

--- 人と人の あいだ を繋ぐ糸 ---

冷たい雨の降る土曜日。

立春も過ぎたというのに
ほんものの春が来るのはまだ、
幾分先のことみたいです。



やって来たのは一軒のカレー屋さん。
気分まで塞ぎがちなこんな日は
刺激的なスパイス料理に力をもらおう作戦です。

外壁に這う深みどりの蔦は
屋根の方まで登っています。
店内は昭和ふうの装いで
ラジカセから、歌謡曲が
遠く懐かしく流れてきます。

カウンター席に女の人がひとり。
あとはテ

もっとみる
“ 年上のお友達 ”が教えてくれたこと

“ 年上のお友達 ”が教えてくれたこと

ふた周りほど年上の、私のお友だちの話です。

その人を思い出すと、真っ先に
たんぽぽみたいな笑顔が浮かびます。
丸いショートカットにくっきりな二重、
親しみやすい雰囲気で、
くりぃむ色が似合うその方は
「文代さん」といいます。



便箋を探しに
地元の工芸品でもある和紙を求め、
和紙屋さんを訪ねたときのこと。

紙漉き機や大釜のある工房に並んで
古民家を改装した店舗がありました。

中には葉書

もっとみる
坂 の 上 の う つ わ 屋 さ ん

坂 の 上 の う つ わ 屋 さ ん

小高い坂の上にあるうつわ屋さんは
とても可愛らしい佇まい。

真っ白な壁に濃いブルーの屋根、
木製のドアと大きな窓。
アトリエとお店がひとつづきになっています。

のどかな街にぽつんと現れる
この可愛い器のお店を訪れたのは
まだ暑さの残る秋の日のことでした。

きっかけとなったのは
SNSで見かけた、ひとつの器。

ポテッとした丸みのあるフォルム。
正円に近い形の取っ手。
注ぎ口の、チュッととかが

もっとみる
アネモネを、一輪。

アネモネを、一輪。

透き通る空の下の
一目惚れでした。

そこは、花屋さんの店先です。

堂々たる真紅の花びらと
黒みがかったネイビーの雄しべを備えたその花が
なんとも目に鮮やかで
ミステリアスな雰囲気だったのです。

アリッサムやビオラ、
シクラメン、ストック、
色に溢れた美しい花屋さんでしたが
そのお花だけは他に負けず

自らの美しさを信じているような
静かな強さがありました。

ポットに入ったその花の苗。
凛々

もっとみる
〒 クリスマスの - お手紙時間

〒 クリスマスの - お手紙時間

カタン、と小さく
ポストの音がする。
冷たい風が吹く12月の水曜日、
一通の封筒が届いた。

それは、深い緑色の封筒。
刺繍を模したデザインが入っている。

文通をしている友達からにしては
返信が早すぎるので
誰からのお手紙かと裏に返すと

以前お世話になっていた
お花のセンセイからだった。

私が手紙を渡して以来
全く連絡を取れていなかったので
びっくり。
私は足早になってリビングに戻り、
そっ

もっとみる
言葉は、春風のように

言葉は、春風のように

その言葉をくれたのは、
当時の上司だった。

課長補佐 57歳。
周囲からの印象は
一言でいうと「気難しい人」
だったと思う。

細かい点まで目が届き、
不明な部分を曖昧にしない
責任感の強い方で

整った字を書く人だった。



「今日は仕事の話じゃないんだ。ここにいると聞いたから、ひとつ伝えておきたいと思ってね」

復職するための準備期間として一週間ほど、
私は事務室から少し離れた別室で

もっとみる
桃 の 花 の よ う な 店 員 さ ん の こ と 。

桃 の 花 の よ う な 店 員 さ ん の こ と 。

ずっとお世話になっている、
スキンケア化粧品の美容部員さん。

私が棚を眺めて悩んでいると
「〇〇さん、こんにちは。
今日は何をお探しですか?」
いつもちゃんと名前を呼んで、
声をかけてくれる。

可愛らしく整った顔立ちに
きめの細かい肌。
綺麗に結われた髪が
凛とした雰囲気を香らせている。
メイクはしっかりされているのに
無理のない、ナチュラルな印象。

花で表すと桃の花のような、
可憐で
その

もっとみる
まごころクッキー🍪

まごころクッキー🍪

職場の更衣室。
私のロッカーのお隣さんは
50代くらいの女性の職員さんである。

部署が違うので
仕事で関わることは
全くないけれど、
たまに更衣室でお会いしたときは

ちょっとおしゃべりしたりする。

あっけらかんとしていて
いつも笑顔でエネルギッシュ。
仕事で起こった嫌なことも
ハハハ!と
笑い飛ばしてしまうくらいの勢い。

私にはない要素がたっぷりで
とっても素敵な人だと毎回思う。

今日の

もっとみる
休職と、母のことば。

休職と、母のことば。

今日はぷかんと浮かぶ
お花を書いた。

赤のチェックがよく似合う。

影がゆらゆらしてる。

透けてるって可愛い。

私が休職して間もない時。

休みをもらったのに
毎日泣いて、ボロボロになって
早く人の役に立てる人間にならなきゃ
今の自分ではダメなんだ。
常に焦って追い込んでいた。

そんな時、母は私に言った。

今は焦らなくていい。
ほかの誰かの役に立とうなんて
そんなこと考えなくていい。

もっとみる