#心
青いもみじの下、キミとの電話
それはまだ、キミが恋人だったころ。
5月の昼下がりに
私はキミに電話をかけた。
いつもの公園。ベンチにひとり。
清々しい天気がかえって虚しく感じるのは
さっきまでの母との口げんかで
落ち込んでいるせい。
仕事への迷いと将来の夢、
私の考えはやっぱり甘いのかな。
キミは私が話終えるのを待って
言葉を返してくれた。
***
***
まだ青い色のもみじを見上げながら
キミの声を聞いていた。
言葉は、春風のように
その言葉をくれたのは、
当時の上司だった。
課長補佐 57歳。
周囲からの印象は
一言でいうと「気難しい人」
だったと思う。
細かい点まで目が届き、
不明な部分を曖昧にしない
責任感の強い方で
整った字を書く人だった。
*
「今日は仕事の話じゃないんだ。ここにいると聞いたから、ひとつ伝えておきたいと思ってね」
復職するための準備期間として一週間ほど、
私は事務室から少し離れた別室で