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アネモネを、一輪。

透き通る空の下の
一目惚れでした。

そこは、花屋さんの店先です。

堂々たる真紅の花びらと
黒みがかったネイビーの雄しべを備えたその花が
なんとも目に鮮やかで
ミステリアスな雰囲気だったのです。

アリッサムやビオラ、
シクラメン、ストック、
色に溢れた美しい花屋さんでしたが
そのお花だけは他に負けず

自らの美しさを信じているような
静かな強さがありました。


ポットに入ったその花の苗。
凛々しくすらりと延びる茎の先に
八分咲の花がひとつと
きゅっと目をつむった蕾が
ひとつ、ついています。
背丈はポットの部分も合わせて
30センチほどでした。


『 アネモネ 』

名前の響きすら謎めいている花。

初めてアネモネを知ったのは多分、
小学生のころでしたが
その名がギリシア語で「風」を意味する、Άνεμος (anemos)から由来している
ということはつい先日知りました。


お店に並んだいくつかの品種の中で
私が気に入ったのは
「アネモネポルト」というもの。
わりに小ぶりな、愛らしい花を咲かせます。


家に着くと
さっそくアネモネの苗の植え替えです。
寒さに強い花であるものの、霜には弱いようで
今回は鉢植えに植えることに。
これで天候によって
場所を移動させることもスムーズです。
ポットから取り出すと
みっちりと根が張っていました。



空気は依然と冷やかなものの
日差しはあたたかいお昼どき、
ふと目をやると

八分咲だった花が
とろン、と花びらを広げ
実に立派に咲いていました。

先ほどあげた水の雫が
花びらの上に点々と残り、
陽にちいさく光って

それは、とても
美しい光景でした。


このところ、心がざわざわとする日が
続いていました。
きっと、嫉妬心からくる
焦りのためだろうと思います。

幼稚園から知る友人が
小さなケーキ屋さんをオープンしたという知らせ。

嬉しいなあ、良かったなあ、
頑張ったんだろうなあと思う反面、
ぐずぐずと動けない自分と
つい比較してしまうのです。

もっと、もっと、私ももっと

なんだか、何かをゆっくり楽しむという心を
忘れかけていました。


そんな中出会ったひとつの花。
美しいものをちゃんと味わう時間が
心を健やかにし、
自分自身の深みになってくれると感じました。


夢までの道のりを遠回りする中で
私はこれからも色々なものに出会うはずです。

そこから得られるものが、きっとある。

一輪のアネモネに教えてもらいました。

これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿