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アネモネを、一輪。
透き通る空の下の
一目惚れでした。
そこは、花屋さんの店先です。
堂々たる真紅の花びらと
黒みがかったネイビーの雄しべを備えたその花が
なんとも目に鮮やかで
ミステリアスな雰囲気だったのです。
アリッサムやビオラ、
シクラメン、ストック、
色に溢れた美しい花屋さんでしたが
そのお花だけは他に負けず
自らの美しさを信じているような
静かな強さがありました。
ポットに入ったその花の苗。
凛々しくすらりと延びる茎の先に
八分咲の花がひとつと
きゅっと目をつむった蕾が
ひとつ、ついています。
背丈はポットの部分も合わせて
30センチほどでした。
『 アネモネ 』
名前の響きすら謎めいている花。
初めてアネモネを知ったのは多分、
小学生のころでしたが
その名がギリシア語で「風」を意味する、Άνεμος (anemos)から由来している
ということはつい先日知りました。
お店に並んだいくつかの品種の中で
私が気に入ったのは
「アネモネポルト」というもの。
わりに小ぶりな、愛らしい花を咲かせます。
家に着くと
さっそくアネモネの苗の植え替えです。
寒さに強い花であるものの、霜には弱いようで
今回は鉢植えに植えることに。
これで天候によって
場所を移動させることもスムーズです。
ポットから取り出すと
みっちりと根が張っていました。
*
空気は依然と冷やかなものの
日差しはあたたかいお昼どき、
ふと目をやると
八分咲だった花が
とろン、と花びらを広げ
実に立派に咲いていました。
先ほどあげた水の雫が
花びらの上に点々と残り、
陽にちいさく光って
それは、とても
美しい光景でした。
*
このところ、心がざわざわとする日が
続いていました。
きっと、嫉妬心からくる
焦りのためだろうと思います。
幼稚園から知る友人が
小さなケーキ屋さんをオープンしたという知らせ。
嬉しいなあ、良かったなあ、
頑張ったんだろうなあと思う反面、
ぐずぐずと動けない自分と
つい比較してしまうのです。
もっと、もっと、私ももっと
なんだか、何かをゆっくり楽しむという心を
忘れかけていました。
そんな中出会ったひとつの花。
美しいものをちゃんと味わう時間が
心を健やかにし、
自分自身の深みになってくれると感じました。
夢までの道のりを遠回りする中で
私はこれからも色々なものに出会うはずです。
そこから得られるものが、きっとある。
一輪のアネモネに教えてもらいました。
これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿