#リフレイン 6

2020年10月24日 00:10

「大事なものだったんじゃないんですか？これ」

「ちょっと…なんで志摩が持ってるのよ。会議に行く前にゴミ箱に入れたのに」

「…伊吹が」

「え？」

「伊吹がゴミ箱からまた拾って…。もったいないじゃないですか。ラルフローレン。」

「志摩…ストラップの重要なさあ、ヒモが切れてるわけ。使い物にならないでしょ」

「修理するとか」

「…不可能よ」

「これ、かわいいのに」

「でしょ？私のセンスがよかったんだね」

「え？自分で買ったんですか？」

「そうだけど」

「てっきりもらったものかと…」

「…色違いで買って、片方をあげたの。」

「やっぱり。」

「何」

「記憶の人でしょ？その相手。」

「…そう。脳内メモリを無駄に使う人ね」

「…」

「だからいいのよ。いつまでも記憶に浸ってたらいけないの。もういい歳なんだから。過去に浸ってたらいけないの。だからそれは捨てるの」

「そう…ですか。」

「別にね、大切な忘れられない思い出の品とかじゃないから。このストラップをどうやって買ったのか、いつあげたのか、忘れた。もう思い出せないことの方が多い。」

「…オレ新しいストラップ、プレゼントしますよ」

「え？笑」

「はるかさん誕生日いつでしたっけ？」

「7月…」

「あーじゃあ、その時に。その時までに用意しておきますから。」

「なんで？いや、嬉しいけど、なんで志摩が…気にしなくていいのに」

「かわいそうだから、じゃないですよ？オレが、はるかさんに、あげたいなって思ったから。」

「…ありがと…。優しいね。志摩は。」

ほらまた。
悲しい顔をする。

一体どんな人だったんだろう。
ここまで記憶を残した人間って。

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