亜成虫の森で 21 #s



12時前に彼女を家に送り届けて
帰路に着く。

後部座席から
窓を流れる景色を見ていた。

本当に東京は眠らない街だ。
街中に煌々と明かりがついている。



いけないことを、したのかもしれない。


ずっとそう思ってる。
そう思ってしまう。


だけど、あんな悲しい顔されたら
普通放っておけないだろ。


12時過ぎなきゃセーフとか
自分は思っているんだろうか。
特定の相手がいないから
いいよね?なんて。


バカなのか。
アウトだよもう。



彼女と初めて会ったのはあの会議室で、だけど、潤から話は聞いていた。とてもよくできる子で、落ち着いていて。

見た目は地味だったけど、
なんだか信頼できそうな感じがした。

彼女は、たぶん、っていうか絶対的に
にのが好きなんだと思うけど

その「好きだ」ということさえ
表に出さなくても
心地よく人と一緒にいられる人間なんだと思った。


オレの周りにも今までにたくさん人がいた。
女の子もたくさんいた。

だけど、ずっと一緒にいられる人が
なかなかいなかった。

最初は仲良くなっても
最終的な目的がオレの背後にあるもので
オレ自体ではない。
そんなことが何度も続いた。

ヤケになったのと
人間関係を断ち切りたくて
アメリカに行った。

意外と楽しかったし勉強になったけど
心の穴が埋まることはなかった。


でも彼女に会って
彼女を知りたくなった。

久々の感覚だった。


彼女と触れ合っていると
あたたかくて
ずっとこのままが続けばいいって
本気で思えた。

彼女は傘をさしてくれる人間だ。

差し伸べられた手はあたたかくて


この人となら一緒にいたいと思った。


だけど最初からそれは叶わないとわかっている。
彼女には想う人がいる。

それでも
オレの甘えを許してくれた。
オレの友達になってくれた。
傘をさしてくれた。


もっと一緒にいたかったなあ。


もっと。ずっと。長く。


触れ合っていられたら良かった。



窓を流れる夜景が滲んで見えた。





次の日、彼女は申し訳なさそうに社長室に来た。
昨日のお手当をあげないとね。

申し訳なさそうな理由はお金のほうじゃなさそうだった。


「…社長?」

「なあに?」

「…昨日は、…その、」

「ごめんね。急にあんなことして。」



「違う!違う…謝っちゃダメ。謝ったらダメなことになっちゃう。」


「…。うん。」


「あの…恋人はなれないんですけど…でも、何か辛いことがあったら、何か私にできることがあったら言ってくださいね…っていうのは、なんだろ。逃げかな…」

「え…」

「いや、なんか。ほら、前も言ってたじゃないですか。ひとりだったって。…別に恋愛じゃなくたって、一緒にいることはできるっていうか…」


この子は。
ほんとに優しい人だ。


「友達、だし…。」

「…」

「いや、なんでもないです。言ってることおかしかったですよね、すいません」


「まだ何も言ってない。」

「…」

「はるちゃんのそういう優しさ、ちゃんと伝わってるよ。」

「…」

「友情のハグは、いいよね?」

「…こ、ここでだけですよ!外はめんどくさいんですから!」

「はいはい。あー。すごい元気になる。仕事頑張れそうだわ」

「それはよかったです。それでは。」

「あ、待って!これこれ。はい。お手当〜」

「ありがたく頂戴します」


嬉しそうに受け取って彼女は戻っていった。


そうだな。
可能性ってのは常にあるわけだ。
オレが誰よりも彼女を幸せにできるのなら、
それでいいんだ。
諦める必要なんかないじゃないか。


もし彼女にも雨が降っていたら
オレが一番に傘をさしてあげられるように。
それがどういう行動になるかはわからないけど。

とりあえず
今日やるべきことを、やるだけだ。

毎日はそれでできている。




東京の街は
今、晴れている。







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