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#リフレイン 20


今日も夢の国は夢で溢れていた。
真ん中の海がよく見えるベンチに座って
私は夢であってほしい
あの人のことを思い出していた。

全てはもう終わったこと。


今日からは。
新しい自分で。




「でもさ、はるちゃんからお誘いなんて珍しいね〜!ま、オレはいつでもOKだけどさ!」

「伊吹はディズニー嫌いじゃなかった?人混みとか並ぶ〜とか、男の人あんまり好きじゃないイメージだったけど」

「え?超楽しくない?大好きオレこういうの。ふいんき!最高!」

「じゃあよかった。」

「はるちゃんこそ、ちょっと意外だよ?ディズニー好きなんて」

「そう?全部忘れられるでしょ。ここなら。

それに、話があってね?」

「話?」

「伊吹、私と2人でごはん行った時、あの人に会った日にさ、言ったでしょ?ついていっちゃダメだって。

…だけどね、私ついていったの。

ついていって、やることやって、そんで、目を覚ましたらあの人電話しててね?友達なのかなんなのかわかんないけど、いやーちょろかったわーって。私のことちょろいって。ストーカーって言ってた。そのあとすぐに奥さんと電話してた。すぐ帰るからって。

離婚したって嘘つかれてた。

結果、私は不倫と同じことをしたの。」


「…」

「嘘を見破れない私がいけなかった。

いや、嘘でもいいって、思ってたかもしれない。」


「…」

「…やっぱ引くよね。そうだよね…」


「はるちゃ、」


「待って。わかってる。私気持ち悪いよね。引いたでしょ?わかる。わかるけど、最後まで話させて。

私は、…あのとき結局嘘をつかれて、…でも、やっと終わった気がした。やっぱりこの人とはムリだなって思ったし。私もこのままじゃいけないって思った。


それで、…。前、伊吹が言ってくれたんだけど…覚えてる?オレがその人の代わりになる、的な」


「覚えてるよ」


「それでー、その、…代わりになって欲しいってことじゃないんだけど…。伊吹は伊吹だから。なんていうか…んー。隣にいてほしいっていうか…、そばにいてほしいっていうか…」

「…はるちゃん…」

「いやでも、…そんな都合のいいようには、ね、」

「はるちゃん!」

「…っ」

「気持ち悪くなんかない。引いてもいない。」

「…」

「ちゃんと覚えてる。代わりになるって言ったこと。ちゃんと覚えてる。今でもそう思ってる。ずっとそばにいたいって。

…だけど、本当にオレでいいの?

…志摩さんじゃなくて?」



「え?なんで?」

「志摩さんもはるちゃんのこと好きでしょ…ってこれ言っちゃダメなやつかな?!」

「はは笑 志摩怒るね笑

…実はこの前志摩とも話した。志摩は伊吹を推薦してた。私も同じ理由でそれに賛同。」

「理由?」

「…伊吹は私を引っ張ってくれる。そこにいちゃいけない、前に進もうって。手を、引っ張ってくれるから。」

「ふふ。そっか。そうだね」




「まだ、…怖い気持ちもある。だけど、ここにいちゃダメだっても思う。ずっと同じところにいないで、自分の足で前に進まなきゃって。思うんだ。」

「うん」



「自分を犠牲にしない生き方は私には難しい。一番ラクな方法で生きてきたの。自分が悪いって思えば、それで済んだ気がして。

だけどもう、私は。人生を変えなきゃいけない。今までしてこなかったことを、しなきゃいけない。そう思った。」


「…」


「まだ、よくわからないの。これが、恋愛感情なのか、なんなのか…伊吹のことは好きだけど、なんかそういう、…恋愛の好きなのかどうなのかがまだわからない。それに、また同じことになったらどうしようって不安もすごくある。私の不用意な言葉で伊吹を傷つけたり、なんか嫌な気持ちにさせたりしたら嫌だし…やっぱり嫌われたくないし…ごめん、こんな中途半端で…」


「はるちゃん?」


「あ、ごめん、喋りすぎたね、」

「そうじゃなくて。こっち見て?」

「あのね?好きとか嫌いとか、ゼロヒャクじゃなくていいの。そばにいてほしい、それだけでいいの。そばにいてほしいって言ってくれるならオレはずっといる。それだけでいいんだよ?はるちゃんが辛い思いしてきたのはわかる。今回の件も辛かったよね?騙されたのが悪かったってのはまず置いてさ?どう思った?どう感じたの?悲しくなかった?好きな人に、好きって言われたのに、嘘だったんでしょ?辛くなかった?悲しくなかった?それがまず先だよ?もうカッコつけなくていいし、言い訳もしなくていい。自分を責めなくていいの。自分がどう感じたのか、どう思ったのかが大事なの」


「…私は、…15年前からずっと悲しいままだった。謝ることもできなくて。話すこともできなくて。だから今回元に戻れると思った。悲しくならないで済むかもって…。だけど、もっと悲しいことになっちゃった…私は、あの人が、好きだった。好きだったよ…」

「うんうん。それでいいよ」


「だけど、今は、今のあの人はもう違う。好きじゃない。私は今、伊吹と一緒にいたい。そう思う。」


「オレも。一緒にいたい。」


抱き寄せられたその腕の中は
思ったよりも広くて
包み込まれたみたいにあったかくて
こんなに大きなカラダだったんだって
今さらながらに思った。


「…」


伊吹は私の肩を持って体を離すと
笑顔で言ってくれた。

「ふたりでさ?作っていこう。これからを。」

「うん」

返事をするともっと笑顔になった。
これから、か。
これから。


「そうだ。一応聞いとくけど、あの人は今東京にいるの?」

「え…、そもそも東京の人じゃないから、帰るんだとは思うけど…今もいるのかどうかはわかんない。」

「連絡は来たりしてない?」

「連絡先消したからもうわかんない」

「…そっか。OK」

「そんなことはもうしないよ?」

「そういうことじゃないよ。はるちゃんが同じことするとは全く思ってない。だけど、…何してくるかんかんないから。もう少し気をつけてよう。帰りなるべく一人にならないようにして、あ、志摩さんにも言っておくから。」

「連絡手段がないから大丈夫じゃない?」

「んー…」

「伊吹、やけに心配するね」

「当たり前じゃん。はるちゃんに何かあったら嫌だし。それに、…あの人の目が気になって。」

「目?」

「まあとりあえずは今日を楽しもう!ね!次何乗る?あ、なんかショーとか観る?うわーどうしよう迷うな〜」

「ビッグバンドビート観たい」

「なにそれ?ビが多くない?」

「ジャズだよ!音楽!あーでも、伊吹寝ちゃわないかなあ」

「大丈夫だよ〜オレ音楽好きだしー!」




この後2人で爆睡したのは
言うまでもない。



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