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#リフレイン 25

「はーるちゃん」

帰ってきてキッチンを覗くと
彼女が料理をしていた。
声をかけられた彼女は木べらを持ったまま
何の表情もなくこちらを振り返る。

「あ、おかえり」

いつもの光景。

「ただいま〜」

「なんでニヤニヤしてんの?」

「え?してる?」

「うん。」

「今日もはるちゃんがはるちゃんでよかったな〜って思ったの」

「なあにそれ?」

「褒めてんの〜」


彼女は怪訝そうな顔をしていたが関係ない。
今日もいつも通りの生活を送れて
はるちゃんがいつも通りだということは
本当に有難いこと。
家に帰って彼女がいると
本当に安心する。
今日も、無事だったって。


あれから、数ヶ月経っただろうか。

ごはんを食べ終わって、
彼女もあらかた片付けが終わったようだった。


「はるちゃんさあ」

「ん?」

「…そのー、」

「何?」

「手、繋いでもらっていいですか?」

「手?…あ、うん。はい」

「じゃあこっち座って?」

「うん」

「うわー。ほっそ!指長いね」

「手相でも見るの?」

「ううん。違うけど。繋ぎたいから。なんか、触れたいっていうか」

「…寂しいことでもあった?」

「んー?いやそうじゃないんだけど…んー、そうなのかなあ。…オレはね?はるちゃんとね?もっと、関係を深めたいなって。オレはそう思ってた。」

「私だって思ってるよ?」

「え?そうなの?」

「でも…なんかそういう空気に?なってない?私が慣れてないのもあるし、…思い出しそうになるのが怖いのもある。私思い出したくないの。伊吹と…そうなってるときに…伊吹だけになりたいから、」

「え…だけになりたい…わお…」

「嫌だからとかじゃないからね?そんなんじゃない。ただ、不安なの。でもこのままじゃずっとこのままになっちゃうし…どうしたらいいかな?」

「わ、わわ、…そんなふうに思っててくれたんだ…もうそれだけで嬉しい」

「どういうこと?笑」

「いや。うん。大丈夫。オレが弱気になってただけだね。」

「弱気?どういうこと?」

「…ほんとはね?はるちゃんは、志摩さんのほうがあってたんじゃないかなあって思っちゃって…本当にオレでいいのかなあって…」

「私は、伊吹がいいの。」

「…」

「確かに、志摩とは考えが合う。お互いに同情できるのはわかってるの。だけど、それはただの同情。私たちは一緒に不幸になることはできても、お互いを幸せにすることはできない。もちろん、志摩のことは仲間として好きだし、助けたいとも思う。だけど、そういうのじゃないの。」

「…」

「…不安だったんだね。ごめん。私伊吹のこと大好き。」

「…オレさ、ホントは怖かった。今日、家に帰ってはるちゃんがいなかったらどうしようとか、また連れ去られたりとか、…嫌なことが起きてたらどうしようって。だからいつも、おかえりって言ってくれるのが嬉しくて…今日も無事だったって。本当に安心する。はるちゃんも志摩さんも、オレのこと、引っ張ってくれるみたいなこと言ってたけど、自分では全然そんなこと思ってなかったし。ただ何も考えてないだけなんだよね。志摩さんみたいにもっと冷静に考えられたら、…あんなこと起こらなかったかもしれないでしょ?…」

「…心配かけてごめん。でも伊吹がそんなふうに思う必要はない。私と志摩からしたら、その行動力は羨ましい限りだし、伊吹についていくって私は決めてここにいるの。だから、自分を責めないで。私はちゃんとここにいる。…出かける時は、ちゃんと連絡してるでしょ?」

「…うん。そうだよね。ごめん。」

「謝らないで。もっと伊吹が弱音を吐けるように、私も強くなる。」


どうしてそんなことが言えるんだろう。
どこまでこの人は、他人に優しいんだろう。

強くて、優しくて、
いつも凛としている。

敵わないなあ。

「結婚、しようか」

彼女は目をこれでもかってくらい開いて
驚いていた。
驚いていたけど、うん、と頷いていた。

ちゃんと、
守っていけるように、
いつも
安心して暮らせるように
オレが

幸せにする。

ーFINー




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