亜成虫の森で 3 #h
帰り道に本屋に寄った。
シャッター街と化していた商店街の一角に、ひとつだけぼうっと明かりがついている本屋だった。
まあネットで買えばいいんだけど、もしこのお店にあったら買って帰ろう。そう思った。
小さい本屋さんで、古めの本がたくさんあった。
欲しいのは新刊なんだけど、あるかな?
うろうろしているとエプロンをした店員さんが話しかけてきた。
「何かお探しですか?」
「あ、…あの、こういう本を探してるんです」
ケータイで画面ごと見せた。
「ん?…あったかな、ちょっと待っててね」
優しそうな人だと思った。
ちょっと色黒で、小柄な、でも雰囲気がいい人だ。似合わない赤いエプロンをしている。
「これ、かな?」
「そうです。これです。買います」
「ありがとう」
店員さんはふわっと笑ってレジまで案内してくれた。
「また来てね」
「あ、はい。ありがとうございました」
また来てねって、本屋さんで言われたことないや。
てか、本屋さんじゃなくても言わないよね。
小さいお店ならではの、距離感かな?
優しい雰囲気で、あたたかくて、
いいお店だった。
お客さんもほとんどいないし。
静かで。
そういうのは嫌いじゃない。
また何かあったら来ようかな。
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