亜成虫の森で 13 #a


「はるさん?」

「…」

「はるさん?大丈夫ですか?」

「あ、…ごめん。ぼーっとしてたね。どうかした?」

「いやもう、終業時間とっくに過ぎてますよ?」

「え?!うそっ?!」

「珍しく残ってるから何か仕事あるのかと思って…手伝おうかなって思ったんですけど…」

「いや、大丈夫。終わってる。帰る。」

「なんか悩みでもありましたか?ずいぶん怖い顔してましたよ?」

「…怖い顔は生まれつきですー」

「そうだ!ごはんでもいきません?」

「…そういう気分じゃないな…」

「そうですか…じゃあ、」

「あ、待って。ちょっと時間ある?」

「ん?ありますけど…」

「ちょっと付き合ってちょうだい」

彼女に連れられて、会社の最上階のテラスに出た。

「うわ、すごい。景色いいですね」

「この時間なら誰もいなくていいね」

「でもなんでここなんですか?」

「外、いいでしょ。風が吹いて。気持ちがいい。」

風になびかれる髪が彼女の顔に当たる。
とても、元気とは思えない表情だ。

「…。僕でよかったら話聞きますよ」

「…。ふふ。先輩が後輩にする話ではないんだけどねー。ただのダサい話っていうかさ。」

「なんですか?」

「私、人が怖いの。人と仲良くするのが怖いの。」

「え?だって、二宮さん…」

「あの人は…いいの。なんか、大丈夫。あの人は私をわかってる。距離を取れる人なんだと思う。」

「…?誰かと仲悪いんですか?」

「ひとりになっちゃダメだって、みんな言うの。だけど、私は誰かを傷つけるくらいならひとりでいたほうがいいと思ってる。にのとは仲はいいけど、距離が取れてるから今は大丈夫。だけどこれ以上近づかれたり、近づいたりしたら、私は離れたくなると思う。」

「必ず傷つけるって、わかってるんですか?」

「…。」

「かもしれない、ですよね?」

「嫌なんだよもう。可能性があるだけで、怖い。」

「そんなこと言ってたら誰とも仲良くできないじゃないですか。恋愛できなくないですか?」

「そうだね。…する気もない。」

「…。僕はひとりでいても、いいとは思うんですけどね。」

「それは、逃げになるのかな?」

「どうでしょう。」

「…ね?くだらない話でしょう」


「僕は、二宮さんはもっと頼って欲しいと思ってるんじゃないかなあって。思いますけどね。」

「…そうかなあ。」

「僕が二宮さんなら、そう思うかな。」

「…」

「好きなんですよね?二宮さんのこと」

「…。どうかな。」

「一番近くにいたい人と、いたらいいじゃないですか。

あと、関係ないかもしれないんですけど、僕は、はるさんのこと、尊敬してるし、仲良くなりたいなあって思ってます。」

「…ありがと。」

「いつでも誘ってくださいね!僕暇なんで!」

「相葉くんは彼女いないの?」

「いませんよ〜!いたら誘ってくださいとか言いませんよ笑」

「そっか。よかった。帰ろっか。」

「…はい。」


屋上から下がってきてエントランスを出るとポツポツと雨が降ってきていた。

「え?雨?嘘でしょ」

「はるさん!行きますよ!」

「え?!あ、ちょっと…!」


彼女に自分のジャケットを頭からかけて肩を抱いて走った。地下鉄の乗り場へ降りる階段のところまで走った。

「…よし、ここまでくればいいかな」

「ちょっと…疲れたんですけど…」

「すいません笑 でも傘ないから…」

「私折りたたみ持ってるのに」

「え?!そうなんですか?!早く言ってくださいよ〜」

「だって引っ張るからいうタイミングなかったよ」

「ふふ。でもちょっと楽しかったな」

「え?」

「はるさんと一緒に走って。おもしろかったなあって」

「相葉くんって変わってるよ」

「えー?そうですかね?笑」

「まあいいや。ありがとね。ジャケット、濡れちゃってごめん。」

「いえいえ。はるさん気をつけて帰ってくださいね。」

「うん。また明日。」


彼女は手をひらひらさせて地下鉄へと続く階段を降りていった。

身長差が20センチ以上あるから、わかってはいたけど、手を回した時の肩が華奢で、細さに驚いた。

あんなに強気でいる彼女なのに、よくあの身体でいろんなことを耐えているなと思った。


彼女はいつもそうだ。
いつもひとりで頑張っている。
大学の時だってそうだった。

たかが、と言ってはあれだが、小学校で発表する合唱でも、絶対に練習の手を抜かなかった。

いつも真剣な顔をして物事にあたっていた。

彼女には人が集まる。
なのにどんどんひとりになろうとする。

いつもどこか影った表情を見せる。



僕は何故だか
その顔を見ると

悲しい気持ちになるんだ。


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