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#リフレイン 23
「てめぇ!!!!!どういう神経してんだ?!死にてえか!!」
伊吹は飛びかかってガンガン殴っていた。
「伊吹伊吹!ちょっと待て!」
制裁に入り、頑張ってふたりを引き剥がすと
その人はニヤニヤ笑っていた。
「はは…なんだこいつ、本当に殺す気かよ」
「ええ、殺すつもりですよ」
「はあ?」
「こいつはね?自分の大事な人は何があっても守るんですよ。何があっても。何をしてもどうやっても。意味、わかります?
というか、あなたこそどういうつもりでしょう?立派な犯罪ですけど?」
「ふはは。ははは!」
「…何笑ってやがる」
「なあなあ、志摩ってどっち?」
「オレだけど」
「なあ、あんたあいつとヤったの?」
「はあ?」
「なあ、そっちの、あんたはさあ、あいつとヤったの?」
「何言ってんだコイツ」
「はは…はははあはははは!どっちもまだなんだろ?ははっ…オレの勝ちだな。アイツはオレのオンナ〜
っぐふっ、」
伊吹の蹴りが入る。
「本当に殺すぞ」
「こんなにヤベェ奴だったのか」
いくら殴られても蹴られても立ち上がるこの人の諦めの悪さも相当にヤバい。
「…あいつはオレのストーカーなんだわ。延々とオレを追い回して。あいつ、夢が叶ったんだぞ?あいつはさあ笑 ほんと、いつまでもいつまでも気持ち悪いわなあ〜」
「そんな事実はない」
その人の目線が奥に行く。
「…なんだ、いるじゃねえか本人」
「は?!なんではるちゃん連れてきたの?!てかなんで志摩さんいるの?!一緒にいてって言ったじゃん!!」
「落ち着けって!ちゃんと話して連れてきてる。
…終わらせんだよ。今日で。全部な」
「まさかはるかからオレに会いに来るとはね〜」
「…なんであんなことするの。ただの犯罪だよ」
オレたちの後ろで、
はるかさんは小さい声でそう言った。
「オレがお前の最初だって知らしめたんだよ。世界中にな、嬉しいだろ?」
「…何の必要があってそんなことするの」
「おもしろいだろ」
おもしろい?
「…犯罪なんだよ?ただの。ただの犯罪!」
「はーい出た出た正義の味方。いつも正しいもんな、お前は」
「…」
「正しいからなんだよ。お前の正義なんていらねえんだよ。正義ってのは、人それぞれあるんだ。お前が、自分が正しいと思ってること自体がフセイギだろうが」
「お前にそんなこと言える資格ねえだろ」
「でもさ。ウケるだろ?ちょっと好きだって言っただけでノコノコついてきやがって。ちょろいな。ほんと。」
「…」
「好きなわけないだろ。お前みたいなストーカー。かわいそうだから相手してやったんだよ。店行くより安上がりだろ?タダなんだから」
伊吹が低い声で言う。
「お前人の気持ちなんだと思ってんだよ」
「は?」
「お前…人の気持ちなんだと思ってんだよ…あ?人の気持ちなんだと思ってんだよ!!!!!」
「…あんたもガキじゃねんだからさあ。」
「そうだな。オレはガキじゃねえ。立派に大人になっちまったよ。だけどなあ。ひとりの人を、好きになって、すごく好きで、だけど別れて、でも納得いってなくて悩んだり考えたり後悔したりした時間をよお…お前は無駄だっていうのかよ。」
「無駄だろ。人生の無駄だ」
「だけどはるちゃんは、一所懸命考えたんだよ。考えて、無駄だなって思って、でも思い出したりして、それもダメだって、わかって。そういう、今までの想いを、お前は…」
「何年前の話ししてんだよ。バカじゃねえの?」
「伊吹。もうやめとけ。言葉がもったいない」
「志摩さん、」
「あのー。あなたの考えも一理あるとオレは思います。長い間一つのことに時間を費やす。無駄に思えることもあるかもしれない」
「志摩さん!!!!!」
「だけど!!はるかさんのことを、はるかさんの時間を、考えを、気持ちを、無駄と言うのはやめろ。それを無駄かどうか決めるのはあなたではない。もちろんオレでもない。だけど、オレは無駄じゃないと思ってる。立派な彼女の時間だ。あなたのような人に、最終的にはるかさんがついていかなくてよかったです。
伊吹。行くぞ」
「…はあ?なんであんたがそんなこと言えるんだよ偉そうに。あんたらに関係ねえって言ってんだろ…だいたい、あいつがいつまでも引きずってんのが悪いだろ。ストーカーが笑」
「お前…!」
「伊吹。下がってろ」
「え?」
「オレがはるかさんの分、仕返ししてやるんだよ」
「何をぐちゃぐちゃ言って、」
「引きずってんのはてめえだろ!二度と顔見せんな!!」
言いようのない鈍い音がすると同時に
その人は割と吹っ飛んだ。
伊吹に負けずオレも意外とやれるもんだ。
「…志摩さん?え?死んでない?死んだ?ぐったりしてる?」
「これぐらいがちょうどいいだろ。」
「志摩さん大丈夫?いいの?志摩さんが逮捕されんじゃない?」
「いいんだよ。オレさあ、警察にちょっと顔効くんだわ。その辺で見てたと思うから。引き渡しすっからはるかさんよろしく」
「…わかった。
はるちゃん?立てる?」
「…もう…これ以上はもう。志摩も、伊吹も、私のせいで…」
「はるちゃん。大丈夫だよ?」
「だって、…手が…」
「大丈夫。全然痛くない。」
伊吹の手もだろうが
オレの手も血が滲んでいた。
そう。全然痛くない。
痛くない。
「おーい!そういえば、伊吹」
「何志摩さん」
「はるかさんがなあ、伊吹に嫌われちゃったらどうしようって言ってたぞ。お前ちゃんとはるかさんに言い聞かせないとダメだろ。そんなんじゃオレが貰ってくぞ」
「志摩さんには渡さないよーだ。これからみっちり言い聞かせるから心配しないで」
「…よろしく」
「志摩余計なこと言わなくていいのに、」
「はるちゃん?」
「はい」
「無事でよかった。」
「…ごめんなさい…」
「痛いところは?ない?具合は?気分はどう?」
「ちょっと体がダルいけど…だんだん良くなってきた。」
「うん。よかった。」
「私あんな人好きだったんだって思ったら、悔しいし、ありえないし…怖いっていうか…」
「もう終わった。大丈夫」
「…伊吹は私のこと怒らないの?」
「どうして怒る必要があるの?」
「私失敗したから。ついていっちゃったから。迷惑かけた。困らせた。それに痛い思いもさせた。私は…、…怒られないように生きてきたの。言いたいことを言わない、思ったことも言わない、その場の…親の気分に合わせて言葉を選んで生きてた。少しでも余計なことを言ったり、何かを失敗するとすごく怒られた。怒鳴られた。怖かった。だから、失敗したらいけないの。失敗は怒られるものだから。」
「はるちゃんはさあ。んー。もう怒られなくていいんだよ?大人になったから、大丈夫なんだよ。それに、今回のは失敗じゃない。オレは怒ってない。心配はした。すごく、あの人が嫌だなっても思った。だけど、はるちゃんに怒るのは、それはない。違うから。もう我慢しなくていいんだよ。大丈夫だから。オレははるちゃんを嫌いになったりしない。
オレがはるちゃんの安全基地になる。
なんでも言える、相手になりたい。」
「…」
「まだまだ信じられないと思う。だけど、信じてほしいし、信じた分、絶対に裏切らない。オレは必ず、隣にいるよ」
引き渡ししている後ろで
ふたりの会話を聞いていた。
オレだってそうだ。
オレだってずっと隣にいるし
そばにいるし
安全基地になる。
彼女は伊吹に向かっていく。
わかってはいる。
だけど、あの広げられた両手に
何か意味があったんじゃないかと
期待してしまう自分もいる。
しょうもない。本当に。
本当に。
しょうもない。
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