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戦争=経済の図式! クリストファー・ブラットマン『戦争と交渉の経済学』

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

 今回は2023年7月に出版されたばかりの話題作、クリストファー・ブラットマン『戦争と交渉の経済学ーー人はなぜ戦うのか』を紹介します!

「戦争なんて遠い国の話」そう思っていませんか?
 Z世代の半分が8月15日が何の日なのかわからなかった、というアンケート結果を大学教授から聞きました。

 実は、この本には、私たち一人ひとりの日常にも深く関わる、驚くべき真実が隠されているんです。

経済学で戦争を分析? 意外な視点に目からウロコ!

「戦争」と「経済学」一見すると繋がりのなさそうな二つのテーマ。

 でも、この本を読めば、この組み合わせが当然だという事実に、ハッとさせられるはずです。

 著者は、経済学の理論、特にゲーム理論を巧みに使い、戦争がなぜ起こるのか、そして平和をどのように実現できるのかを、わかりやすく解説しています。


 ブラットマンは、戦争が起こる理由を以下の5つに分類し、それぞれの理由について、ギャングの抗争から世界大戦に至るまでの幅広い事例とゲーム理論を用いて詳しく解説しています。


第一の理由「抑制されていない利益」

人を和平へ向かわせる主なインセンティブは戦争のもたらす犠牲だが、戦争を決定する人々が集団内のほかの人々に対して責任を負わない場合、彼らは武力衝突による犠牲や苦難をある程度無視できる。そうした指導者たちは集団をしばしば戦争へと導く。場合によっては、彼らが武力衝突から私的利益を得ようとしていて、早く開戦したいとウズウズしている可能性もある。このこのような抑制されていない支配者は、歴史上の多くの武力紛争を引き起こした最大の要因の1つである。

クリストファー・ブラットマン 『戦争と交渉の経済学ーー人はなぜ戦うのか 』草思社Japanese Edition.Kindle Edition.2023

第二の理由「無形のインセンティブ」

暴力に訴えることで、復讐や、地位の獲得、支配など、価値のある目的を達成できる場合がある。一方で、神の栄光や、自由、不正との闘いなど、道義的な目的を達成する唯一の手段が暴力の場合もある。一部の集団にとって、こうした形のない報酬は戦いから苦しみや損失を取り除く。無形の報酬を最優先に置く集団は、戦争がもたらす犠牲をいとわず、妥協を拒否する。

同上『戦争と交渉の経済学ーー人はなぜ戦うのか 』

第三の理由「不確実性」

ポーカーでブラフ〔ハッタリをかけて相手をだますこと〕をした経験がある人は、この論理がわかるだろう。相手がどんな手を持っているかは不明だが、相手にあなたをだまそうとするインセンティブがあることはわかっているという状況だ。あなたにとって最善の対応が、絶対にフォールド〔勝てないと判断してゲームから降りること〕しないことであるのは明らかである。それと同じように、戦争においては敵の戦力や戦意の程度がわからないし、ブラフをされている可能性もある。だからコールする〔相手が賭けた金額と同じ額を賭ける〕ことがあるのだ。自分が相手と同じ情報を持っていない場合は、たとえ戦争が不利益であっても、攻撃が最善の戦略になる可能性がある。

同上『戦争と交渉の経済学ーー人はなぜ戦うのか 』

第四の理由「コミットメント問題」

通常、敵対集団が台頭してきたときの最善の選択は、何らかの譲歩をすることである。だが、相手の台頭を事前に察知したらどうだろうか? 今なら、まだ優勢なうちに攻撃し、自分たちの衰退を防げるのだ。迫ってくる力関係の変化が大きければ、攻撃のインセンティブに抗えないかもしれない。こちらが攻撃しなければ、その代償として敵は何を約束するだろう? 強大になっても、新たに獲得した力を行使しないと言うだろうか? いや、相手はそれを約束できないし、たとえ約束したとしてもそれが信用できないことを双方がわかっている。これがコミットメント問題である。つまり、双方が戦争による破滅を避けるために政治的取引を望んでいるが、その取引がまったく信用できないという状況だ。

同上『戦争と交渉の経済学ーー人はなぜ戦うのか 』

第五の理由「誤認識」

人間は自信過剰な生き物である。それに、ほかの人々も自分と同じように考え、同じものに価値を見いだし、同じように世界を見ていると思い込んでいる。そのため敵を悪魔のように捉え、邪悪な動機を持っていると決めつける。私たちは、大きな集団であっても、さまざまな種類の誤った信念を持っているために、合意できる条件を見いだす能力を誤認識に奪われてしまうのだ。競争や対立はこうした誤った判断をさらに悪化させる。

同上『戦争と交渉の経済学ーー人はなぜ戦うのか 』

 これらの5つの要因は、単独で作用することもあれば、複雑に絡み合って戦争を引き起こすこともあります。ブラットマンは、歴史的な事例や現代の紛争を分析しながら、これらの要因がどのように相互作用し、戦争へと至るのかを明らかにしています。

「人々はめったに戦わない」って本当?

 この本で最も印象的なのは、「人々はめったに戦わない」という著者の主張です。戦争は、私たちが思っている以上にコストがかかるもの。だからこそ、多くの人は、交渉や妥協によって問題を解決しようとするのです。この事実に気づけば、きっとあなたも、人間関係や社会を見る目が変わるはず。

ギャングの抗争から世界大戦まで!身近な事例で戦争の本質に迫る

 本書の魅力は、その身近な事例にもあります。ギャングの抗争から世界大戦まで、戦争の規模を問わず、様々な事例を分析することで、戦争の本質に迫っています。読み進めるうちに、「もしかしたら、自分も戦争を引き起こす側に…」そんなゾッとするような感覚を覚えるかもしれません。

平和へのヒントは、この本の中に

 戦争の恐ろしさを知るだけでなく、平和を実現するためのヒントも、この本には詰まっています。交渉における情報開示や信頼構築の重要性、妥協点を見つけるための戦略など、どれも私たちが日常生活で実践できるものばかり。この本を手に取れば、きっとあなたも、平和な世界を作る一員になれるはずです。

わかりやすい解説で、今日から平和の専門家になれる

「戦争に基づく経済学なんて難しそう………」そんな心配は無用です。専門用語を避け、わかりやすい言葉で書かれているので、経済学の知識がなくても、安心して読み進められます。読み終える頃には、あなたも戦争と平和について語りたくなると思います。

今こそ読むべき一冊! 平和な未来のために

 世界では、今も争いが絶えません。そんな今だからこそ、この本を読んで、戦争と平和について深く考えてみませんか?この本が、あなたの平和への第一歩となることを願っています。

 国際関係や政治に興味のある方、そして何より平和を求める方には、ぜひおすすめしたい一冊です。

戦争、交渉、経済現象
未来の平和、考えましょう!

【編集後記】
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