- 運営しているクリエイター
記事一覧
〈小さなことばたちの辞書〉に自分だけのことばを集めること、それはわたしの人生そのものとなる。
頭に浮かんだのは、数年前に観た映画「博士と狂人」だった。
あれも確かオックスフォード英語大辞典編纂に纏わる実話だったはず。
調べてみると、時代背景や人物は「博士と狂人」に描かれたのと同じ実在のものをベースに、辞典には載せられない(正確な出典のない)市井の人たち─主に女性たち─が使う「迷子のことば」に関心を寄せ、生涯に渡ってことばと向き合い続けた一人の女性の姿をプラスし、女性参政権や第一次世界大戦
【白の闇】見えなくても見えていること、見えているのに見えないと思っていること
読み終わってからしばらくの間、その世界から抜け出せなかった衝撃作。
少し前に読んだ同じくサラマーゴの「象の旅」で、彼の書く文体や構成力に唸らされ、手に取らずにはいられなかった本書。
ある日突然失明してしまう「ミルク色の海」の感染が急拡大し人間としての尊厳を失うことになった者たちの、極限状態の秩序もルールも存在しない世界がこれでもか、これでもか!というほどに描かれている。
そしてただ一人の女性だ
子を想う親と、親を想う子の物語 【カラスのジョンソン】
住んでいるところも年齢も違うけど、同じ道産子で、同じく看護師というInstagramで知り合った彼女とは、読んでいる本が示し合わせたように同じだったり、古代エジプトに魅せられていたり…とまだ一度も会ったことがないのに、ずっと前からの知り合いのような、不思議な繋がりを感じている。
その彼女が一年半ほど前に紹介していて、「これはいつか必ずや」と思っていた「カラスのジョンソン」
先々週末の伊勢原への行
「名もなき人たちのテーブル」席では、ひっそりと面白いことが起こることになっている。
【読書記録】
文字を目で追っていると、瑞々しい言葉が波のように心に寄せては返し、胸の奥で沸き立つ静かに熱く燃える何か…を抑えきれなくなった。
鼻の奥がツンとして、視界がぼやける。
─人生
─その中で出会う人や事物
─自分を失い、流され、落ちゆく深淵
出会わなければよかったのに出会ってしまった人。
出会うべくして出会えた人。
その誰とだっていつでも会える、なんてことはない。
懐かしい声を聴
〈あの図書館の彼女たち〉 戦時下における本の力について考える
戦争✕図書館──
つい手に取ってしまう本のテーマである。
【あの図書館の彼女たち】
今年4月に出版になった《あの図書館の彼女たち》は、第二次世界大戦中のパリ…にあるアメリカ図書館を舞台にしていて、実在の出来事や人物を基に肉付けされたストーリー、というのが私の読みたい意欲を掻き立てた。
本が人と人とを結びつけ、心を育ませる一方で、つらい別れをも呼び込むこととなる。
図書館に収蔵された本の運命と
《カンガルー・ノート》 彼の脛から生えるは「毛」ではなく「かいわれ大根」
【読書記録】
初めて読んだ「砂の女」で、安部公房の沼に片足を突っ込んで抜けなくなってしまった。
二作目に選んだカンガルー・ノート。
遺作に手を出してしまったことが吉と出るか凶と出るか。
読み始めて5ページ目にして、すでにある一言を言いたくてたまらなくなる。
なんのはなしですか
これは一体
なんのはなしですか
脛からかいわれ大根。
その生え始めの描写が、たまらない。
たまらなく気持ちが悪い