『春琴抄』再読

40年以上前の幼い頃、自分の目に針を刺すシーンをテレビでたまたま見ていて、それが強烈なイメージとして今も心に残っている。

ずいぶん経ってから、おそらく『春琴抄』の実写ドラマだろうということに気がついた。

『春琴抄』は大学時代に読んだが、今思うと当時はあまりよく分かっていなかったように思う。幼い頃のテレビのあのシーンがこれだということは直感したが、それほど深い感銘は受けなかった。

最近、伊藤亜

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闇の住む家

夜景に心が動かない。ライトアップにもあまり興味が湧かない。
どうしてだろうなと思っていたその謎が解けた。
『陰翳礼賛』、この本を読んで。
私は闇の生きている家で育ったからかもしれない。
土でできた真っ暗な蔵の中で、わずかにドアの隙間からのぞく光は圧倒的な闇にのまれて、入ってこようとはしなかった。
長く続く廊下は、壁につけられた電気のスイッチがどこにあるかわからないほどの闇だった。怖いのを我慢しなが

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陰翳礼讃

『陰翳礼讃』谷崎潤一郎 中公文庫

本書、1933年に谷崎潤一郎によって書かれた「美」に関する随筆です。

谷崎は「美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にある」と論じています。

また、東洋の美と西洋の美を比較し、東洋、特に日本では何でもない所に陰翳を生み出し、美の創造にあたってきたとしていました。

特にそれは日本家屋の薄明り中で顕著にあらわれると述べていて、日本の漆

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ありがとうございます!よろしければスキの理由を教えて下さい。
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心に染み込む文章読本

谷崎潤一郎さん、三島由紀夫さん、川端康成さん等の文章読本を読みましたが、俗な言い方ですが、一番実用的で心に残っているのは、丸谷才一さんのものです。

名文をひたすら読めとか、子供に作文を造らせるなとか、かな使い等色々と教えてもらいました。

これを読んでから、永井荷風さんの文章の美しさや、日本の純文学の面白さが少しわかるようになりました。

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ダメ男、とりあえず起き上がる

◆はじまりのはじまり

正直、サブタイトルってのはあんまり好きじゃないのですが、どうしてもね、こういうことをしないと自分で趣旨を見失いそうなもので。

わかる人にはわかるはずですが、このページのサブタイトルは谷崎潤一郎の名作「猫と庄造と二人のをんな」のモジリです。
この小説、映画にもなってる。1956年に森繁久彌主演、豊田四郎監督で東宝で作られました。
まァね、古い映画なので見たことがある人は限ら

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【ナチュラルな表現者】 谷崎潤一郎

弊誌編集長で、ビールと昆虫図鑑とトリビアが好きという嶋浩一郎が提案するのは、少し変わった文学の読み方。毎回、一人の作家にフィーチャーしながら、物語とは別の見どころやおすすめの作品を紹介します。

文学作品の意外なところにスポットを当て、作品を別の角度から楽しもうという読書法を広めるために始まった当連載。今回取り上げるのは近代文学の代表作と言われる谷崎潤一郎の『細雪』。中公文庫で936ページもある長

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🎥「卍」(1964年日)、岸田今日子が園子、若尾文子が光子を演じる。美の共演。光子の服装が鮮やかで見入る。園子の夫役船越英二のすっとぼけ振りも良い。小説ではもっと深刻な空気を感じたが映像で見ると人間模様の滑稽みがより強調されギャグのように感じるシーンが多く思わず笑ってしまった。

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買って良かった本 『秘密』

こんにちは。ダメ大学生と申します。

今回は、買って良かった本について書いていきます。

立東舎さんの、”乙女の本棚” というシリーズの第16弾である、『秘密』という作品です。

谷崎潤一郎の短編小説である『秘密』と、イラストレーターのマツオヒロミさんのコラボレーションを楽しめる作品です。

谷崎潤一郎といえば、『刺青』や『痴人の愛』など、フェティシズムや男女の少し特殊な関係を描いた耽美な小説で知

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ありがとうございます!
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シュッとした卑しい徳

其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。

 これは谷崎潤一郎の『刺青』という短編小説の冒頭です。私の最も好きな小説冒頭のひとつです。予備校の現代文の授業でこの書き出しが紹介された時に、こんな美しい書き出しがあるのかと激しく感動しました。そしてすぐに読むことはできませんでしたが、無事に大学に合格した後しばらくして、やはりその感動を忘れること

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谷崎潤一郎『卍』。美術専門学校に通う二人の女性が出会った事により始まる関係。主人公園子の語りで前編大阪弁、最初は違和感があるが次第にリズムを飲み込めてくる。どんな形にせよ愛とは振り回し振り回される事なのか、そしてそれが幸せそのものか。倒錯とは第三者が見て決めるものかもしれない。

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