yushin_ito

会社員兼Football Traveler。アウトプットをサッカー(W杯、CL、EURO、海外各国リーグ等を現地観戦)、食、旅、本で回していく雑文。 著書 『宴の記憶 ―眼の前にあったワールドカップ―』 https://www.amazon.co.jp/dp/B0881WHNRC

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    • 旅とはそういうものかもしれない。日常の窓を開けて、新鮮な空気で入れ替える。

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    書評|一人称単数

     村上春樹の『一人称単数』は話者によって紡がれた短編集。思考のあくのようなものをすくい取り、煮詰めるとこういう文章になるだろう。  著者の作品には「表裏」が存在する。文体は軽やかでありながら、感情表現は起伏に富む。人間の言葉を話す猿など、極端な展開を設定しながら、日常の趣がそこにある。起承転結をそのまま受け止めても、物語として充分に成立する。  しかし、自分自身の過去や現在、果ては未来につながり、感情を呼び起こす力も持つ。ノスタルジー。後悔。感動。期待。それはまるで、読者

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      • 旅|カタール|2

         その日、東京は朝から前が降り続いていた。出発の日。四年前もそうだった。雨に濡れることを想像しながら身支度を整えた。何気なく、窓外に視線を送る。鈍色の空から落ちるものは何もない。離れた場所から背後の窓を見やった。レースカーテンが黄色く染まっていた。視界は開き、道も開いた。モーゼを想像してしまう自分におかしみを覚えた。  成田へ向けて地下を駆け抜けていく。新橋、日本橋、東日本橋。記憶にはそれらの地名が刻まれていた。青砥だっただろうか。息継ぎを楽しむ魚のように、紅葉に染まった風

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        • 旅|カタール|1

           サッカーが放つ引力によって、僕はカタールへと導かれた。四年前にかかった魔法が解けていなかったとも言えるし、そもそも、その魔法は解けるようなものではなかったのかもしれない。ドイツ。スペイン。組み合わせ抽選会で決まりゆく日本代表の未来に、自分のそれも重ね合わせたかった。傍観していたワールドカップが日常の目標へと変貌を遂げる。  彼方へと広がる砂漠。屹立する近代的なビル群。異国情緒に満ちたカタールの風景を頭に描いた。連日世界中のサッカーを愛する者たちと競ってチケットを手に入れた

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          • カタールW杯 ポーランド 2-0 サウジアラビア ・Sの俊敏な動きに手を焼くP ・先制点はキャッシュのオーバーラップによって生まれた ・技術的にも優れ、運動量も豊富なS ・詰めの甘さや勝敗を分けるのは国外での経験不足によるものだろうか

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            カタールW杯 カタール 1-3 セネガル ・ゴール前の守備にミスが散見されるQ ・チャンスを作ってもメンディが立ちはだかる ・Sの三点目は決めたディエンも素晴らしいが、エンディアイエのアシストとその前の前線へと飛び出す動きが勝負を決めた

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            カタールW杯 ウルグアイ 0-0 韓国 ・俊敏性と強度の高さを融合した、インテンシティの高いKの動きが印象的 ・即時奪回を目指したプレスがUの自由を奪う ・バルベルデを中心に局面で見せるUの高い個人技

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            書評|Aではない君と

             人を殺めた子と、その親の物語。光に満ちた世界が一瞬にして闇へと変わる。その闇の中でもがき続ける日々は生々しく、痛みを伴うが、眼を離すことができない。  何度も登場する「向き合う」という言葉。主人公の吉永圭一はその意味を自問自答する。表面的にではなく、海底へと潜るように。息子である青葉翼の内面へと意識を向け、考え続ける。口を閉ざした我が子の真意を探る旅は重厚なミステリーとして読者を魅了する。  向き合った果てに正解は存在しなかった。人間に方程式を当てはめることはできない。

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            カタールW杯 ドイツ 1-2 日本 ・左で数的優位を作り出すG、PKにつながる ・Jは後半に入って3バックに修正、幅を埋めてGの攻撃を封鎖 ・前向きな姿勢でのボール奪取が増え、得点の予兆はあった ・しかし、逆転を生んだ浅野の個人技は想像を超える ・時間と前進できる三笘の貢献も絶大

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            カタールW杯 カタール 0-2 エクアドル ・PKを生んだ裏にQを迷わせた、複数の選択肢を作る運動量がある ・セットプレーやロングボールから高さと奥行きを作る序盤のE ・Eはボールを奪われても整備された守備が待ち構える ・縦横無尽に動き、ボールの安全地帯を作るメンデス

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            2022年J1第33節 横浜FM vs 浦和

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            Jリーグ 観戦記|前向きな循環|2022年J1第33節 横浜FM vs 浦和

             秋晴れの空から差す陽光が観客席を照らす。線香花火の瞬きのように、その表面が輝きを放つ。その青は彼方へと伸びる大海のようだ。日産スタジアム。この場所の壮大さに触れると、日々生まれるよどみのようなものも洗い流されるような気がする。    マリノスのサッカーは真水のようだ。体内の細胞を活性化させるほど冷たく、口へと運ぶ手も止まらない。眼にも鮮やかな青はその魅力を具現化している。水沼が作り出す幅が活路を開き、その上を喜田が闊歩する。十一人が一つとなり、構造体を織り成す。その姿は常に

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            書評|検事の死命

             『検事の死命』は現実的である。言い換えれば「生々しい」。主人公である佐方貞人の人間性を丁寧に描いていることはもちろんのこと、登場する人々の心の機微が文字として浮かぶ。そこには清濁がある。影が差すからこそ、光の美しさや力強さに眼が奪われる。そんな陰影に感情が移ろう。  そこに意志があるからではないか。正義の定義は千差万別だろう。その正義を果たそうとする猛々しさが引力として読者の心を引き込んでいく。「届かない手紙」といった舞台設定も秀逸だ。突飛とまでは思わせずも、確実に読者の

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            旅|知らないことがあることを知る

             風を受けて、目黒川の水面が絹のようにたゆたう。唯一無二の美。人間には創造できない、自然による麗しき景観。視線を上へと、四方へと向ける。心を開いて眼を注げば、そこにある造形の魅力に気づく。屹立するビルでさえ、独立した作品のように映る。  MUJI HOTELに泊まった。木の温もりが周囲を覆い、そこからは雑音が消え失せる。無駄な線さえも存在しない。ほのかに灯る蝋燭のように、銀座の街並みが発する光を窓越しに見つめた。穏やかな川の流れのように、時間の移ろいに身を浸す。  八月に

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            食レポ|百麺 中目黒店

             開店まで、華やぐ中目黒の街頭を練り歩く。洒脱な活気がそこにはあった。その一杯を「念願」と形容するのは大袈裟か。「百麺 中目黒店」の入り口から中を覗く。扉が開き、カウンターへと腰を落ち着ける。注文した「太麺」の到着を待った。  黒縁の丼に黄金色のスープが映える。そのスープには芯まで豚骨と醤油のうまみや香りが凝縮していた。安堵の息を吐きながら、心身を満たしていく。太麺やチャーシューは無骨と言える。繊細さと豪放さの共存。

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            プレミアリーグ 2022-23 アーセナル 3-2 リヴァプール ・高い位置からホワイトがツィミカスに寄せる、序盤はAのプレスが奏功 ・Lの選手配置によってAはビルドアップに苦しむ時間も ・マルティネッリは左サイドから前線を広く席巻 ・各選手の個性が相互作用するAは充実の時

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            食レポ|横浜家系らーめん 武術家

             黒地に黄の文字が浮かぶ看板。そこには「横浜家系らーめん 武術家」と書かれていた。雨に打たれる、朝の大井町。足元から這うように寒さが募る。突然の出会い。腹はそこに埋める食を求めていた。  早朝から食べる「ラーメン」はいつにも増して、全身にそのうまみが広がっていくような錯覚を覚える。水を求める草花のように。レンゲを持つ手を止め、充足の一杯との別れを告げた。

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