熊本熊

1962年 埼玉県蕨市生まれ 今思うことのあれこれの備忘録 忘れちゃってもいいんだけど … もっとみる

熊本熊

1962年 埼玉県蕨市生まれ 今思うことのあれこれの備忘録 忘れちゃってもいいんだけど なんとなく、ね。

マガジン

  • 2023年7−9月

    2023年7-9月に投稿した記事。

  • 読んだ・観た・聴いた

    本や雑誌などを読んで思いついたこと。書評とか感想は上手にまとめる人がたくさんいるので、そういうものはそういう人たちにお任せする。本の内容とは全く関係なく見えることも少なくないが、自分の中でつながっていることに間違いはない。たまに観る映画のことも同様に。

  • 帯に短し襷に短歌

    素朴に歌を詠むということへの憧れがある。素朴に詠めるようになりたいと思うのである。とにかく詠んでみないことにははじまらない。「こんなものは短歌とはいいません」なんて言われたっていいじゃないか。

  • 万葉集考

    万葉集をきっかけに考えたことのあれこれ

  • 2023年4-6月

    2023年4-6月に投稿した記事。

最近の記事

『草木塔 山頭火句集』復刻版 創風社出版

『あなたへ』で山頭火の句が取り上げられていて、気になったので目を通すことにした。山頭火の名前を知ったのは小学生高学年の頃だった。「あのねのね」が流行っていて、清水國明が山頭火が好きだと語っていたからだ。しかし、当時は山頭火を手にすることはなく、約50年を経て今日に至る。 『あなたへ』に登場するのは以下の句だ。 ところで、山頭火は酒が好きらしい。 自分は積極的に酒を飲むほうではないので、酒のことはよくわからない。週に一度、実家に母を訪ねてハイボールを一杯ずつ作って飲み交わ

    • 『あなたへ』 監督:降旗康男、主演:高倉健、公開:2012年8月25日

      動画のサイトを開くと、おそらく自分が以前に視聴したものと関連のあるものが選ばれて画面に並ぶのだろう。なぜそういうことになったのかわからないのだが、最近、大日本除虫菊株式会社の古いCMが並ぶ日がつづいた。大滝秀治と岸辺一徳が出演しているCMが面白過ぎて、それで大滝のことをネットであれこれ観たり読んだりした。この作品が大滝の遺作なのだそうだ。高倉健の最後の作品もこれだという。これは観ないわけにはいかない。そう思ってDVDを買ってしまった。 何を今更、なのだが、映画は一篇の詩なの

      • ジャレド・ダイアモンド著 倉骨彰 訳 『銃・病原菌・鉄(上下)』 草思社文庫

        6月の最後の木曜日に職場の勉強会でホモサピエンスの移動と言語の多様性について話をしたところ、勉強会が終わって私の席に来て雑談をした人がいた。それは数分間のことだったのだが、その後、彼から2冊の本のリンクを貼ったメールが届いた。この本と『サピエンス全史』だった。どちらも話題になったので、そういう本があることは知っていたが、読んだことはなかった。せっかくなので、手に取ったのが本書だ。 原書の発行は、1997年なので、内容の性質上これを今そのまま読むわけにはいかないが、面白かった

        • 坂田和實 『古道具もの語り』 新潮社

          8月26日に日本民藝館を訪れたとき、売店で本書を見かけた。坂田が東海道新幹線の車内誌『ひととき』の2014年9月号から2019年7月号まで隔月で掲載したエッセイをまとめたものである。新潮社で「青花の会」を担当する菅野康晴らが坂田の没後に編集を手掛け、今年5月に発行された。連載の方が坂田の病気で中断してしまったので、本書は尻切れトンボのようになっているが、事情を知っているので、その尻切れ感に坂田の不在を感じる。だいぶいい値段だったが、思い切って購入した。 『ひとりよがりのもの

        『草木塔 山頭火句集』復刻版 創風社出版

        • 『あなたへ』 監督:降旗康男、主演:高倉健、公開:2012年8月25日

        • ジャレド・ダイアモンド著 倉骨彰 訳 『銃・病原菌・鉄(上下)』 草思社文庫

        • 坂田和實 『古道具もの語り』 新潮社

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          トク・ベルツ編 菅沼竜太郎訳 『ベルツの日記(上下)』 岩波文庫

          公開を意図せずに書いた私的な文章が持つ面白さの理由を分析したら、公開を意図した中途半端に私的な文章のつまらなさの理由がわかるかもしれない。尤も、公開される「日記」は本物の日記というよりも、何事かの意図の下に編集されたり創作されたりしたものであろう。公開するということはそういうことである。 本書は明治期に所謂「お雇い外人」として来日し、日本の近代医学と医学教育を担ったエルウィン・ベルツ(Erwin von Bälz、1849年1月13日 - 1913年8月31日)の日記のなか

          トク・ベルツ編 菅沼竜太郎訳 『ベルツの日記(上下)』 岩波文庫

          スズラン給食

          26日土曜日に日本民藝館で仏教美術研究家で弘前大学名誉教授の須藤弘敏氏の講演「みちのく 近世の民間仏」を聴講した。講演中、東北地方、特に須藤先生が専門としている青森県とその周辺の暮らしを語る中で「スズラン給食」のことに言及された。そんなものがあったことすら知らず、少なからず衝撃を受けた。それで帰宅してから自分でも少し調べた。 東北地方の厳しい暮らしは、民藝館で展示されている民間仏が制作された遠い過去のことだけではなく、戦後も久しく続いていた。そのことを示す事例として話題に上

          スズラン給食

          中井久夫 『治療文化論 精神医学的再構築の試み』 岩波現代文庫

          「名著」らしい。しかし、私如きシロウトにとってはその「名著」の所以がさっぱりわからず、「猫に小判」とか「豚に真珠」の類だ。「私に小判」「私に真珠」とも言える。内田百閒流の「リアリズム」ということで言えば、本書は私にとってほぼ「無」である。ここで私のこのnoteは終わり、ということになる。それもナンなので、付箋を貼ったところをざっと読み直したのだが、なぜか付箋の箇所は本論から逸れたところばかりだった。 岩波文庫に『ベルツの日記』というのがある。あるのは知っていたが読んだことは

          中井久夫 『治療文化論 精神医学的再構築の試み』 岩波現代文庫

          焼石に水

          里帰り照らす陽射しは変わりなく一億五千万キロの熱 夏休み暑さはいつか忌避の的国民総出我慢大会 暑くても家で徒然耐えられず不要不急の外出ばかり 世間は夏休みだというのに私は休暇をとることができずカレンダー通りの生活。今年は8月11日から13日までが連休だったので、この時期に新潟県柏崎市にあるツレの実家に帰省する。コロナ前までは、新潟の海沿いの地域は、少なくとも東京よりは過ごしやすかった。ところが、昨年の夏も今年の夏も、柏崎は暑かった。確かに、熱源である太陽からの距離という

          焼石に水

          サラリーマン考 『「つながり」の精神病理』

          本書には私が社会人になった前後に書かれたものが収載されている。私が大学を卒業して証券会社に就職したのが1985年だった。あれから38年。世相というものは生き物のように時々刻々変化するものとは承知しているつもりだが、本書を読んでいて「そんなこともあったな」と懐かしさを覚えるところが少なからずあった。それが懐かしいと感じられるほどの過去であることに若干の衝撃を受けた。 自分はいわゆる「サラリーマン」だと思っていたが、近頃「サラリーマン」という言葉を聞かなくなった。ひょっとしたら

          サラリーマン考 『「つながり」の精神病理』

          家族考 『「つながり」の精神病理』

          私が高校を卒業したのは1981年3月だ。高校在学中の1980年11月29日に神奈川県川崎市高津区で浪人中の男性が両親を金属バットで殺害するという事件が発生した。犯人の男性はその高校の卒業生だ。今と違って当時は犯人の実名や出身校などが当然のように報道されたので高校の知名度が一時的に急上昇した。同年4月に大学に入学し、第二外国語の最初の授業で自己紹介をさせられた際、出身校を言った後に「ちなみに両親は健在です」とやって少しウケた。 本書にこの金属バット殺人事件についての中井の考察

          家族考 『「つながり」の精神病理』

          中井久夫 『「つながり」の精神病理』 ちくま学芸文庫

          中井のことは今年になってアマゾンの「あなたへのおすすめ」で見かけるまで全く知らなかった。もともと戦中戦後の世相に興味があって、中井の『「昭和」を送る』に目が行った。それだけというのもナンなので、中井の作品をまとめて注文して、それが部屋の隅に積み重ねられている。それをこうしてぼちぼちと読んでいる。本書も大変興味深く、本書だけでいくらでも何事かを書くことができそうな気がする。とりあえず表題作に限定して思いついたことをまとめておく。 表題作は「青年心理」45号(1984年)に掲載

          中井久夫 『「つながり」の精神病理』 ちくま学芸文庫

          月例落選 短歌編 2023年8月号 とりあえずの最終回

          角川『短歌』の定期購読は既に終了しているため、職場の最寄りの書店で落選を確認する。投函したのは5月12日。題詠は「淡」。これを最後に歌を詠んでいないので、今回がとりあえずの最終回だ。 歌や俳句を記しておこうと思って始めたこのnoteなのだが、俳句について書いた記事60本、短歌の記事が今回を含めて106本、初回2020年11月21日から2年半ほどで小休止なんだか終止符なんだか、ということにした。ま、でも、関口さんがああ言うので、俳句なんだか短歌なんだかは詠む努力を続けてみよう

          月例落選 短歌編 2023年8月号 とりあえずの最終回

          エドワード・キエラ 著 板倉勝正 訳 『粘土に書かれた歴史 メソポタミア文明の話』 岩波新書

          古本で手にしたのだが、ポスト・イットの付箋を貼って、貼り直そうと剥がしたら紙の表面まで一緒に剥がれてしまうことが判明した。古本にポスト・イットを貼ってはいけない。古本といっても、奥付によると「昭和43年12月20日 第14刷発行」とあるので、それほど古本ではないし、そういう値段がついていた。本書の原書はEdward Chiera: They wrote on clay. Edited by G.G. Cameron, 1951 (Sixth Impression)である。

          エドワード・キエラ 著 板倉勝正 訳 『粘土に書かれた歴史 メソポタミア文明の話』 岩波新書

          旧ソ連考 『危機言語 言語の消滅でわれわれは何を失うのか』

          1989年5月の終わりから6月の始めにかけて西ベルリンを訪れた。「ベルリンの壁」が見たかった。東西の通行窓口の一つであるチェックポイント・チャーリーと呼ばれる検問所の近くに「壁の博物館(Mauer Museum)」があった。今もあるらしい。そこには東から西への逃亡の記録が展示されていた。記録というのは、逃亡の方法についての解説、逃亡に用いられた道具類の実物あるいはレプリカ、逃亡に失敗して命を落とした人の名簿、などであった。その名簿の最後に記されていたのは、ハンガリーからオース

          旧ソ連考 『危機言語 言語の消滅でわれわれは何を失うのか』

          150人考 『危機言語 言語の消滅でわれわれは何を失うのか』

          現在、世界で使われている言語は6,000〜8,000と言われている。言語集団は生活様式を共にする人々で、その集団だけで生活が完結するなら他の集団との交渉は必要ない、はずだ。それで生活に不足のない状態が長きに亘り安定的に継続していれば、特に何かに記録を書き記す必要もないので文字は発達しない。そうして文字を持たないままに存続してきた言語がたくさんある。また、生活環境の中に適当な記録媒体を見い出すことができず、文字を発達させる機会に恵まれなかった言語集団も少なくないだろう。しかし、

          150人考 『危機言語 言語の消滅でわれわれは何を失うのか』

          ニコラス・エヴァンズ 著 大西正幸、長田俊樹、森若葉 訳 『危機言語 言語の消滅でわれわれは何を失うのか』 京都大学学術出版会

          以前にも書いたように、毎週木曜日の昼休みの時間に職場で勉強会がある。11時30分から12時までの間に2人、ひとり15分で何事かを語るというものだ。6月29日に私の番が廻ってきた。最初は昨年9月で、2回目は今年3月、今回が3回目だ。本当は昨年12月に2回目が巡って来たのだが、相方が30分使いたいというので譲ったのである。 初回は百人一首にもある崇徳院の を取り上げて日本語について思うところを語った。15分では収拾がつかずだいぶあたふたとしてしまった。それで、2回目は話の的を

          ニコラス・エヴァンズ 著 大西正幸、長田俊樹、森若葉 訳 『危機言語 言語の消滅でわれわれは何を失うのか』 京都大学学術出版会