熊本熊

1962年 埼玉県蕨市生まれ 今思うことのあれこれの備忘録 忘れちゃってもいいんだけど…

熊本熊

1962年 埼玉県蕨市生まれ 今思うことのあれこれの備忘録 忘れちゃってもいいんだけど なんとなく、ね。

マガジン

  • 読んだ・観た・聴いた

    本や雑誌などを読んで思いついたこと。書評とか感想は上手にまとめる人がたくさんいるので、そういうものはそういう人たちにお任せする。本の内容とは全く関係なく見えることも少なくないが、自分の中でつながっていることに間違いはない。たまに観る映画のことも同様に。

  • 2024年4-6月

    2024年4月から6月に投稿した記事

  • 2024年1-3月

    2024年1月から3月に投稿した記事。

  • 帯に短し襷に短歌

    素朴に歌を詠むということへの憧れがある。素朴に詠めるようになりたいと思うのである。とにかく詠んでみないことにははじまらない。「こんなものは短歌とはいいません」なんて言われたっていいじゃないか。

  • 2023年10-12月

    2023年10-12月に投稿した記事

記事一覧

病床にて

5月4日の夜に搬送され、それから数時間置きにCTを撮ったり、血液検査をしたり、管にまかれてエラいことになったなぁ、という感じだった。 5月6日は、病床がガラガラで静か…

熊本熊
12時間前
12

地下鉄のホームで電車を待っていたら、急に目の前が暗くなった。気がついたら、病院のベットに横たわっていた。

熊本熊
1日前
12

大野晋 『日本語練習帳』 岩波新書

母語が思考を規定する。本書でも以前に読んだ田中克彦の著作でも、日本語が所謂「民主主義」にはそぐわない言語であることが述べられている。 上にある「人間の甲乙的体制…

熊本熊
8日前
22

大野晋 『日本語の起源 新版』 岩波新書

言葉のそもそもに興味がある。人類は30万年ほど前にアフリカ大陸で生まれ、6万年ほど前にアフリカ大陸から世界中に拡散を始めた、というのが今のところのざっくりとした見…

熊本熊
2週間前
35

勝俣鎮夫 『一揆』 岩波新書

4月、新学期、新年度。「イッキ、イッキ、イッキ、、、」というのは今はやらないらしい。強要するとハラスメントとかナントカで、マズイことになるというのだ。私は下戸だ…

熊本熊
3週間前
28

池谷和信 『人間にとってスイカとは何か カラハリ狩猟民と考える』 臨川書店

初めて野生のスイカというものを目にしたのは1984年3月、オーストラリアを旅行したときのことだ。アリススプリングスだったか、エアーズロックだったか、内陸の砂漠の道を…

熊本熊
3週間前
27

笠松宏至 『徳政令 中世の法と慣習』 講談社学術文庫

落語に『雁風呂』というのがある。米朝と圓生の動画でしか聴いたことがないのだが、この噺は大いに繁盛した上方の商人である淀屋辰五郎がお上から御取り潰しになったことを…

熊本熊
1か月前
23

古今亭志ん朝 『世の中ついでに生きてたい』 河出文庫

先日、noteでシズさんがビックリハウスのことを書いていたので、懐かしさを覚えてコメントを付けた。 シズさんの返しにある「お母さんに聞いてください」は「ボクのあの本…

熊本熊
1か月前
33

蛇足 『職人歌合』

「職人」というのとは違うのだが、「職人」で思いついたことがある。道楽で陶芸をやっている。2006年10月に陶芸教室に通い始めた。今となっては何故始めたのか記憶が無い。…

熊本熊
1か月前
23

網野善彦 『職人歌合』 平凡社ライブラリー

「職人」という言葉に何を想うだろう。私は堕落した賃労働者なので、自分の腕で暮らしを立てる気概を持つ「職人」には憧憬の念を抱いてしまう。今の時代は「職人」で食って…

熊本熊
1か月前
24

網野善彦『宮本常一『忘れられた日本人』を読む』岩波現代文庫

本書では「東日本と西日本」という章を設けている。宮本の方でも明確に東西を分ける境界のようなものは語っていないが、山とか河川のようなはっきりしたものではなく、集落…

熊本熊
1か月前
29

宮本常一 『忘れられた日本人』 岩波文庫

本書はずいぶん前に読んだのだが、最近になって網野善彦の『『忘れられた日本人』を読む』を読んで、本書を再読する必要を感じて手に取った。また、先日手元に届いた興福寺…

熊本熊
2か月前
30

たまに短歌 カラスが鳴いたA地点

ほうほけきょ白梅香る白日夢 カラスが一羽ニヤリと笑う そのときは梅に夢中でほうほけきょ A地点からカラス飛び立つ 真似ているつもりがあるか太カラス 姿を見せろここで…

熊本熊
2か月前
22

たまに短歌 思い出したこと

とっくりを さんざんならべ ふとおもう ちょうしにのるな でんしゃのじかん 徳利をさんざん並べふと思う 調子に乗るな電車の時間 酒はそれほど飲まないので、この歌の…

熊本熊
2か月前
25

たまに短歌 一年経過

ひととせを むいにすごして はるがくる ふりむくさきを わらいたおして 一年を無為に過ごして春が来る 振り向く先を笑い倒して 雨の降る寒い日だった。昨年の今時分、…

熊本熊
2か月前
27

松岡宏大 『ひとりみんぱく』 国書刊行会

広告に弱い。築60年近い公団住宅に暮らし、テレビを持たず新聞を読まず、自家用車や自転車を持たず、というような無い無い尽くしの生活だ。昨年まではエアコンも無かった。…

熊本熊
2か月前
24
病床にて

病床にて

5月4日の夜に搬送され、それから数時間置きにCTを撮ったり、血液検査をしたり、管にまかれてエラいことになったなぁ、という感じだった。

5月6日は、病床がガラガラで静かな上に検査の回数も少なくなって、いよいよ快適になる。

ところが、今日はその病床が一気に埋まり、いかにも大病院という風情になった。私もチンボコに刺さった管を抜かれて、自分でトイレに行かないといけなくなった。リハビリと称して薬剤のぶら

もっとみる

地下鉄のホームで電車を待っていたら、急に目の前が暗くなった。気がついたら、病院のベットに横たわっていた。

大野晋 『日本語練習帳』 岩波新書

大野晋 『日本語練習帳』 岩波新書

母語が思考を規定する。本書でも以前に読んだ田中克彦の著作でも、日本語が所謂「民主主義」にはそぐわない言語であることが述べられている。

上にある「人間の甲乙的体制」とは契約書上の当事者間の関係を指す。一般に契約書では契約当事者を「甲」「乙」という代名詞で表現し、契約外の関係性と一線を画している。「甲乙的体制」が意味するのは、その「契約」という限定された場における公平性公正性を指している。田中の方は

もっとみる
大野晋 『日本語の起源 新版』 岩波新書

大野晋 『日本語の起源 新版』 岩波新書

言葉のそもそもに興味がある。人類は30万年ほど前にアフリカ大陸で生まれ、6万年ほど前にアフリカ大陸から世界中に拡散を始めた、というのが今のところのざっくりとした見立てらしい。10万年以前の人骨とされるものが中国大陸や欧州で発見されているものの、発見の状況や発見されたものの状態から、それらがアフリカ起源説を覆すほどの物証にはなっていない。いずれにせよ、現在世界中に暮らす80億の人々の元を辿れば一所に

もっとみる
勝俣鎮夫 『一揆』 岩波新書

勝俣鎮夫 『一揆』 岩波新書

4月、新学期、新年度。「イッキ、イッキ、イッキ、、、」というのは今はやらないらしい。強要するとハラスメントとかナントカで、マズイことになるというのだ。私は下戸だが、若い時分には決死の思いでやった。あれをやらずに済むというのはいい時代だと思う。「イッキ」というのは私にとっては物騒なものだった。ところで、一揆も物騒だ。

先日読了した笠松宏至の『徳政令』の関連で本書を手にした。「一揆」というのは反乱行

もっとみる
池谷和信 『人間にとってスイカとは何か カラハリ狩猟民と考える』 臨川書店

池谷和信 『人間にとってスイカとは何か カラハリ狩猟民と考える』 臨川書店

初めて野生のスイカというものを目にしたのは1984年3月、オーストラリアを旅行したときのことだ。アリススプリングスだったか、エアーズロックだったか、内陸の砂漠の道を歩いていて、道端にソフトボール大の縞柄スイカがなっているのを見つけた。けっこうたくさんゴロゴロしていて、ひとつ割ってみたら中は白かった。特に誰かが採取したりするようなものではなく、ただ雑草のように自生しているとどこかで聞いた。

本書で

もっとみる
笠松宏至 『徳政令 中世の法と慣習』 講談社学術文庫

笠松宏至 『徳政令 中世の法と慣習』 講談社学術文庫

落語に『雁風呂』というのがある。米朝と圓生の動画でしか聴いたことがないのだが、この噺は大いに繁盛した上方の商人である淀屋辰五郎がお上から御取り潰しになったことをネタにしている。その御取り潰しは俗に「淀屋辰五郎の闕所」と呼ばれるが、闕所になったのは淀屋五代目の淀屋廣當である。

大阪に淀屋橋という橋がある。淀屋橋のそもそもは、淀屋が米市の人々の往来を便利にしようと私財を投じて建設したものとされている

もっとみる
古今亭志ん朝 『世の中ついでに生きてたい』 河出文庫

古今亭志ん朝 『世の中ついでに生きてたい』 河出文庫

先日、noteでシズさんがビックリハウスのことを書いていたので、懐かしさを覚えてコメントを付けた。

シズさんの返しにある「お母さんに聞いてください」は「ボクのあの本、どうしたでしょうね?」に対応している。これは『人間の証明』という1977年に公開された映画のトレイラーに使われていて、テレビでのCMなどで盛んに流されていた劇中のセリフに由来している。

示し合わせたわけでもないのに「ボクのあの本、

もっとみる
蛇足 『職人歌合』

蛇足 『職人歌合』

「職人」というのとは違うのだが、「職人」で思いついたことがある。道楽で陶芸をやっている。2006年10月に陶芸教室に通い始めた。今となっては何故始めたのか記憶が無い。作業はごく個人的なものなので、他の生徒と特に親しくなるわけでもなく、ただ毎週出かけて何事か作業をして、先生と話をして帰ってくる。始めた頃は上手く作ろうとか、こういうものああいうものを作ろうとか、当然のように欲があった。ある程度技量が上

もっとみる
網野善彦 『職人歌合』 平凡社ライブラリー

網野善彦 『職人歌合』 平凡社ライブラリー

「職人」という言葉に何を想うだろう。私は堕落した賃労働者なので、自分の腕で暮らしを立てる気概を持つ「職人」には憧憬の念を抱いてしまう。今の時代は「職人」で食っていくなど至難のことだろう。

食っていくには世間の経済原理や市場原理に付き合わないといけない。自分が拵えるものや提供する用役の「品質」は何がしかの尺度とデータでデジタル表示が可能なものでなければならず、それに対して別の尺度による「価格」とい

もっとみる
網野善彦『宮本常一『忘れられた日本人』を読む』岩波現代文庫

網野善彦『宮本常一『忘れられた日本人』を読む』岩波現代文庫

本書では「東日本と西日本」という章を設けている。宮本の方でも明確に東西を分ける境界のようなものは語っていないが、山とか河川のようなはっきりしたものではなく、集落の分布の濃淡のような連続的段階的変化を俯瞰しての分類だろう。日本というクニの成り立ちとしては、九州から近畿にかけての地域を中心に展開し、そこから東へと拡大した。西日本においても「神武東征」といった神話が示すように権力の広がりとして西から東へ

もっとみる
宮本常一 『忘れられた日本人』 岩波文庫

宮本常一 『忘れられた日本人』 岩波文庫

本書はずいぶん前に読んだのだが、最近になって網野善彦の『『忘れられた日本人』を読む』を読んで、本書を再読する必要を感じて手に取った。また、先日手元に届いた興福寺の寺誌『興福』203号で佐田尾信作氏が「民俗学者宮本常一と大和路」という連載を開始されていたのも本書を読み返す縁になった。私は素朴に自分というものに興味があり、それに関連して民俗とか民族とか言語とか、さらには人類史とかいうものに漠然と関心を

もっとみる
たまに短歌 カラスが鳴いたA地点

たまに短歌 カラスが鳴いたA地点

ほうほけきょ白梅香る白日夢
カラスが一羽ニヤリと笑う

そのときは梅に夢中でほうほけきょ
A地点からカラス飛び立つ

真似ているつもりがあるか太カラス
姿を見せろここで一節

ひと月ほど前のことである。銚子に出かける前にカメラにあるフィルムを使い切ってしまおうと、陶芸の後に六義園を訪れた。駒込駅からすぐという好立地ということもあり、陽気が良いとかなりの人が集まるのだが、さすがにこの時期は好天でもの

もっとみる
たまに短歌 思い出したこと

たまに短歌 思い出したこと

とっくりを さんざんならべ ふとおもう
ちょうしにのるな でんしゃのじかん

徳利をさんざん並べふと思う
調子に乗るな電車の時間

酒はそれほど飲まないので、この歌のような経験は無い。「とっくり」と「ちょうし」を掛けることで頭がいっぱいになっていて、何か言ってみたいのである。それに、無理に短歌にしなくてもよさそうなものだが、自分でこのnoteの題材を歌、俳句と読書ネタと決めているので、ここに書くか

もっとみる
たまに短歌 一年経過

たまに短歌 一年経過

ひととせを むいにすごして はるがくる
ふりむくさきを わらいたおして

一年を無為に過ごして春が来る
振り向く先を笑い倒して

雨の降る寒い日だった。昨年の今時分、フィルムカメラを買った。電源の必要のない、それでいてしっかりと動く機械を触ってみたかった。今時そんなカメラを新品で手に入れようとするとライカくらいしか思いつかない。仕事帰りに銀座のライカ直営店に立ち寄ろうと思った。かなりの出費になるが

もっとみる
松岡宏大 『ひとりみんぱく』 国書刊行会

松岡宏大 『ひとりみんぱく』 国書刊行会

広告に弱い。築60年近い公団住宅に暮らし、テレビを持たず新聞を読まず、自家用車や自転車を持たず、というような無い無い尽くしの生活だ。昨年まではエアコンも無かった。物を持たない主義、ということでは全くなく、たまたまそうなっているだけで、実は広告やセールスに弱い。広告や売り手の弁舌に感心するといらないものでも買ってしまう。にもかかわらず無いもの尽くしの暮らしであるのは、世間の広告が自分に響かないものば

もっとみる