網野善彦 『職人歌合』 平凡社ライブラリー
「職人」という言葉に何を想うだろう。私は堕落した賃労働者なので、自分の腕で暮らしを立てる気概を持つ「職人」には憧憬の念を抱いてしまう。今の時代は「職人」で食っていくなど至難のことだろう。
食っていくには世間の経済原理や市場原理に付き合わないといけない。自分が拵えるものや提供する用役の「品質」は何がしかの尺度とデータでデジタル表示が可能なものでなければならず、それに対して別の尺度による「価格」というこれまたデジタル表示のものによって「市場」から評価されて、売れたり売れなかった