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一般病床4日目

今いる病室は4人部屋だ。各自のスペースはカーテンで区切られているだけだが、かなり広い。他の患者とのやりとりは皆無。私のベッドは病室入ってすぐ左側。看護師とそれぞれの患者との会話から推察するに、私の隣は二十代前半で、何か外傷のようだ。昨日まで痛みがどうこう言っていたが、今日退院。私の向かいは高校三年生。やはり外傷らしい。手術後の経過が思わしくないようで、医師が比較的頻繁に様子を診にきている。斜め向かいは八十前後。初期の肺癌のようだが、落ち着きがなく、毎日午前3時につまらない用件でナースコールをして大騒ぎをする。病室内では電話禁止だが、こいつは平気で家族や仕事関係と思しき先と大声で話す。老いると聴覚が衰えるので自然に声が大きくなる。こういうのを見ていると、生きることは恥ずかしいことなのだとの思いをあらたにする。

救急搬送以来、CT撮影にはストレッチャーで横になったまま病棟内を移動していたのだが、今日は入院以来初めて徒歩でCT室まで撮影に行った。CT室は病棟の一階にある。この一階の風景にたまげた。天井が高く、窓が大きく、彩光豊かで、カフェまである。いくつも受付カウンターがあるから病院であることがわかるが、ホテルのフロント階のようだ。世間の全ての大病院がこんなふうではないだろうが、それにしてもイマドキの病院というのはタイシタものだと感心した。

CTの順番を待っていたら、自分の前が若く美しい女性だった。尤も、美しいというのはこちらの妄想で、マスクをしていたので本当のところは何とも言えない。しかし、自分の順番を待つ間、妄想ついでに勝手に全身を想像してスキャンさせていだいた。何度となく。

入院以来、平面での寝起きの際に多少浮遊感があるのだが、なぜかこのときはCTの検査台に横になるときも、検査が終わって起き上がるときも、違和感なく身体が動いた。ありがとう。あのひとに。

先ほど、会計担当の人が、今回の費用概算と支払い方法を記した書類を持ってきた。明日は日曜日で事務が無いので、支払いは後日病院の業務時間中に行うらしい。

今しがた、今日のCT画像に基づいて診断結果の説明を受けた。血腫はわずかに残留しているものの、大事に至る可能性は小さいと判断され、明日予定通り退院とのこと。退院後の薬の処方もなし。経過観察として、一か月後に外来受診。多少、浮遊感はあるが明日から日常が戻る。ただ、今回のことで少し考えることもあった。

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