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物語にネオンを灯すレトロチャイナなブックカバーポーチ

谷崎潤一郎たにざきじゅんいちろう中島敦なかじまあつし芥川龍之介あくたがわりゅうのすけ。文豪がつづった中国を舞台にした物語と、ちょっぴりレトロな「ネオンサイン」を組み合わせたポーチを作りました。

みなさま、こんにちは!
歴史と読書が好きなミュージアム部プランナー・ささのはです。

突然の自分語りで恐縮ですが、前述の通り私はいわゆる歴史オタク&何を隠そう「日本近代史」が特に大好きなんです……!
様々な定義があるとは思いますが、私が考える日本近代史の範囲は幕末~第二次世界大戦終結のころまで。1853年のペリー来航を幕末のはじまりと設定すると、100年にも満たない短い期間。
しかしその間に電報が生まれ、電気がともり、電話、ラジオ、テレビが生まれ……。鉄道が走って飛行機が空を飛び、二度と繰り返してはならない戦争があった、近代日本とはまさしく「激動の時代」です。そんな時代を生き抜いた人々の熱量を知るたびに、人間の底力のようなものを感じて、畏怖と畏敬の念が入り混じったなんともたまらない気持ちになるのです。

数十年も経ったあとに外野から見ているだけの私がこんなにドキドキするのですから、その渦中にいた人々の苦悩や葛藤は推して知るべし。
江戸末期の開国以来、それまでの生活様式がひっくり返る「西洋化」が一気に進んだ反動なのか? 日々変化していく生活や文化に抵抗するように古き良き時代を懐かしんだ作家・谷崎潤一郎らを中心に、大正時代の文壇(文学、文筆活動に関する人々の社会的関係)に中国ブームが到来!
以降、中国を舞台にした作品が複数生み出されることになります。
なぜ郷愁きょうしゅうの念にかられた結果中国ブームが??と不思議に思いますよね。一説では当時の日本人にとって、中国は文化的にもっとも影響を与え与えられてきた国であることが重要なポイントとされています。つまり、「日本が失いつつある、かつての姿を重ね見る」相手にぴったりだったようです。

ブームの中心にいた谷崎は実際に、中国を2回訪れています

ある種の「郷愁の念」をもとにはじまった中国ブームと、そこから生まれた名作たち。激動の時代を生きた人々や彼らが創造した作品にもっと親しめるようなものを、私も作ってみたい!
そんな思いをきっかけに、近くて遠い異国を舞台に綴られた大正時代以降の文学作品を、ちょっぴりレトロな雰囲気の「ネオンサイン」風デザインのポーチに仕立てました。

ミュージアム部 中国が舞台の物語を想う
ネオンサイン風ブックカバーポーチの会

月1個 ¥3,400(+10% ¥3,740)
※1個だけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。


〈谷崎潤一郎著『西湖せいこの月』〉

ふと気が付くと、胸の上に載って居る彼女の左の手頸には、今朝も私の眼についたあの小さな金の腕時計が、十時三十一分を示しつゝ未だに生きて時を刻んで居た。そのさゝやかな微かな針のチヨキチヨキと動いて行くのが、水の中にきはやかに見えたくらゐだから、どんなに晴れ渡つた月夜であつたかは読者にも想像が出来るであらう。………

『西湖の月』より
※手頸=てくび
『西湖の月』のあらすじ:特派員として中国を取材旅行中の「私」は杭州こうしゅうへ向かう列車の中で、青磁せいじ色の服を着た美しい女性を見かける。夜、滞在先に落ち着いた「私」は観光のため、海のように広がる西湖を船で遊覧する最中、浅い水の底に何かを見つけて船を寄せたのだが……。

〈谷崎潤一郎著『西湖の月』〉デザインのポーチは、夜の暗い湖を思わせる色合いに。「すがすがしく美しい令嬢」を思わす緋鯉ひごいをメインモチーフにしました。また、彼女のまわりにたゆたう「藻草もぐさ」や、令嬢が身に着けている「小さな金の腕時計」などをあしらっています。
またデザイン内の文字のうち、タイトルにあたる「西湖的月」はネオンサインによく使われる書体“楷体かいたい”風のフォントを、作中に登場する時計が指し示す時刻「十点三十一分」には、作品の舞台と推測される1920年前後に使われた“隸書れいしょ”風のフォントを採用しました。


〈芥川龍之介著『杜子春とししゅん』〉

 それは確に懐しい、母親の声に違ひありません。杜子春は思はず、眼をあきました。さうして馬の一匹が、力なく地上に倒れた儘、悲しさうに彼の顔へ、ぢつと眼をやつてゐるのを見ました。母親はこんな苦しみの中にも、息子の心を思ひやつて、鬼どもの鞭に打たれたことを、怨む気色けしきさへも見せないのです。

『杜子春』より
『杜子春』のあらすじ:金持ちだった親の遺産で遊び暮らし、ついには使い果たしてしまった若者・杜子春。ある春の日の夕暮れ、西門の下で細い月をぼんやり眺める彼に、不思議な風体の老人が声をかける。老人の言うとおりにした杜子春は皇帝にも負けないほどの富を得て、順風満帆の人生が再びはじまると思いきや……。

〈芥川龍之介著『杜子春』〉デザインのポーチは、夕暮れ時の柔らかい空をイメージした色合い。春の夕明かりの中「青竹にまたがり空を飛ぶ仙人と杜子春」をメインモチーフにしました。また、富を得た杜子春の家に咲いていた「牡丹の花」や、峨眉山がびざんの絶壁に生える「曲りくねつた一株の松」、杜子春が仙人修行の折に思わず漏らした「一声」などをあしらっています。
またデザイン内のうち、タイトルにあたる「杜子春」にはネオンサインによく使われる書体“楷体”風のフォントを、作中で杜子春が思わず叫んだ言葉「母上」には作品の舞台である唐王朝の時代にも使われた“隸書”風のフォントを採用しました。
※「母上」表記について:現在、中国語でお母さんというと「媽媽」が一般的に使われていますが、こちらは宋朝そうちょう(960年-1279年)に生まれた表現なのだそう。『杜子春』の舞台は宋以前なので、「媽媽」より古くから使われるという「母上」という表記を採用してみました。


中島なかじまあつし著『李陵りりょう』〉

李陵りりょうの心はさすがに動揺した。ふたたび漢に戻れようと戻れまいと蘇武の偉大さに変わりはなく、したがって陵の心のしもとたるに変わりはないに違いないが、しかし、天はやっぱり見ていたのだという考えが李陵をいたく打った。見ていないようでいて、やっぱり天は見ている。彼は粛然しゅくぜんとしておそれた。

『李陵』より
『李陵』のあらすじ:舞台は前漢時代。祖国のために戦い敵に降伏した武将・李陵の苦悩と、同じく捕虜ほりょとして過ごすも祖国への忠誠を忘れなかった蘇武。そして理不尽な目にあいながらも「史記」を執念で書き上げた司馬遷。異なる三つの運命の行く末はいかに……。

〈中島敦著『李陵』〉デザインのポーチは、登場人物たちの苦悩を感じさせる濃い紫色に。「李陵」を想起させる馬や山々、そして「蘇武そぶ」を想起させる牡羊や湖の水面をメインモチーフにしました。また、司馬遷しばせんがその人生をかけて綴った「史記しき」や、李陵と蘇武に縁深いふたつの国名などをあしらっています。
またデザイン内の文字のうち、タイトルにあたる「李陵」はネオンサインによく使われる書体“楷体”風のフォントを、作中に登場する国「漢」「」には作品の舞台と推測される前漢でも使われた彫刻書体“小篆しょうてん”風のフォントを採用しました。


全体が大きく開くので、中に入れたものをらくらく取り出せます♪

文庫本をセットすればブックカバーとして大活躍!  読書の間、内ポケットをしおり入れにするのがオススメの使い方です。

本棚にそのまま立てて置いても、趣のある光景に。

お出かけに読書に、ノスタルジックに浸れるポーチがおともします。

ミュージアム部 中国が舞台の物語を想う
ネオンサイン風ブックカバーポーチの会

月1個 ¥3,400(+10% ¥3,740)
※1個だけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。


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①谷崎潤一郎(1919)『西湖の月』 
千葉俊二編.谷崎潤一郎 上海交遊記.みすず書房,2004,p.98-99. より
②芥川龍之介(1920)『杜子春』 青空文庫より
③中島敦(1943)『李陵』 青空文庫より


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