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僕の写真を使ってくれたnoteたち

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みんなのフォトギャラリーで僕の写真を使ってくれたnoteのうち、とくにみなさんに紹介したいnoteを集めました。
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#小説

【小説】バージンロード vol.15「スナックの女」

【小説】バージンロード vol.15「スナックの女」

楠くんの一件があった後、お店が潰れることになり、みんなバラバラになった。

私は何かいいバイトがないか探していて、近所のスナックに勤めることになった。

スナックの仕事は意外と楽しく、先輩たちもまあまあ親切だった。

意外と水に合う仕事で楽しんで行っていたけれど、二つ問題点があった。

一つはお酒に弱い私は帰ってからが酔いがまわってなにもできず、吐いてしまったり、風呂は起きてから入り、食事の支度も

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【小説】 組員、全員老人 【ショートショート】

【小説】 組員、全員老人 【ショートショート】

 かつて三百人を誇る組員を有しており、その街を仕切っていた「大隈組」は暴対法の時代と共に規模を縮小して行き、今やかつての勢いは見る影もなく、衰退と共に組は年寄所帯へと成り下がってしまった。 

 会長は今年九十歳になる大隈源次郎。胃ろうの身体をベッドに横たえてはいるが、いつかやって来るその日を待つ眼差しには光の鋭さがわずかに残る。 

 組長山岡は今年八十三歳になるが、身体は草臥れていてもハキハキ

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【短編】視野の広さは大切

【短編】視野の広さは大切

MFがするべき訓練は、技術よりも、視野を広げることなのではないか。
それはサッカーをやったことがない私でも、この数週間で気付いた。

サッカーは本当によくできている。
攻めるか、守るかの二極化が激しすぎず、互いが適度に鬩ぎ合いつつ、選択肢を模索する余白が瞬間瞬間に存在する。この余白に、次の進撃への足掛かりを描く役割こそ、MFであるのだろう。
彼らは視野を広げ、様々な選択肢を頭の中に思い描き、最適な

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第47話「世の中はコインが決めている」

第47話「世の中はコインが決めている」

 こんがりと焼けたトーストを齧る。マーガリンじゃなくて、バターが塗られていたので旨さは抜群だった。

 塩加減が絶妙な目玉焼き。初めて部屋に入って、いきなり朝食を一緒に食べるなんて驚きの光景である。何か会話をしなきゃと思ったが、狛さんは気にすることなく食べていた。

 上品な食べ方をする人だと思った。小さな口で咀嚼する音さえ聞こえない。彼女は専業主婦なんだろうか。他人のことだけど、聞いてみても良い

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【ショートショート】散歩日和

【ショートショート】散歩日和

 今日は天気がよい。
 私はカーディガンを羽織って、散歩に出た。
 目の前には背中を丸め、ヨチヨチと歩くロボットがいる。
 あぶなっかしい。
 おまえは家で留守番をしておれと言いたいが、恥ずかしながら、私自身も似たようなものだ。ロボットには私の骨年齢を入力してある。
 金木犀の薫るなか、ロボットは住宅地の路地をとぼとぼと歩いて行く。このあたりはでこぼこが少なく、飛び出してくる車にさえ気をつけていれ

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【創作小説】Norway rat 第1回 記憶喪失の男

【創作小説】Norway rat 第1回 記憶喪失の男

架空の街、イーストタウン。

女はゴミ捨てにとやって来た路地裏で、泥とゴミに塗れて爆睡している1人の男を見つけた。

「おーい、そこの人、大丈夫?」

声を掛けても反応はない。

細身で長身の男。整った顔立ちをしている。20代後半くらいだろうか。着衣は乱れ、酒に酔って顔が赤くなっているが、それ以上に左頬がパンパンに腫れている。
雨が降り続いているせいで全身びしょ濡れだ。

「これじゃあ風邪引いちま

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シロクマ文芸部 | 物書きジム

シロクマ文芸部 | 物書きジム

本を書く人々の間で人気のトレーニングジムがあった。それは神保町よりは九段下寄りの、寂しげな住宅街の中にある。
いかにも物書き風情が好みそうな、ボロアパートの一室を改造して作られたジムには、数人の男たちが出入りする様子が見られた。
「ああ、どうも」
「ああ……」
いかにも人付き合いが苦手そうな男二人が、ほとんど同時に入口のドアをくぐる。

「おたくは、えっと……」
「毒婦。、アンダーグラウンド、殺人

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『欲の涙』12

『欲の涙』12

 さて、と。

 「今から言うことをしっかり聞けよ、坂本に右翼の兄ちゃんたち」と、右翼A・B・Cをけん制するようにも、強気に話を切り出した。右翼トリオはどこか、困惑している様子。目が泳いでいる。

 それもそうかもしれない。

 坂本っていう力と優位な権力のあるヤツに対して、畳み掛けるこの人は「何モン?」と抱えている疑問。それを顔に出しているように映る。

 クエスチョンマークみたく、曲がっている

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【小説】SNSの悪夢

【小説】SNSの悪夢

彼女からの連絡は直ぐに来た、自分の連絡を持っていたのだろう。

『解りました、駅の方に向かいます、駅前にいらっしゃいますか?カフェに居るのであれば、そこに行きますが。』

今は外をぶらついている状態だ、わざわざカフェに入ったりはしない、駅近くに居ると言って連絡をしよう。

『今は駅の近くをぶらついて居ます、近くに来たらまた連絡を下さい、その時に待ち合わせ場所を決めましょう。』

彼女もすぐには来な

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座り込んでいる女・第三幕

座り込んでいる女・第三幕

座り込んでいる女を見ても、声を掛けてはいけない。

奴らは苦しんでいるフリをして、獲物が掛かるのを待っている。自分が襲える獲物が掛かるのを……。

私が高一の時、同じクラスになったあの子。あの子は、ちょっとでも嫌なことがあったらすぐに「イジめられた」とか騒いでいた。

他人の言うことに耳を貸さず、自分の殻に閉じ籠って……。

そのうち授業をサボって、廊下やトイレに座り込むようになった。

そんなあ

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千字戦(2回戦) お題「開いている」

千字戦(2回戦) お題「開いている」

「検討委員会」(874字/20分)

「それでは、戦略的な資産マネジメントの観点からよろしくお願いします」
と安田が言った。
ほがらかであった。

資産はわかる。
マネジメントもわかる。
資産マネジメントもわかる一応。
しかし、戦略的であることがなんかもうずっといまいちわからない。
だいたい何と戦わねばならんのかおれは、とにがにがしくおもいながらネクタイを直す。資産としての保全、運用についての私見

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『緋の城』 木崎さと子

『緋の城』 木崎さと子

とても怖い、そして言いようもなくセクシーな小説だ。
この物語には「女性」というものが万華鏡のように映し出されている。
母性と少女性。現実をさばくたくましさと妄想に浸る危うさ。頑なに理性的かと思えば本能的な心のブレにはしなやかに従う。
「わたし」は、そんな女性という性が持つ特質を体現しているかのようなヒロインだ。
そのさらけ出された女性性の暗い部分が怖く、そしてさらけ出されているというそのことに官能

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砂の上のピエロ。

砂の上のピエロ。

いわゆる「雰囲気イケメン」が好きだ。

自分の魅せ方を知ってて賢く、女の子の扱いも上手い。好きになったら死ぬけどセフレにするにはもってこいな人種、だから好き。そしていつしか人を好きになる感覚を忘れてしまった私は割り切った関係が得意。

つい最近知り合った人がまさにそんな感じだった。
綺麗な顔をしていて、服もおしゃれでかっこいい。独特のイントネーションで話すことを除けば理想の人。クールな印象で最初は

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“誰かの心を揺さぶる小説が書けたら・・・”鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』を語る。

“誰かの心を揺さぶる小説が書けたら・・・”鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』を語る。



現在大学在学中。でもキャリアはなかり長い。

第14回小説現代長編新人賞受賞作を引っ提げ鮮烈なデビュー。

鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』。

高校の放課後。

ある日、僕は屋上で“くらげ乞い”をするちょっと不思議な少女と出会った。

くらげはどうしたら降るのか・・・

なぜ、彼女はくらげを呼ぼうとしているのか・・・

既に長く小説を書いてきた鯨井あめが

満を持して世に送り出したこの物語

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