KEY ACTION IMMORALITY

食券買い忘れて堂々と席に座り、死にたくなる。めざましテレビを見つめる母さんの後ろ姿にや…

KEY ACTION IMMORALITY

食券買い忘れて堂々と席に座り、死にたくなる。めざましテレビを見つめる母さんの後ろ姿にやるせなさを感じる。鈍く走る西武新宿線。TEENAGE VIBESそろそろ失くなる。だから死ぬまで大きな声で歌う。じゃなきゃ恥ずい。

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ハッピー・パッシング・インディペンデンス【短編】

誕生日から2日後。 ひとしきり、終えた。この部屋を中心に動いていた自分は、今日でいなくなる。わたしの空間であると頑張って主張するため、壁や窓、ドアにまで貼り付けていた散文やポスター、カレンダー。積読本もすっかり消え去り、案外小さな段ボールにおさまっている。紙の本だから引っ越し業者に持ち出される衝撃で、折れるかもしれない。折れていい。折れたら折れたで、わたしの人生の中にある本だって自慢できるようになるから。 「しず、もう準備できたの?業者さん、来ちゃうわよ」 私が1度だっ

    • 【短編】ガガンボ・ナイトクラブ

      病室で愛する親友が死んだ経験なんてない。だからそれを経験したアーティストのような価値や強さが私にはない。隣で退屈そうにスマートフォンをいじる依子が死ぬ妄想をした。そうなったらいいとかは思わない。だけどそうならないことが、私が今の私にしかなれない要因ではないかとも思うのだ。 依子はよく分からない子だ。酒を飲むけど騒ぎはせず、オタクではないけどアニメに詳しくて、煙草をバカみたいに吸うくせにランニングが習慣化しているベジタリアンだったりする。セフレも多いが、彼らと博物館や植物公園

      • 【短編】月曜日は私の両手に

        月曜日を私の胸の中に入れて暖めたい。 私が月曜日を愛する理由を説明しなければならない。そう思って語り始めたら脳の中を重いずっしりしたものが歩き回って邪魔して、結論、私は月曜日が大好きなのだと説明したら隣の白髪のおっちゃんは歯抜けの口を見せて、「なんだそれ」と言った。 月曜日は私にとって全てが始まり、金曜日の19時以降は私にとって全てが終わる時間なのだ。ずっしりとした体に、つんつんした髪の毛を備えた男性が私にのしかかってきて、ひととおり億劫そうな作業を続けた後に、自慢げな顔

        • 2024.06.18

          私がミッドナイトガールだと知っているあの男はサンドイッチになって死んだ。 サンドイッチというのは物理的な意味ではなくて、彼女と浮気相手の間に挟まって、浮気相手に刺されて死んだという話なのだ。 彼は私に対して、浮気相手はロングヘアーでめっちゃエロくて自分と会う時ちょいエロの下着を決まって身につけてきてくれてワイン好きなのだと話した。 彼女についての話は一切しなかった。 彼は私に対して、ハイボールを飲める女と飲みたいとずっと言っていた。私は狙ったわけではないけれど、ずぅっとハイボ

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        ハッピー・パッシング・インディペンデンス【短編】

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        • ナナフシ・ナイトクラブ【短編集4】
          7本
        • 子宮外生命【短編集1】
          8本
        • ベッドタウン・グリズリー【短編集2】
          6本
        • アオバト繁華街【短編集3】
          8本

        記事

          【短編】停滞した週末

          超くだらない話をして、私の明日は超くだらないと確信した。道すがら、転がっているペットボトルには汚れが目立ついろはすのラベルが絡みつき、少々視線をあげれば、おそらくセブンイレブンから出てきた男の生脚が見えた。すね毛がぼーぼーだった。見たこともないのに、どこにでもあるような視界で、私は私で明日もくだらないのだなと思った。 帰ってみたら部屋は意外に整っていた。そうだ、私は今日1日を素敵な特別な日にしようと思って、若草色のワンピースを着て図書館に行き、哲学的、形而上学的課題に頭を悩

          【短編】停滞した週末

          【短編】ロンリネス・ケバブ

          ビルの入り口にはケバブ屋のキッチンカーがあった。 そこには既に数人が並んでいて、僕と先輩は辟易した顔でその列に加わる。 先輩は腕時計を見ながら、次のミーティング開始時間を気にしているようだ。 僕は彼女を見ながら人差し指の先っちょをさすっていた。今朝から妙に痛む。 ケバブ屋のラインナップには普通のケバブ以外に、ケバブ丼とケバブ弁当があり、ソースを選ぶことができた。 先輩は甘口のソースにして、僕はそれを見て辛口にした。互いにケバブ丼だ。 ビルに戻ろうとする僕を呼び止め、ここで食べ

          【短編】ロンリネス・ケバブ

          【短編】バーボンはもう甘い

          おじさんしか生息していないのではないかという中野区の飲み屋街を歩いて、結局チェーンの寿司屋に入って、私は4杯、彼は6杯の酒を飲んだ。 信じている人生の形がもっと美しいものだったら、と思ったのは彼と出会う数年前のことで、彼に出会ってからは人生の全てをこの人にささげてもいいとすら思った。 私たちの横を車が何台も通り過ぎ、私たちが立ち止まった踏切の前で2回電車が轟音を響かせた。私は視界を遮ってくれる電車の存在を愛おしく思い、一生彼と手をつないだままで、電車がごうごういって通って

          【短編】バーボンはもう甘い

          おすすめのセルフケア「小説執筆」

          Y公民館の17時、僕が図書館から出ると椅子と机の並ぶフリースペースが広がり、そこにはテキストを広げて勉強に勤しむ少年たちの姿が見られる。 同じくらいの人数で、新聞を広げて老眼鏡を片手で調整しながら、記事を読んでいるシニアの人々もいる。 僕は勝手に彼らの境遇を想像し、僕は彼らにとってどう見えているのかも考えた。だが後者を考え始めた時、彼らが僕のことを全く見ようともせず、目の前の「現実」に集中している事に気付いた。 社会人になって数年が経つ。仕事をする日々自体を快楽と捉える

          おすすめのセルフケア「小説執筆」

          【短編】倒れそうな私をPOPにしてよ

          油断したら飛び跳ねるのをやめてしまいそうだった。だけど周りは腕をあげ、体を揺らし、頭を振っているから、私はしっかりバカなまま2ブロック目のセットリスト終了まで楽しみ続けることができた。 技巧派なフロウと独特な言葉選びが特徴的な、白髪の男性ラッパーは深くお辞儀をした後に、「まだまだ楽しんでいけ」という旨のメッセージを残して、ペットボトル片手に中央のステージから去っていく。 それを見届ける私は茫然としつつ体を火照らせていた。肩に手を置かれ、ミキだ、と思い横を向けば当たり前だけ

          【短編】倒れそうな私をPOPにしてよ

          【短編】カラカラ乾き、しっとり濡らす夜中の3時

          新人類が天上から下りてくる妄想をしながら、私が歩いているアスファルトの道路がひたすら続いていくことに諦念が湧く。世の中をいい方向に変えてくれるものはいつも上から降ってきて、私を蔑み嘲笑い壊すものは、大抵下からやってくる。 今日だって私がエレベーターで下に降りようとして、乗り込むタイミングで下から上がってきた他者の社員と正面衝突しそうになり、舌打ちをされた。私を不幸にするものは大抵下からくるのだ。 私はミネラルウォーターを買いに1階まで降りなければならなかったのだ。 謙介が覆

          【短編】カラカラ乾き、しっとり濡らす夜中の3時

          創作日記1(2はない)

          創作が最近できていません。 正直言うと、やる気が出ません。 小説家になりたいという気持ちだけは小学2年生の頃からありましたが、最近は結構しんどいです。気持ちだけ継続していて、指が動かないのがきついです。 書かないと何も始まらないのですが、勢いで書き始めて、書けなくなった瞬間の絶望が「マキマさんが見ていたのは俺じゃなくチェーンソーマンなんだ」と気づいた時のデンジくらい深いので、すぐすぐ作品の執筆に移ることは無理そうです。 とりあえずアイデアだけ列挙して、書けるかどうかは明

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          2024.05.11_物語を始めようとしたやつ

           ネットカフェに行こうと思った。呪術の続きを読みたいと思ったから。脳みそを呪術師にするよういじられたみたいな感覚だ。目覚めた俺はネットカフェに行くことのみを目的とした生物に改造されていた。無為転変だ。  すでに土曜日の13時だった。昼間から「ネットカフェに行こう」と思って計画立てて行動する人間ってどれだけいるのだろうか。酔った後に終電逃して、ナイトパックで利用するくらいしか経験がないから、よくわからなかった。  シャワーを浴びながら、死滅回遊ってどういうルールだったっけと

          2024.05.11_物語を始めようとしたやつ

          私は私が私を思うより

          私が考えるより、私はずっと醜い。私が信じるものよりも、私が疑うものの方がずっと正しい。この2つの文章を並列にすることはおかしいけど、突然、新宿御苑前の十字路で座り込んで出てきた言葉だった。 先ほど、数分前だろうか、私は人生をつまらなく完結させるであろう、ひとつの将来像と決別した。大層に言っているが、女友達と喧嘩したのだ。彼女と、この世界を笑い、嘲って死んでいくつもりだった。それがいつの間にか、「やっぱり幸せが欲しい」などと向こうが言い出して、いつの間にか、いつの間にか、私は

          私は私が私を思うより

          俺たち4人で「家族」をやってみている。

          サイゼリヤからの帰り道、ひと駅先あたりにあるので、15分ほど歩く帰り道だ。4人の男女が静かに歩いていた。 夏の暑い夜だった。 麦わら帽子をかぶり、細くスラッとしていて、黒いワンピースを身に纏い、グッチのハンドバックを片手に歩く母親。 彼女の1m後ろ、スマートフォンを耳にあて、友人と爆笑しながら会話する弟がいる。長い髪がぬるい風に揺られ、ぶっといピアスが見え隠れする。 割腹がよく色黒な父は、何も言わずどこかへ消えてしまった。西武ライオンズの会員限定キャップを被ったり脱い

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          【掌編】ペンギン殺し

          ペンギンを手に取って、その場で引き摺りまわしてみた。ペンギンが愛らしい生き物だからか、彼らが地面にこすりつけられ、鮮血を散らす様を誰も想像したことがない。 私はこうやってペンギンをひきずり回す自分の神経と腕を尊敬している。ペンギンを動物園で見て、可愛いと手放しに喜んでいられるなら、まだ社会的に存在価値があっただろうし、私はつまらなくも細やかな幸せを手にしていただろう。 だけど、私は私の腕を信用している。ペンギンを無残にも殺して見ることができるのだ。まだ死んでいなかった。ぎ

          【掌編】ペンギン殺し

          「自己紹介します」

          在来線に乗って小倉で降り、そこから新幹線で一気に東京まで向かった。東京駅からJRや地下鉄に乗って帰る道は、今になっても覚えられずにいる。九州から東京へ帰るのは、既に5回目だった。 都内の実家で、3階に上がる。小学生の時に買ってもらった青い机は、濁り、汚れつつもずっしりと部屋の隅に設置されている。その上には九州まで持っていくのが面倒だった本が数冊乗っていた。 俺は木の椅子に座り、少しだけ表面をなでる。懐かしむような動作を、ひとりわざとらしくやったら、削れた部分が指にひっかか

          「自己紹介します」