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『欲の涙』12

「女ってもんは、いっしょに寝たことのある男は怖がらない」

『逆回りの時計』フィリップ・K・ディック 著)


 さて、と。

 「今から言うことをしっかり聞けよ、坂本に右翼の兄ちゃんたち」と、右翼A・B・Cをけん制するようにも、強気に話を切り出した。右翼トリオはどこか、困惑している様子。目が泳いでいる。

 それもそうかもしれない。

 坂本っていう力と優位な権力のあるヤツに対して、畳み掛けるこの人は「何モン?」と抱えている疑問。それを顔に出しているように映る。

 クエスチョンマークみたく、曲がっている表情だ。

 「右翼の兄ちゃんたち。言い方は悪いけれど、オタクらがしっかり動いてくんねえと、作戦は失敗しちまうからな。重いぜ、責任は」

 右翼Aが唾を飲んで、緊張しながら耳を傾けようと構えている。

 「はい!坂本さんがご紹介なさった方の言うことに寸分の狂いはないハズです!」

 「違えって。狂う確率もあるから忠実に動いてほしいだけ」と返すと、CがAを小突いた。Aの耳元に小声で囁いている。何を話しているんだろうか。

 続けて「明日はな、街宣車で長野が身の危険を感じるよう動いてもらえるかな?威圧だよ。長野の話は聞いてんか?」と訊くと、
「オイ、中山よう。そこまで話せって俺に言ってないだろう?ここでお前が説明すんのがスジじゃねえか?」と、坂本。

違う。

 坂本はやはり抜けている。一刻をも争う話なのに、先読みできない。期待はしていないから「相変わらずだな」ってところ。が、坂本に「先読みしとけ」と言うタイミングじゃない。――ここで言い争うような、展開は寒すぎる。

 今日含め2日間のガマンだ。イラ立ちと諦めの混じったため息を吐いた。 

 「長野。ナニモンかって?政治家。野党の有名議員だよ。依頼があったんだよ。失踪した娘を捜してくれってな。んで、こっからがちょっとややこしいんだ。深くは知らなくていい」と、説明するとBがメモを取り始めた。

 「捨てろ、記録に残すな」と突き放すように言った。

 坂本をはじめ、右翼トリオは、吸収できているようにも、できていないようにみえた。

 <坂本。ある程度、先手打って話しておけよ>

 そう噛みつきたくなる感情を押し殺した。三上から長野を明日には事務所に連れてこいと命令されたこと、すでにカオリさん=ひめのが殺されたこと。この肝要な点を、猿でものみこめるように話した。ただ、殺害に三上が噛んでいることだけは、坂本の体裁に配慮して、伏せてやった。

 坂本はアホだ。トリオも同じか、それ以下にみえる。低い理解力で必死に聞き入っているもよう。追いついてないんだろうけれどな。

 「娘さんはどこに!」とトリオのC。

 さっき殺されたって言ったばかりなのに。殺したのは憎堂一家の組員か組員の言いなりのパシリ。それくらいは坂本も知っているハズ。決まりが悪そうな、穴があったら入りたがりそうな表情を浮かべていたのは、坂本。

 今はそのことを追及するつもりはない。坂本は知ってはいるけれど直接の関与はしていない。そんな間抜けなヤツにハナから情報を聞き出せるなんて期待しちゃいない。

 「とにかく動いてくんねえか?時間の問題なんだよ。早く正確にな。明日は頼むぞ」と言うやいなや、右翼トリオは席を立って、お辞儀をしはじめた。やらかそうモンなら一巻の終わり。が、それを言ったら余計混乱すんだろうな、右翼トリオは。

 ――ポーズは要らねえ。その代わり明日、忠実に動いてくんねえか?と、本音が喉から出そうになったが、ここは抑えた。

 「何時にどこってのは、今日の夜中くらいに判るかもしんねえ。待っててくれるか?」と投げかけると、トリオが同じタイミングで、同じ声量で「押忍!

 「力みすぎ。実行時に勢いよく頼むな。坂本さん、右翼くんにはもう帰ってもらっていいや。その代わりオレの言うことをこなすようちゃんと『指導』を頼むな」と言った矢先に、オレの目線は坂本に向けられた。

 「オイ!A・B・C!必ず『俺』の指示に従えよ。もう帰れ」と、偉そうに、角刈りトリオに坂本は言い放った。

 店内は深夜の緊張した盛り上がりとは違う、「緩い」繁盛ぶりだ。

 この街の裏を知っている人たちが、緊張感から解放されて安心している様子。夜から明け方にかけて漂う、街のピリついた雰囲気。その中間で休めているような空気感。

ここには街特有の空気が、そのまま流れ込む。街と同化した喫茶店なんだ。

 落ち着きと笑い声が店内に響く。こちらは緊迫した糸の上で話しているんだけど。温度差を感じるよ。

 「中山ぁ。お前はウチの舎弟に偉そうなツラして何してくれるんだよ」

堪忍袋が切れた。

 「なあ、そもそもだぞ。オタクん組が長野の娘を殺す依頼を引き受けてたんだろ?シラ切り通すなよ。そこにフタしてやった。アンタのメンツを守ってやったんだ。感謝じゃねえのか?ここは」。さきの心構えはどこへ。怒りに近い感情を抑え切るのが難しかった。

 「ん、まあその件は・・・」
 「詰める気なんかねぇよ。それより早く長野をさらうぞ」

 坂本はコーヒーを飲み干していた。

 疲労感が表にでている。コイツはコイツなりに必死なんだろうな。メンツ。体裁。啖呵。バカはバカなりにどう動くか、足りない頭で考えてんのかもしれねえな。

 「いいか、よく聞け。しっかり押さえとけよ」と、ここでもオレは強気に出た。「次は的外れなこと言うなよ」と、圧力をかけた。

 まず三上の依頼が坂本にはこなかった――つまるところ見切りをつけられてんだ。役に立たないってコト。ドジったらオレに責任が転嫁されかねない。

オレからすりゃ、三上の依頼なんて流れ弾みたいなもんなのによ。

 「まずオタクは売春宿を回してんだろう?そん中の女に長野の秘書に電話させろ。言っちゃえばお色気作戦だ。で、居場所を突き止める。その後、だ。秘書を車に詰め込んで長野の居場所を吐かせる。ここまで付いてきてっか?」

 渋そうな面持ちでうなずいていた。

 多分あまり理解出来ていない。

 今日のうちに長野の秘書がどこにいるか掴む。次に秘書から長野の居場所を吐かせる。強引だ。何せ日数が足らない。ソッコーで動くしかない。手段を選ばずに、早く長野を三上んとこに連れてかなきゃいけない状況にあるってこと。

 その切迫感が坂本には伝わっていない。鈍いんだ。

 だからこそ今、豪速球のように、思い切りのいい勢いで、なおかつ、ずっしりとした球を投げて、しっかりと伝えないとダメなんだ。重いストレートの球だ、坂本に必要なのは。

 今、糸は切れかかっている。重圧が糸を弱くしている状態にある。切れたら、すべてが終わりになる。文字通り、オレをはじめ、坂本の人生もが終わるんだ。まあ坂本はどうでもいい気がしてきたけれど。

 「坂本さんよ、今日・明日はぶっ通しだからな。とにかく秘書を拉致るしかねえ。早く売春のハコの女を呼び出せ。20代くらいのヤツを3、5人」
 「呼んでどうす…」と言いかけた途端に、これ以上話してもムダと悟った。「いいから。急げ」

 坂本は舌打ちをした。訝しげな表情でハコの管理人に連絡した。「え?今休憩中?」--オレが5万円見せた。「とにかく来た娘には1万払うから」と、珍しく機敏に対応。

 「おう」とうなずき「大の至急なんだよな。え?難しい?」と困惑しながら言った矢先に、オレは携帯を奪った。

 「とにかく急ぎの話。坂本さんはちょっと抜けてっから。オレが坂本さんと同席している時点でわかんだろう?一緒に動かなきゃいけないってことくらいはよ。で、一人あたり1万はくれてやる。ウリで今、相手している女がいれば、すぐに切り上げるよう言え。よこしてほしいのは、20代の落ち着いていそうな娘。待てるのは1時間。以上、よろしく」と言い、相手が反応する余裕を与えず、即電話を切った。

 女がくるまでの1時間を坂本とどう埋めるか――。ここでエネルギーをすり減らすんなら、黙っているほうがマシだ。タバコに火をつけた。とにかくオレからは何もきりださないことにした。完全な沈黙。続け、と願っていた。

ところが、だ。

 目からウロコ――坂本の目が涙ぐんでいる。どうした?コイツは。「なあ、中山。聞いてくれないか?面倒は起こさない。お願いします!」と、頭まで下げた。

 新手のクスリでぶっ壊れたか?と最初は疑った。が、その予想はすぐに覆った。続けて言う。「実はな、俺には17歳の娘がいんだよ。ハコの女が足りなきゃ、娘を売りに出せって組長は言うんでさ。恩義がある以上裏切れねえ。でも、娘は守りてえ。この思い、えっと…」

 「葛藤な」
 「そうそう、葛藤。それを抱えたままなんだ。中山にさっきはキレかかった、正直。『俺の娘と同世代の女を利用すんじゃねえ』ってな」

 返す言葉がない。1時間、コイツの話を聞いてやってもいい。そう気持ちが切り替わった。言っちゃえば、コイツも末端の駒の一人に過ぎない。理不尽とのせめぎ合いが渦を巻き、病むことがあっても不思議じゃない。

 泣きながら「この商売から足を洗うにゃ…」 
 「酷だけど無理。抜けるなら日本のド田舎に隠れながら暮らすしかねえ。か、海外」
 「…」

 と、冷たくあしらったものの、長野を三上んとこに連れて行ったら、坂本が、どう安全に逃げられるか、考えてもいいんじゃないか。確かにトロい。それでも不器用ながらも、どうにかシノギの世界にいるんだ。

 店内--この雰囲気のままであってほしい。ここ数日はピリピリした、張り裂ける一歩手前の緊張感に、心も体も蝕まれていた。

 そして、今日・明日は、その緊張感が鋭利なナイフのように、容赦なく精神を斬りつけるとも覚悟しなきゃいけない――せめて今だけは、坂本の感傷に付き合っていいいかもしれない。

 どこか自分の中に人間味が戻ってきているのかもしれない、と安心すらした。

 コイツの苦悩を知っているヤツらはこの店内でオレ以外にいるのだろうか?いないに決まっている。いたとしても知らないフリを決め込むだけ。

 歌舞伎町って街にいる、ヤクザモンの一人に過ぎない。そんなヤツの心境は、看板みたく、表で目立たない。坂本自身も隠すのに必死なんだろうし。

 饒舌が始まると踏んでいたタイミングで、女が七人やってきた。管理人は気を利かせた。「5人揃えろ」=「それ以上用意してこい」って命令されたのだと理解している。実践じゃあ、坂本よりアテになる。

 「おい、坂本さんよ来たぜ」
 「よし、お前ら!今から重大な仕事をしてもらうから、しっかり中山『さん』の話を聞けよ!」。
 さきの涙ぐんだ姿はすっかり消え、益荒男な「坂本」を演じていた。調子が狂うんだよな。悪いヤツじゃないのは分かるんだけどさ。

 まずは一人選ぶ。ここが始発。一番清楚そうで、丁寧語も使えそうなのがいい。7人とも似たり寄ったりだが、1人だけ浮いた雰囲気の娘がいた。残り6人には「来て早々すまない、適役じゃなさそうだから…そこの娘以外、元んトコに戻ってくんねえか?」と言い、6万円を渡した。管理人も足元見てやがんな。

 その娘に伝えた内容――坂本の秘書にカオリさん=ひめのと仲が良かった、突然消えたから今どこにいるのか知りたい、カオリさん=ひめのから長野が議員で「秘書はイケメンでいい人」と聞いていた、可能なら会いたい、今夜が都合がいい。

 この五つを話すように指示。で、話に重みを持たせるために、カオリさん=ひめのに「害」が及ばないよう、守ってきたと、さりげなく補足するように指示。

 上手くいく確率が100パーとは言えない。この娘がどう振る舞うかで、50パーが75パーに化けるかもしれないだけ。――淡々と、清楚ちゃんは答えた。「分かりました。番号は?」

 秘書の番号を伝え今すぐかけるようにやや命令に近い口調で言った。それでも怖気づくことなく「はい」とだけ。

 期待できそう。いい予感が当たりそうで、気持ちが少し、5ミリていど浮遊した。

 静かな外で話すほうがいいとも思えるが「うるさい」環境にカオリさん=ひめのは身を置いていた。ここで電話させるか。

 「スピーカーにしてもらえるかな?もちろんだけど、カオリさん=ひめのから電話番号は聞いているって設定ね」とオレが言うと、もうすでに切り替えていた。

 飲み込みが早い。

 この娘を相棒にしたいくらい。今、午後6時半。秘書は家族団らんの時間を過ごしているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。「とにかく出ろ」。それだけ念じていた。

 1回目の電話には応じなかった。もう一回と目線で伝えた。相手は軽くうなずくだけ。

 秘書が電話に出た。

 まんまとエサに食いついたんだ、この魚は。「あのう…」と言ってからオレの期待を上回る、相手の情を揺さぶるような、話しぶりで距離を縮めていった。この娘は敏腕だ。こんな仕事は早く辞めたほうがいい。

 結果。今夜11時に秘書の指定した場所で落ち合うことになった。赤坂見附の駅から少し離れた、客があまりこないバー。

 娘は電車で、目的地まで。オレたちは車で秘書を車ん中に詰め込む算段だ。

 「長引くかもしんない。それでもいいかな?」と訊くと、「はい」とドライに応えた。坂本は取り残されているように映った。早く動かないことには意味がない。

 清楚ちゃんは「客がいるんで」と、サラッと言い、ハコに戻った。恐らく海外のほうが、ウケはいいだろう――アジアンビューティと言ったらいいのか、他の娘とは異なる雰囲気を醸し出している。

「坂本さん、頼むよ。先回りしておこう、油断禁物」

 引き締まった表情の坂本。いい感じ。その冷静さと勢いの間で、早く正確に進めんぞ、と心の中で、坂本を励ました。一刻も早く。この娘が自分の娘と、投影してもいい気にならないだろう?チャチャっと終わらせようぜ、坂本。と心の中でつぶやいた後、

「車、持ってきてくれないか?」と声をかけた。

 燃えるような眼ざしをこちらに向け、声を出さずに首を縦に振った。

 正念場の幕開けだ。

 役者は揃っている。

 坂本は「失敗したら後がない」と、焦燥感を滲ませている。同時にこれまでの強張った表情から、緩いそれを浮かべていた。

 車を喫茶店前に停めるまでの間、オレは一人店外で待っていた。何をしているのかわからないが、思いのほか待ち時間が長かった。オレは喫茶店の入り口の右横に目をやった。なんの変哲もない日常――欲を売り欲を買う人たちが行き焦っている。

 「アンタって地元を捨てて歌舞伎町で堂々とワケ分かんない商売して、報酬を受け取って。なんなの?ハタから見ていてすんごく下らないのよね、反社会勢力のパシリやったり。そのくせに自分を強く『見せる』。笑うんだけど、本当にダサい」

 大体、30〜32歳くらいの女。「誰だ?」と訊こうとしたところ、
「やっぱりウワサ通りね。そのハッタリ」と言い残し、去って行った。身長162cmくらい。体型は、ぼっちゃりとまでいかない程度の肉づき――男性ウケのいい体質だ。

 背中の随が震えた。何者なのか、そしてなぜいまここにいるのか、目的はなにか――困惑しかない。恐らく10〜15分ほど待っていた。その女と話したのは、おそらく1分。たったの1分が長く感じられた。

 時間軸がオレの意識のなかで乱れている、いや、壊れかけている…との焦りから、気味の悪い、汗が頬に滲んだ。

 部分的にネオンで光るようにカスタマイズしてある、黒のアルフォード。「いかにも」な外観。坂本はこのヤクザの世界への憧れが強くあるのだろう。

 任侠の道。仁義。陰徳。そうした、表の面しか見られなかったタイプなのかもしれない。ところが、いざ組員になると、想像と現実の違いで精神的に参ってしまいかねない。そう思える。かといって、セカンドキャリアもない。マヌケなわりに大変な毎日を送っているのだろう。

 オレには、娘や家族といった【責任】がない。その圧が分からないんだ。想像しても、それを口に出すと、イザコザの原因になりかねない。

 早くカタギになれ、坂本。

 「おい、中山。早く乗れよ。急かしてんのお前だろう?」と言われオレは目を醒ました。
 「悪いな。待たせ過ぎだ、そっちもよ」と、強気に出たものの「その女」との会話と衝撃が骨の髄に電撃を走らせている。動揺しているんだ、オレは。
 「さっきの話、暗かったか?娘のさ」
 「続けてくれ。気になるからよ」というと、いったん黙った坂本は娘のこと、妻のこと家庭のことを話した。多分終わりがない。

           *** 
 「で、聞いてんの?」と言われた時に、オレは自分がどこにいるのか気がついた――清楚ちゃんと秘書の待ち合わせの駅のコインパーキング。
 もう夜10時半。

 どうやら寝ていたらしい。疲労なのか?それもあるかもしれないが、これからが勝負時。これまでの経験で初めてのことだった。<元妻には教えていないことを「その女」は知っている――オレが地元を捨てたこと。ましてやオレの思考のクセや性格までわかっていやがった。ここまでオレのことを知っているのは「アイツ」しかいないのに…>

 「オイ、本当にヘンだぞ。人の話は聞かねえし。んで、どっちがバーに押し入るよ?」
 「オレ。店沿いの道路に車を停めておけ」
 「おうよ!」と坂本。気合いの入り具合が今回は段違いだ。
 「清楚ちゃんには11時になったタイミングで『遅れる』って連絡するようつたえてあんよな?」
 「もちろん!」と返ってきた。デコに向いてんな。もしくは自衛隊員。

 清楚ちゃんの顔を見られ覚えられたら、後あと厄介なことになりかねない。つまり、メッセージだけで会う約束をさせ、相手をコーフンさせる「ムラムラ作戦」。

 「じゃ、オレはバーの方向かうからな」と言い、車を降りた。

 バーまで徒歩10分程度。あえて遠くに置くんだ、待つ時は。じゃないと怪しまれる。歩きながら「その女」のことが浮かびそうになった。

 が、こっから先は一切のミスも許されない。一気に頭の切り替えをし、回転数を最上まで回した。長野の秘書らしき男が挙動不審な動きを。徐々に。徐々に近づいてくる。秘書は鼻の下を伸ばしている。

 そんな余裕、すぐなくなるのにな。

 秘書がバーに入ろうとした瞬間、左横から、
「今日来るハズの娘、来ませんから。『想定外』でしょ?」と言い、スーツのジャケットをナイフで少しだけえぐった。

 逃げられない、ってコト。

 ハザードを回している坂本のアルファード、略して、サカファードに誘導。案外おとなしい。抵抗しなかった。

 「じゃ、長旅行こうか、兄ちゃん!」と坂本。トラックの運ちゃんだ、次は。

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