朝に夜を記憶する——清里にて
まだきっと、誰も目を覚ましていない沈黙の濤声を聴く。はるかの遠くで浅緋色が足音を立てずに東の空にゆるやかにひろがり、目の奥までじんわりとあたたかな明るみが入り込んでくるのをじっと感覚する。そのやわらかな光体をそっとからだの中に閉じ込めてしまいたいという衝動に駆られて、わたしはまぶたを閉じた。
そのままひっそりと、時が足をとめる気持ちがしてくる。ゆっくりと朝のふかさをひとりじめしている幸福に包みこまれる。この安らぎのうちにからだが内側から伸びてゆくのを感じた。
この朝の静