ゴタンダクニオ

文章を書いています/物語・童話・小説・短歌など/号は月波/たまに糸綴製本・活版印刷/文芸同人誌『しんきろう』同人/和漢比較文学研究/Twitter: https://twitter.com/gotandakunio

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    蟄居通信・号外「ルノホート通信」と「月の中にいる男」

    先日、蟄居通信vol.2を配信しました。 蟄居通信についての記事はこちら こちらでも少し触れているとおり、 蟄居通信は当初から、隔月で号外を出すつもりで計画していました。 名前は「ルノホート通信」。 蟄居を「”活動できない=冬眠”が明けるまでの準備期間」と謳っているにもかかわらず、 蟄居通信を単なるインドア系情報コンテンツとして編集・配信するだけではゴタンダ的に不十分だと思ったため、定期的に号外で創作コンテンツを挟むことにしたのです。 「ルノホート通信」は、月の住人「

      • 2023啓蟄日記

        春が駆け足でやってきたので、2月までじくじくと聴いていた曲をすっぱりとやめて、バカがミタカッタ世界「春はあけぼの」を永遠に流しはじめる。急いで毛布を洗い、ストーブと加湿器を片付けた。剥がれていた右足の小指の爪が生え揃った。古いコートを処分した。すこしぼんやりしていて、フライパンの中身を焦がした。いっそ丸焦げにしてしまったほうが救いがあったかもしれぬと思う、ギリギリ食べられる手前という種類の哀しみを知る。春キャベツと新玉は見かけるたびに買う。木蓮、雪柳、連翹なんかが立て続けに満

        • 2023雨水日記

          ストームグラスが荒れていて、気圧の変動に堪える日々。 旅から戻ったらヒヤシンスが咲いていて、日中はいつのまにか、ダウンコートでは暑すぎるようになっていた。 春が来るのは嬉しいけれど、その前に「季節の変わり目」というやつを乗り越えなければならないのを忘れていた。 「立春日記」ではまるで昔のことみたいに書いていたけれど、気持ちが内向きになっていくのを感じる。 すこし閉じこもりたい気持ち。 整体の先生の話。若いうちに多少無理をしてでも仕事をがんばって貯金をする人は多いが、歳を重ね

          • 2023立春日記

            なにもかもがいやだったモラトリアムの頃は、春が来る気配すら疎んじていた。空気がぬるんでくるのを察知しただけで、ぴりぴりと澄んだ冬の呼吸にいつまでも閉じこもっていたくなる。世の人々が春の気配に浮かれ始めるのも許せなかった頃のことです。お花見の予定を立てたってどうせ雨だし、満開の頃にうまく調整できるわけでもないし、と、なにかにつけて悲観的になっていた。花粉症もましなほうなのに、あれはいったいなんだったんだろうと思う。 二月の思い出は長らく灰色の部屋に瓶詰めにされていた。あの立春

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            2023大寒日記

            日々の日記はつけているが、繁忙期は「限界」「仕事が」などしか書けず、振り返りたいときの情報として心許なかったので、短~中期的に区切って記録するのはどうか。日記ならぬ月記もいいなと思ったけれど、月末はいろいろとやることが多く、簡単な記録はつけているがまとまった文章は書けない。それで二十四節気。 2023大寒日記 文学フリマが無事に終わり、残業の日々に戻る。繁忙期の最後に、入稿・校了・入稿・校了が1週間毎にやってくるという最悪のラストスパートが待ち構えていた。暖房が壊れているが

            いなり

             おとふ屋さんに入ったらぼおっとしてしまって、気づけばすしあげを入れてもらった袋をぶら下げて歩いていた。とつじょ、お稲荷さんと思った。空が曇っている。これ以上寄り道をしなくても作れる。  ちょうどご飯がなかったので、おあげを炊いている時間で炊飯した。いい感じの桶なんて持っていない。隣で扇いでくれる人もない。気の利いた具がなかったので、ごまをたっぷり振った。それでもぴかぴかつやつやしたすし飯ができる。醤油とみりんとお砂糖でふっくら炊いたおあげを冷まして、小さなおむすびにしたすし

            新刊『詩集 人工島の眠り』と文学フリマ京都7のご案内

            文学フリマ京都7の新刊には歌集を出すつもりで、俳句・短歌・川柳のカテゴリで申し込んでいたのですが、7年ぶりに詩が書けたので、今回は詩集になりました。 この記事の前半は自分の覚書として事の次第を記録しています。詩集の冒頭を飾る、7年ぶりの最初に書けた詩(「球根」)を後半に引用していますので、そちらだけでもご覧いただけますと幸いです。 事の次第思い返せば2022年9月、Twitterでフォローしていた竹中郁botが手動で、とある展覧会をリツイートしていたことに遡る。 そのとき

            【読書記録】2022年もっとも印象に残った1冊

            大学の仲間と興した文芸同人誌「しんきろう」が10周年ということで、かつての仲間うちでLINEグループをこしらえ、なにやかやと意見交換をしています。今回のお題は「2022年もっとも印象に残った1冊」ということで。 『月の番人』(トム・ゴールド/亜紀書房) 絵本サイズの海外コミック。谷町六丁目のブックカフェ『書肆喫茶mori』さんでひと目惚れし、その場で購入しました。 過疎化が進む月のコロニーを守るひとりの警察官のお話。犯罪はゼロだけど、数少ない住人たちはひとりひとり地球に

            【委託・出品情報まとめ】

            ここ最近、ゴタンダクニオの本を取り扱いいただける機会が増えましたので、まとめてお知らせいたします。 1.「三富中立売書店」様への出品日時: 2022/11/26(土)〜12/4(日) 12:00-19:00 場所: 【堀川新文化ビルヂング NEUTRAL】 602-8242京都府京都市上京区皀莢町287 2F https://bookkyoto.wixsite.com/home ゴタンダクニオの既刊等をまとめてご用意していますので、近くにお越しの際にはぜひお立ち寄りくだ

            【出店】9/25文学フリマ大阪

            直前になってしまいましたが、明日のイベント告知です。 【第十回文学フリマ大阪】 9/25(日)@OMMビル2F 11:00-17:00 入場無料 ゴタンダクニオ【J-01】 〈2022年新刊〉 『歌集 架空の臓器』(A6/110頁) 〈既刊〉 ・物語・童話など ・ハロウィンのお話あります🎃 〈無料配布〉←NEW‼ 一週間死なないチャレンジ短歌 七首 文学フリマ大阪の一人出店は初なので、ご挨拶代わりにどんどんお渡ししていく予定ですが、手作りで数も少ないため連絡あれば取

            【円安】ドル紙幣でヨドバシカメラの冷蔵庫を購った話

            15年連れ添った冷蔵庫が壊れたのに気づいたのは8月の上旬、夏真っ盛りにアイスも買い置きできないという憂き目にあいました。 仕事の繁忙のピークも去った今、ようやく世の中に目を向けてみれば世間は円安の流れが止まらない様子。 …手元には十年以上前、1ドル90円やそこらで両替したドル紙幣が。 これ、今使うべきなのでは? ということで、さっそく冷蔵庫に使ってきました~ この記事の前半は、海外旅行で余った外貨を持て余している、同じような状況の人の参考になればと思い、ヨドバシカメラに至

            【ネットプリント】お楽しみカレンダー〈2022年6月〉

            梅雨が嫌すぎるので来月のお楽しみカレンダーつくりました。お楽しみtodoチェックリストと書き下ろし短歌入り。 冷蔵庫とか玄関とか壁に貼ってもいいし、手帳に挟んで持ち歩いてもいいし、はがきなので切手貼ったら誰かに送れるというのもさらによい。印刷料金だけですむのも◎ 使っていただいた際には報告いただけると喜びます!

            白線「笛吹き」第2号に参加します

            白線という同人の同人誌「笛吹き」第2号に月波名義の短歌を掲載させていただくことになりました。4ページ26首、今回のために書き下ろしています。 今年1月の文学フリマ京都で隣のスペースだったご縁があり、短歌のフリーペーパーをいただいて店番中の空き時間に読みはじめたところ、即座にびびっときたことから、改めて「笛吹き」を購入させていただいた、という経緯があります。さらにできないさんにはこちらの歌集も読んでいただけて、今回お誘いいただきました。とても嬉しく、光栄に思っています。 文

            【詩】客中行 四篇

            旅人駅前で 若い女がプラムを売っていた 夜のバスを待つため 酒場でビールを飲みながら それを見ている 女の旅は 文庫本ひとつポケットに入れて というわけにはいかない 着替えに お化粧品に コンタクトレンズに 香水に 薄いストール 腕時計に 折り畳み傘 ことばが出てこないときとかのカメラ そしてやっと チケットと文庫本 最近しりあったお姉さんが すすめてくれたアンデルセン 絵のない絵本 お土産のかみどめ 小間物屋さんでもとめた ひとはりひとはり丁寧に縫われたつまみ細工は 久し

            【覚書】第六回文学フリマ京都

            第六回文学フリマ京都に参加してきました。 次回こういった場に参加するときのために、自分用の個人的な覚書をしたためておきます。 2021年の第五回が中止になってしまったので、京都会場にしか参加していないわたしにとっては2年ぶりの出店でした。 新刊を予定通り携え、感染症対策や非接触のために自分なりの工夫をこらして臨みました。 文学フリマ京都は、今のわたしにとっては年に一度の晴れ舞台なのですが、この2年間というもの、こうした大きなコミュニティから離れてしまっていたせいか、ふらふ

            『歌集 架空の臓器』刊行によせて

            令和三年四月に歌集「無記名ラブレター」をこしらえたばかりですが、それ以降に生まれた短歌群をこの『歌集 架空の臓器』として編集しました。この短期間でも一冊にできるように、刊行を決めてからは一日一短歌などと言って意識的に詠んだ期間もあり、8割近くはSNS等にも投稿していない完全未発表の書き下ろしになっています。おかげさまで一時期の頭の中は五文字と七文字の言葉で溢れかえっておりました。 前回の歌集は和歌のように四季と相聞の5つの部立てで構成しましたが、今回はストーリーを感じられる