見出し画像

【覚書・感想】文学フリマ東京38

遅くなりましたが先月の文学フリマ東京38、ありがとうございました。

2017年の第一回文学フリマ京都から関西を中心に毎年出店してきまして(コロナでの中止を除く)、13回目の出店にして初めて東京会場に参加してみました。いつものように覚書と、前日入りの記録のことなど書いていきます。(「月岡芳年 月百姿」(太田記念美術館)に行ってきました!)

データ

出店歴:

文学フリマ参加回数通算13回目(前回は文学フリマ広島6)、個人活動歴8年目

出品:

・『写真集×短歌 イスタンブール旅行記』(2024年準新刊、第2刷)
・『詩集 水の反映』(2023年)
・アトリエゴタンダコラボアクセサリー「TÜRKÖRI-異国情緒-」シリーズ
※遠方からの直接搬入だったので今回は種類を絞ってました。

無料配布:

・チラシ『写真集×短歌 イスタンブール旅行記』(A4カラー)
・近刊案内『台湾土産話』内容見本(A4モノクロ)

⇩近刊案内『台湾土産話』カラー版データ(サンプル)を公開します(6/6)

経緯

・関西でそこそこ活動されている人たちが軒並み「東京会場は埋もれてしまう」「期待したほど売れない」と言われるのを聞いていたのですが、今年1月に出した『写真集×短歌 イスタンブール旅行記』の評判がよく、流行りのいわゆる“ZINE”の土俵で勝負できるんじゃないかと思い切って出店を決めました。ちょうど太田記念美術館で「月岡芳年 月百姿」がやっていたのも背中を押してくれた気がします。

・1月、2月の出店の結果在庫が心もとなくなってしまったので、今年9月の大阪まで見据えると、ここらで一度増刷しておくことに。今年は転職したところなので、本業に集中していると新刊が出せるかわからなかったため、しばらくイスタンブールで擦ることも考えてのことでした。何気にゴタンダ、初の重版です。増刷って余計にお金がかかるので、むしろがんばって売っていかなければならない矛盾を抱えつつ。

成果・印象など

・ワンチャンめっちゃ売れたりしないかなと期待したのは確かですが、もしくは全く売れないか、どちらかになりそうなところ、単純な売上だけを見るといつもとさして変わらない結果に「???」となりました。しかし今回単価の高い『写真集×短歌 イスタンブール旅行記』が販売のメインだったこともあり、話はそう単純でもないけれど…(1冊売れたら売上を押し上げますが、2,000円という額がそもそも購買のハードルを上げているため)。しかも今回、東京会場は入場料がかかってくるので、それがどう転んだか。しかし入場料に1,000円払うからといって、2,000円する本を買うかどうかの心理的ハードルはあんまり変わらないんじゃないかなという気もします。文学フリマの相場から言って、いくらフルカラーでもよほどピンとこないとポンとは出せない額であることは確か。

・驚いたのはそれよりも、チラシを渡す難易度が高かったこと! 前を通ってくれる人で、こちらを見られた感じがあったら渡したかったのですが、関心のない方にはけっこうスルーされました。人出が多すぎることで、いつもより多く断られた感じがあるのかもしれないけれど、通路が広くとってあるから遠目から見るだけで足早に通り過ぎていく人がほとんどの印象。開始30分くらいで「けっこう気合を入れて渡さないと無料配布すら捌けないかもしれないな」と覚悟を決め、少しでも関心のありそうな方にお届けできるよう気を配っていました。規模が大きすぎて、客側にしても一瞬の直観と情報量の選別をしないと欲しい本に辿り着けないのだろうなという感じ。それくらい広く、見るべき店がたくさんあるし、これが地方勢から見た東京の良し悪しかな、と。そういう意味ではたしかに地方の文学フリマのほうが余裕があります。

新刊チラシはあとで戻ってきてくれることを期待して最初のほうに集中的に撒き、その後に立ち読みをしてくれた人を中心に「次回は台湾で1冊作るので」と言って無料配布を渡していきました。イスタンブールがニッチなので、台湾ならもう少しウケはよかったかな? 無料配布があると、買わなかったお客さんの去り際も気まずくならずに済むので、けっこう忙しい日々ではあったけど無理やり間に合わせてよかったです。

(しかしそんな中、友人・知人ゼロのアウェイ会場でいつもと同じくらいの売上を出せたのはよくがんばったほうなのかも…?)

・「東京会場は埋もれてしまう」の意味は、告知ひとつとっても顕著。今回は普段より事前のSNS告知を心がけたのですが、SNS上のPV数とWEBカタログの「気になる!」リアクションがどうも比例していないような感じ。関係者のリツイートでPV数は上がるけれども、全体として「文学フリマ東京」を冠した情報量が多すぎて、WEBカタログまで飛んで見てくれる人の割合が下がっちゃうということなのかな。それだったら1/8の規模の会場で「あのスペース、2,000円もする本売ってる、ちょっと中身気になるな」と思って手に取ってもらえたほうが注目度は上がるような…。

・会場が二つに分かれており、移動しようと思ったら一旦外に出ることになるのはちょっと驚きました。開場時からいると疲弊するので、もし「立ち寄りたいな」と思った店があってもたどり着けない、諦めよう…ということはありえそう。

・見本誌コーナーがやや遠いなと思っていたのですが(それでも会場の端のブースに比べると近い方でしたが)、一人だけ「見本誌から来ました!」と言ってくださった方がいました。あんなにたくさんの中からピンと来てくださってありがとうございます…!

反省点

・チラシを渡すのが難しいと感じるくらい通路が広いのであれば、遠巻きに見て通り過ぎていく人にも目につきやすいように、机の前垂れはかなり重要な広告スペースなのかも。今回の準新刊はわりとタイトルのわかりやすい表紙デザインにしていたので、「イスタンブール」が目に入ってピンときた人には手に取ってもらえたと思います。

・これは本当に基本的なことですが、品川からのバスに迷って普通に搬入時間に遅れたのは失敗。大急ぎで準備を済ませたはいいものの、開場後は汗でどろどろになりながらの接客になってしまい、もう少し余裕を持ちたかったです。

#文学フリマで買った本

いろいろ見て回りたかったのはやまやまですが、どうしても入手しておきたかったできないさんの歌集だけはどうにかゲット。「くたばる」という俗っぽい言葉にあえて丁寧の「お」をつけてちょっと謎な連用形名詞になっているのが良すぎます。しばらくタイトルだけで味わっていられそう。

前日入りのこと

ここから先は文学フリマは関係なく、前日入りして過ごした記録です。

地方組が文学フリマで遠征するときは、できるかぎり観光とか用事を兼ねると満足度が高いことは以前から主張するところですが、今回もいくつかお楽しみを。

今回の『イスタンブール旅行記』の入稿直前、去年の12月に、当時一緒にイスタンブールを旅した友人Nに確認したいことがあり、数年振りに連絡を取りました。そこで刊行を喜んでくれたので、今は関東在住のNに今回会う予定が立ったのです。昼を一緒に食べて、共通の友人や最近見ている作品などの話をしながら過ごし、刷り上がった本を見てもらえたのがとてもよかった。

「月岡芳年 月百姿」

5時起きで新幹線に乗って午前中から到着しておきたかったのは、Nとのランチ前に太田記念美術館の「月岡芳年 月百姿」を見ておきたかったから。長年の研究テーマである「月人壮士」「桂男」ですが、Wikipediaの「桂男」で使われている画像が芳年の「つきのかつら、呉剛」だったこと、何年か前のNHKの日曜美術館で「月百姿」を知ったことで、以前から興味を持っていたのです。

開館前から行列できてた

浮世絵は長期間の展示に耐えられないとのこと、前期日程の展示だった「つきのかつら、呉剛」は日程が合わず生では見られなかったけれど、そのかわり「嫦娥奔月」と「梵僧月夜受桂子」は見られました。
会場を回り終わる頃には芳年の構図と物語の落とし込みに惹かれてやまなかったので、思い切って図録を買いました! 芳年が魅せられた月と月にまつわる物語をじっくりと読みたいと思います。

ミュージアムショップでは浮世絵の魅力が伝わってくるグッズがいろいろとあり、ついお財布の紐が緩んでしまいました。中でも歌川国政(四代)「しん板猫のそばや」のそばかぶりねこを象ったアクリルスタンドは抗いがたかった。こういうものは買い始めると際限がないため、長年オタクやってるくせに今までアクスタとは一線を画してきたですが、ここにきてついに篭絡されてしまった感……。

散財!
かわいすぎわろた

その後は出産を控えた妹と会ったり、食事したりして過ごし、妹が仕事のツテで取ってくれた品川プリンスでゆったり体を休めました。ホテルという空間が好きすぎて、翌朝は朝食後にごろごろしすぎて搬入に遅刻しかけたのですが、、

贅沢時間
夜風×ビール

この前の週は土曜出勤で日曜も半分仕事みたいな感じでフル稼働していたのに加え、平日勤務後は無料配布の準備・印刷、荷造りをこなしており、土曜は5時起きで前日入りして朝から晩まで動いていたこともあって、文学フリマが終わる頃にはヘロヘロに。翌日も仕事のため一刻も早く帰洛して体を休めたかったので、打ち上げはちょっといいお弁当を買って帰りの新幹線で食べました。

おつかれさまでした!

おかげさまで文学フリマも余暇も併せて大収穫の東京旅になりました。次の新刊も鋭意やってきます。

文学フリマ当日はそばかぶりねこにさっそく店番(招き猫?)してもらいました。配色合いすぎ。



よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます。