大枝 岳志
一話完結〜数話完結の短編集を載せています。 あなたの息抜きのひとつに添えて頂けたら嬉しいです。
せきららな思いをぶち込んだりする場所でごんす。
神出鬼没のリサイクルショップ「酒井商店」が出てくる作品をまとめています。 ここで物を買う人は大抵えらい目に遭ったりしますが、酒井の店主はいつも飄々としてますね。 ちなみに実在する店舗をモデルにしてます。 どこに在るのかは、あなたの日々の行動次第で変わるかも。
あらすじ 五十五歳の鶴巻は日雇いで得た金をその日のうちに散財してしまう癖があった。 どうせ後のない人生だと言わんばかりに自らの人生を振り返ることなく、人を妬み、毒付き、欺き、破滅への道を歩み続けていた。 ある日、鶴巻の派遣先に新しく新人が派遣された。聞けば鶴巻と同じ五十五歳の広瀬という男であった。 同じ歳とは思えぬ健全な肉体を持つ広瀬であったが、実は元ヤクザなのだと言う。 ひょんなことから広瀬の自宅へ転がり込むことになり、五十五歳の親父二人の同居生活が始まったのであった。 ------------------------ 中年独身男性二人が織りなす、所謂「まとも」とは縁のない最底辺の社会を描いた連載小説のまとめです。
六月十日。その日、五回目となるお母さんの命日を迎えていた。母子家庭で育った私は、大人になるとお母さんのことを疎ましく感じるようになった。お母さんは年齢を重ねるたびに物覚えが悪くなり、そのたびに私を頼った。更年期のせいでやたらと心配性になり、三十を越えても独身のままでいた私の将来をお母さんは異常なほど心配し、離れて暮らす私に日を追うごとに干渉するようになった。 彼氏はいるの? なんで作らないの? いるなら早く連れて来なさい。孫はいつ見れるの? 〇〇ちゃんは結婚したんだってよ
平和な街に悪の組織が送り込んだ怪人ゲルゲの脅威に人々は逃げ惑い、パニックに陥っていた。 ビルや車は破壊され、ゲルゲの子分達が略奪を始めると、街から人々の姿は消え始めた。 それでも、人々は希望を諦めなかった。何故なら、恐怖マンが世界を救ってくれると信じていたからである。 恐怖マンは悪の組織に対抗する世界研究所が作り出した人造人間であり、元の性格は人を人とも微塵も思わないサイコパスであった。 その為、人々は恐怖マンに期待はしつつも出来れば会いたくはない……というアンニ
生まれてから親が離婚する小学校四年まで住んでいた場所は、山の中の住宅地という趣ではなく、山村や集落に近かった。 半径一キロ以内には在る店といえば日用品や雑貨などを置く古びた個人商店が二つ。神社の通りに牛乳屋、布団店、算盤塾が在るだけで、他には同級生の父が営む小さな歯科医と集会所。つまり、何もない場所だった。 そんな場所に在った家は僕が生まれたのとほぼ同時期に建てられ、なんでわざわざ不便な場所に家を建てたのか理由は不明だった。 造園屋を営んでいたのでダンプや資材を留めておく必
入社十五年。制作会社に入ったことに、これと言った理由はなかった。当時、面接官の 「モノの代わりに時代を作る仕事ですから」 なんて上澄みの言葉に感銘を受けてしまい、俺も時代を作りたいなんて意気込んで働き始めた。はずだった。 来月、通信会社に依頼されているイベント。クライアントとオンラインの打ち合わせが終わると同時に、入社三年目の馬島が困り果てた顔でやって来た。 「末永さん、困りました」 「うん、モロに顔に出てるもんね」 「そうっすか?」 「その癖、直しなよ。長く残
窓の外を眺めている。 都会のど真ん中から出発し、夜に灯る明かりの数が徐々に減って行くと、ようやく帰路につけたような気分になる。 朝のラッシュは最低だ。人々が電車に乗り込む為に押し合いへし合いし、ようやく出来た扉近くの隙間につま先を載せ、「乗ります」と周りにアピールをする。その必要に迫られる。自分が貨物になったような気分で、どう考えても指先しか動かせぬような状況の中で、電車は発車する。 そうもしてまで、更なる疲れを蓄積しに会社へ向かう。 帰りのラッシュもまた、最低
どうも、おこんち(こんにちは)。大枝です。 すっかり秋めいてきて、世間もいつの間にかクイズの季節になりましたね。 秋と言えばクイズですが、みなさん今年もクイズはしましたか? え?そんな風物詩はないって? そうですか……。 今回は秋という事で、うちの母方の祖母に関する「おばあちゃんクイズ」を出題したいと思います。 知らねぇ他人の知らねぇババアの事など知るか!と思うでしょうが、安心してください。 僕が生まれた時点でこのおばあちゃん、とっくに死んでいるので僕も実は知らないので
昼前に始まるその番組は、軽快なメロディと共に始まるごく短い時間で料理を紹介する番組だった。 毎日やって来る「今夜は何を作ろうか」に頭を悩ませる者達を救う救世主的な面もあり、番組はアシスタントとメインの料理人、料理研究家の二人によって進行するのが定番だ。 その日のアシスタントは駆け出しのタレント、山城明日香。メインは料理研究家の大木佳代子。 山城はまだ二十歳そこそこであったが、大木は今年五十になる。 「先生、さっそく今日の料理の紹介、お願いしますっ!」 山城が若
玄関でもベランダでも良いから、外に一瞬顔を出して鼻だけで息を吸ってみて 寒い、という体験ができるよ 外に居る人はボタンを一つ外してウロウロして、コンビニへ入れば逆の体験が 外で耐え凌ぐことしか出来ない人は助けてくれと少しだけ声を出してみて この言葉が届かないのもまた、刺激
七年前に母が他界、その二年後に父も他界し、職のない私が知り得る私以外の他人が世界から消え失せた。 生活は極めて穏やかではあるものの、それが脆い足場の上を単に落ちることなく歩けるようになってたことに過ぎないことは、理解している。 笑うことも泣くことも、一体どんな感覚だったのか今となっては上手く思い出せない。 小さな頃の薄っすらした記憶の中で、膝を擦りむいて傷を作って泣いたり、友人でひょうきんものの藤野がするモノマネに腹を抱えて笑っていたのは確かなのに。 隣町まで死に
老人ホームに入ってる祖母に会いに行く為に、僕はバスの一番後ろの席に座って山と田んぼだらけの景色を眺めてる。 乗客は僕と、もう一人だけ。 その乗客はかつて幼馴染「だった」女の子の咲来だ。 入口扉近くの座席に座って、顔を上げずにずっとスマホを弄ってる。 僕の存在には気付いているんだろうけど、高校一年になった今はもう口を利く機会すらない。 僕と咲来は家も近いし同じ高校だけれど、志望校が同じだったことは受験の時になって初めて知った。 疎遠になった理由なんてない。小
夢や目標なんて、日々を生きるだけで必死な人間にとっては手の届かない贅沢品だ。 一度踏み外した足場を立て直せる実力も気力もなく、ドライバーの仕事を二年前に辞めてからというものの、俺は単発バイトで食いつないでは滞納金を放置する日々を過ごしていた。 明日の食い扶持と、僅かに残った数百円をネット競輪に賭け続ける毎日を送っていたある日、登録している派遣会社からこんな嘘みたいなメールが届いた。 【☆★☆★☆緊急募集・日当3万円☆★☆★☆】 明日〇〇駅での倉庫作業が発生しました。
どうも、大枝です。物騒なタイトルです。思想が物騒です。 間取り図を見て向きの方角を説明するのに 「カンタンに言うと人が飛び降りようと走る方向がそのマンションの向き」 と説明して「物騒」と言われたりしている、大枝です。 父の暴力、というものを受けたことはあるだろうか。 何度か書いているけれど、僕は過去に実父から夜中に突然起こされて青痣が出来るほど背中をぶっ叩かれた経験がある。 顔が可愛かったから顔は叩けなかったんだろうなぁと今になっては同情してやるが、親はその後離婚。 小学四
掃除をするときや頭を使わない作業を家でする時、大抵ラジオを聴いている。というか、流してる。 何となく話の中に起承転結があることを望みながら、自然とお笑い芸人の番組を拝聴する機会が多くなった。 好きになった番組は過去の放送を聴くことも多く、先日掃除の手を止めてまで、つい耳を傾けてしまった番組があった。 お笑い芸人の空気階段による「空気階段の踊り場」という番組のコーナー(でもない)のひとつ「北野映画っぽい話」という幼少期の親の離婚やその後の再会など、どこかセンチメンタルなお話
澄んだ言葉はなんなのか 果たしてそれが本当に良いものなのかと思いながら 頭の中の容器に満ちた経験をぐるぐるぐるぐる やがて沈殿する上澄みではない言葉こそが真実なのだと思いながら しかし、沈んでいく言葉達をじっと眺めているうちに不思議なことが起こっていた どうやら上澄みの辺りに小さな人々が群がり、容器の淵でさも楽しそうに話し込んでいる様子が見える 普遍的なカップを用いて、それで上澄みを掬いながら飲み飲みしつつ、みんな心底楽しそうなのだ そんな思ってもみなかった光景に、私は
体調崩しておりました。 秋の香りを感じないのは病の所為かしら、そんなことはなく気候が奇行のようでした。 昨今の一番の出来事はマイク・タイソンがまだ58歳だということに驚いたことです。 秋ですね。
茶箪笥の前に整然と並べられた食器達にまともに付けられる値段などないと、買取業者は鼻で笑った。 母と私と、妹で協力し合って少しでも綺麗になるようにと、せっせと磨いて新聞紙で丁寧に包んだものの、結果は散々なものだった。 自分が原因だと分かっていながらも、父は私達に一切協力しようとしなかった。一皿一皿、一円でも高くなるようにと皿を磨く私達に背を向け続け、母が「手伝ってよ」と言っても返事ひとつしなかった。 まだ小学一年だった妹はまじないを掛けるように、黄色の皿にこんな言葉を掛