大枝 岳志

物書きと音楽、たまに模型。3〜5000字の短編をメインに投稿しています。 人の恐怖、不…

大枝 岳志

物書きと音楽、たまに模型。3〜5000字の短編をメインに投稿しています。 人の恐怖、不気味な世界観、孤独感をテーマにした作品多めです。エッセイも書いてますが、文は何かと長めです。 誰でも読める文がモットーです。

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  • エッセイ&脳内のおしゃべり

    せきららな思いをぶち込んだりする場所でごんす。

  • ショートショート広場

    一話完結〜数話完結の短編集を載せています。 あなたの息抜きのひとつに添えて頂けたら嬉しいです。

  • 酒井商店シリーズ

    神出鬼没のリサイクルショップ「酒井商店」が出てくる作品をまとめています。 ここで物を買う人は大抵えらい目に遭ったりしますが、酒井の店主はいつも飄々としてますね。 ちなみに実在する店舗をモデルにしてます。 どこに在るのかは、あなたの日々の行動次第で変わるかも。

  • 夕刻に死す

    あらすじ 五十五歳の鶴巻は日雇いで得た金をその日のうちに散財してしまう癖があった。 どうせ後のない人生だと言わんばかりに自らの人生を振り返ることなく、人を妬み、毒付き、欺き、破滅への道を歩み続けていた。 ある日、鶴巻の派遣先に新しく新人が派遣された。聞けば鶴巻と同じ五十五歳の広瀬という男であった。 同じ歳とは思えぬ健全な肉体を持つ広瀬であったが、実は元ヤクザなのだと言う。 ひょんなことから広瀬の自宅へ転がり込むことになり、五十五歳の親父二人の同居生活が始まったのであった。 ------------------------ 中年独身男性二人が織りなす、所謂「まとも」とは縁のない最底辺の社会を描いた連載小説のまとめです。

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【小説】 思い出タクシー 【ショートショート】

 六月十日。その日、五回目となるお母さんの命日を迎えていた。母子家庭で育った私は、大人になるとお母さんのことを疎ましく感じるようになった。お母さんは年齢を重ねるたびに物覚えが悪くなり、そのたびに私を頼った。更年期のせいでやたらと心配性になり、三十を越えても独身のままでいた私の将来をお母さんは異常なほど心配し、離れて暮らす私に日を追うごとに干渉するようになった。  彼氏はいるの? なんで作らないの? いるなら早く連れて来なさい。孫はいつ見れるの? 〇〇ちゃんは結婚したんだってよ

    • 倉庫の単発バイト

       先日久しぶりにとある倉庫へ単発バイトへ出向いた。  日頃動かせていない身体がいかに鈍っているかを実感したく、そして相も変わらず出自そのものが正体不明な人種のるつぼを垣間見る気持ちで勤務してみたのだ。  動機としては不純だろうが、他の方々もどうやらパチンコに費やす日銭を稼ぎに来ていたりと、似たり寄ったりなものであった。  A駅へ行き、ロータリーで倉庫へ向かう送迎車が来るのを待つ。  詳細指示のメールには車種は書かれておらず、ロータリーの何処へ集合すればいいのか不明であったも

      • 【小説】 アイアム・スリラー 【ショートショート】

         何不自由ない暮らしを四十半ばで形成した。以後、妻も子供達にも不自由などさせたことはない。長男はケンブリッジ大学を卒業後、有名光学メーカーへ満を持して入社。次男は弁護士の道へ。妻は週に三度もタンゴのレッスンに勤しんでおり、仲間達と気兼ねない交流を愉しんでいる。  それなのに、私はベンツのハンドルを握りながら、苛立っている。  どんな刺激も、どんな欲望も、叶えて来たつもりだ。  それなのに、手元に残るのはいつも何かが過ぎ去っていく侘しい限りの感情ばかりで、所詮は上辺だけの付き合

        • 【小説】 逆上がり 【ショートショート】

           一九九四年。秋の風が砂埃を舞い上がらせる夕景の霞む校庭の隅、一郎は鉄棒を握り締めたまま、歯を食い縛りながら佇んでいた。  悔しさの滲む表情の裏には、昼休みの出来事が隠れている。 「一郎、まだ逆上がり出来ないん?」 「ゆうちゃん、一郎はデブだから一生無理なんだって」 「だって俺らもう小五だで? それなのに逆上がり出来ないっておかしくね?」 「だーかーらー! デブには一生無理だって」  逆上がりが出来ないことをクラスのリーダー格、優太に馬鹿にされながらも、一郎は何も言い返す

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          【小説】 マジいかちい! 【ショートショート】

          「マジだりぃ」 「だりぃ。つーか、クソだりぃ」 「タバコ切れそうなんだけど。うわっ、だりぃ」 「オレの……うわ、あと二本しかねぇし。だりっ」  高校生のアキヒロとヨウスケは放課後の駅前で、ウンコ座りの姿勢で「だりぃだりぃ」と連呼していた。スマホ以前が折り畳み携帯で、そのさらに前が白黒画面の端末だった頃の時代である。  アキヒロは携帯のアンテナを伸ばしながら、前髪を弄りながら自慢げにニヤついた。 「ヨウちゃん、これヤバくね? アンテナ、八十センチ」 「え? それ光んの?」

          【小説】 マジいかちい! 【ショートショート】

          【小説】 戦争はもうやめよう 【ショートショート】 

           とある国の将軍は日々、思い悩んでいた。  外貨獲得の為にデモンストレーションとしてミサイルを打ち上げ続け、その精度は目標の数値に達成したものの、戦争の可能性が現実のものとなりつつあった。  将軍は部下達にこう、打ち明けた。 「このまま戦争になれば我が国は滅亡するかもしれない。何か良い手はないか?」  滅亡というキーワードに部下達は不安を顔に浮かべたものの、ある軍人がこう言った。 「では、将来の戦争を先に終わらせてしまうというのはどうでしょうか?」 「まだ始まってもない

          【小説】 戦争はもうやめよう 【ショートショート】 

          東8番街の奇跡

          生まれてから「実家」と呼べる拠点が、親の離婚や抵当に取られたり、最終的には要介護となった関係で彼此、四回ほど変わっている。 生まれ付いた家は二階へ上がると、右手に一番上の兄、左手には二番目の兄の部屋が在った。 その部屋へ続く階段には映画好きの兄達が集めたポスターが貼られていて、バック・トゥ・ザ・フューチャー、ベスト・キッド、トップガン等々、ハリウッド作品が大半を占めていた。 大人になった今でもアメリカ文化的なものに触手が動くのはこの頃の影響があるのだと思う。 そんなポスタ

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          【小説】 斎藤君の変 【ショートショート】

           いつものように学校へ行こうと家を出て、同じクラスの斎藤君が来るのを僕は通学路で待っていた。  中々来ないからまた寝坊したなぁって、少しだけ僕はムカついてイライラし始める。 「井上君、ごめん。低血圧で、僕は中々起きられないんだ。でも、走らないでくれよ? 僕って朝が弱いんだ」  斎藤君は寝坊をするといつもお母さんに肩を支えながら、そんなことを言いながら集合場所にやって来る。  今日もまた寝坊かな。あまり遅かったら前みたいに置いて行ってしまおう。じゃないと、僕まで遅刻して先

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          【小説】 既知との遭遇 【ショートショート】

           中学を卒業してから十五年。青春もだんだん遠い昔だなぁなんて思えて来た今日この頃だったけれど、同時に嫌な思い出もたくさん思い出してしまうことも。  思い出したくもないほどみんなが嫌っていた同級生に、今家という奴がいた。  顔はブサイクだけどとにかく頭が良くて論破が得意で、誰彼構わず口喧嘩を吹っ掛け、時に女子を泣かせてはゲラゲラ笑うような性格の持ち主で、学年のほぼ全員から嫌われている奴だった。  で、その今家は現在進行形で僕の目の前にいる。  小学校の頃、僕はオランウータン

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          空中散歩

          夢の中でよく見る光景というか、現象がある。 歩いてるうちに空中を蹴り上げてみるとそのまま身体は宙に留まり、もう一度蹴り上げてみると身体はさらに上空へ向かって跳ね上がる。 こんな夢を二十歳くらいからたびたび見ているのだが、文字通り驚愕した出来事がある。 それは漫画の「ワンピース」の中で、ナミじゃない方のボインがなんちゃらセブンみたいな組織に居て、空中を蹴り上げながら移動する何かしらのシーンを見た時のことだ。 (筆者は漫画に関しての記憶領域がデストロイの限りを尽くしているので、

          【小説】 夜のない街 【ショートショート】

           あまりに短い夏が過ぎると、名残を惜しむようにこの街の太陽は沈むことがなくなり、空は夜の存在をすっかり忘れてしまう。  一日中薄明りに照らされた極寒の霧が晴れる頃、外へ続く道のないこの街の中央へ、生活物資が投下される。  この街で生まれ育った私は、今年で十五歳になる。  けれど、世界の誰よりも世間を知らないし、世界の誰よりも冷静な目で世間を知っているつもりだ。 「ヴェラ! 信じられない物が届けられたよ!」  同級生のイヴァンが興奮気味に私の所へやって来て、DVDのパッケ

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          【小説】 干乾びる千の鐘 【ショートショート】

           小学四年の夏休みを迎えていた悠斗は昼間、居間で流れるアニメの再放送に見入っていた。夏休み期間は毎年決まって午前十時から十一時まで再放送のアニメが二本放映されるのであったが、その年だけは前半はバスケットのアニメ、後半は何故か特撮物だった。  年代的にヒーローモノに縁はなかったものの、やたら古臭い映像で流れる怪獣達や、役者達のセリフテンポの悪さがかえって不気味に思え、内容はそこそこに悠斗は不気味な雰囲気だけを楽しんでいた。  蝉の声が大きなひとまとまりになり、庭を突き抜けて居

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          【小説】 彼方のサンマ 【ショートショート】

           半分人間の私はロボ部長に言われた通り、魚の中でも特級に美味いと言われている「サンマ」を求め、HOKKAIDOへ旅立つこととなった。  羽田区に在る廃ビル第三ターミナル。テレポート待ちの行列に並んでいると、ロボ部長が私の肩をポンと叩いた。  労いの言葉でも頂けるのだろうかと思いきや、ロボ部長はこんな追加のワガママを要求して来た。 「ピポガガガ! ピーポガ! ガガピピポ!」 「はいはい。分かりましたよ……ついでに買って来ればいいんでしょ?」 「ピガピガポー!」  そう言って

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          【小説】 川沿いに花 【ショートショート】

           僕の住む公団団地はこの街の墓標のように、川沿いにひっそりと並び建っている。  雨の多い季節になってから、家の中も外もずっと薄っすらドブの臭いが漂っている。  窓をほんの少し開けて雨の様子を伺っていると、去年死んだお母さんが話し掛けて来た。 「忠、ドブ臭いから閉めて! 窓開けてるの見られたら「忠君がまた外見てる」って噂になるから!」 「そんな怒らないでよ。どうせ誰も見てないよ」 「見てるんだよ! あんたが鈍感なだけなんだからね! お母さん、あとでご近所さんに「また外を見てた

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          【小説】 ゼロポイントエネルギー 【ショートショート】

          「博士、こちらが完成品になります」 「テストはしたのか?」 「ええ。十分の一の出力ですが……銀河が二、三吹き飛びました」 「そうか。その程度で済んだのなら、まぁ良いだろう」 「この蓄電池はエネルギーの究極……ですね。実際に作れてしまったことに、正直慄いています」 「その反応は素晴らしいことだ。突発的な進化を前にすると人は誰でも恐怖する。それが人類の歴史だよ」 「作動、させるんですか?」 「あぁ、作り替える為にね。突然の進化をも厭わない、そんな人類がいる世界にしなければならない

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          【小説】 ワニと盲目、そして棍棒 【ショートショート】

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