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ショートショート広場

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一話完結〜数話完結の短編集を載せています。 あなたの息抜きのひとつに添えて頂けたら嬉しいです。
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記事一覧

【小説】 誰が為に、 【ショートショート】

 三十五歳を過ぎた頃から、人と関わりを持つことが極端に億劫に感じるようになった。  一円…

大枝 岳志
2日前
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【小説】 よーい、どん! 【ショートショート】

 サッカーとかバスケとか、みんな憧れてやっているけど僕は苦手だ。  今は小学校六年生だか…

大枝 岳志
4日前
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【小説】 勿忘草を探して 【ショートショート】

 庭に咲く季節の花々は、朝から気持ち良さそうに顔を並べている。  妻の趣味で我が家の庭に…

大枝 岳志
5日前
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【小説】 父と私の土曜日 【ショートショート】 

 三ヵ月ぶりに危急の用件で実家に帰ることになった。キッカケはマネージャーを通して伝えられ…

大枝 岳志
6日前
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【小説】 衛星が通過します 【ショートショート】

 それはふた昔も前の、初夏の出来事だった。  田代町の住民は人を絶望的な恐怖を与える「衛…

大枝 岳志
7日前
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【小説】 子供に注意 【ショートショート】

 地方再生の一環として造られた老齢村へ取材へ行くために、私はハンドルを握っていた。  地…

大枝 岳志
8日前
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【小説】 芥地獄の観音様 【4万字】

 歯痒い季節なんてのはよ、とっくの昔に過ぎ去っているんだ。  俺の人生はこの歯と同じように痒くなるような神経はとっくに死んでいて、歯槽膿漏の腐臭が自分でも堪らなくなる程に、腐り切っているに違いねぇ。  それでも、俺ぁ死んじゃいねぇ。  外に人の気配を感じる。気合を入れて、ゴミ溜めの上で酒でフラつく半身を起こす。  その拍子にテーブルの角っちょに置いていた飲み掛けのペットボトルが転がって、ゴミの隙間からかろうじて見えている敷布団の上に零れた。既に染みが広がった上に新しい染みが出

【小説】 あたらしい生き物 【ショートショート】

 ついに、念願の茶釜を手に入れた。清水風芳作のこの茶釜を、私は長年に渡り探し求めていたの…

大枝 岳志
2週間前
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【小説】 スーサイド・トライアングル 【ショートショート】

 誕生日プレゼントに何が欲しい? って聞かれたらから、私はお母さんに念願のスマホをせがん…

大枝 岳志
2週間前
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【小説】 病名「いい人」 【ショートショート】

 浜本青年には幼い頃から決して揺るがない、とある信念があった。  それは、いつどんな状況…

大枝 岳志
2週間前
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【小説】 遠くの箱庭 【ショートショート】

 列に並ぶ人の顔はどれもこれも、杞憂を塗りたくったような蒼ざめたものだった。  コンクリ…

大枝 岳志
2週間前
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【短編小説】 瞬きする魚 

 アパートへ帰る途中、フードを被った黒ずくめの怪しげな青年と擦れ違った。  青年の目は魚…

大枝 岳志
3週間前
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【短編小説】 不慮の事故 

※怒鳴る系のパワハラ、及び出血を伴う残酷描写があります。 心の臓が弱い方は、是非ご遠慮下…

大枝 岳志
3週間前
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【小説】 骨枯らす風 【ショートショート】

 到着を知らせるチャイムが延々と続いているが、一分近く経っても目的の電車はホームへ姿を現さなかった。  ぼんやりと立ち尽くす者が数人、電車がやって来るはずの下り方面に顔を向けている。  その中には苛立って猿のような奇声を上げたり、また、会社に遅れた分の損害を無理矢理に勘定して騒ぎ立てる馬鹿もおらず、皆一様に大人しく電車の様子を伺っている風だった。  それはこの時間が平日火曜の午後二時だから、ということが大いに関係しているのだろう。  電車を待ち侘びる者は若者や主婦層が大半だ