【小説】 月並みの裏切り 【ショートショート】
プレゼントの箱を開けた途端、それまで浮かれ調子だった彼の表情が一変した。
箱から取り出された彼が「欲しい」と言っていたはずのスマートウォッチは、指の毛の少ない彼の手によってテーブルの上に無遠慮に投げ出された。
「柚乃さぁ、コレ違うじゃん。こういうのってさ、裏切りじゃない?」
「でも……翔也が欲しいって言ってたのと色も形も合ってるはずだよ? 私、何度も確認したもん」
「だから違ぇって! 今は違うんだよ。オレンジ欲しかったけど、もう気分じゃねぇんだよなぁ」
「そんなの……言