【小説】 芥地獄の観音様 【4万字】
歯痒い季節なんてのはよ、とっくの昔に過ぎ去っているんだ。
俺の人生はこの歯と同じように痒くなるような神経はとっくに死んでいて、歯槽膿漏の腐臭が自分でも堪らなくなる程に、腐り切っているに違いねぇ。
それでも、俺ぁ死んじゃいねぇ。
外に人の気配を感じる。気合を入れて、ゴミ溜めの上で酒でフラつく半身を起こす。
その拍子にテーブルの角っちょに置いていた飲み掛けのペットボトルが転がって、ゴミの隙間からかろうじて見えている敷布団の上に零れた。既に染みが広がった上に新しい染みが出