フォローしませんか?
シェア
大枝 岳志
2024年3月12日 18:19
酒井商店とかいう、最近近所に出来た怪しげなリサイクル店で目覚まし時計を買った。 買った、というか買わないとお店を出られそうもない雰囲気だったから買わざるを得なかった。だって、ガラクタばかりの狭い店内でキツネ面の店主がずーっと僕のことをニコニコ眺め続けていたものだから、何か買わないといけないかなぁって空気だったから……。 買ったのは三百円の目覚まし時計だった。赤色で金のベルがついた、いわゆる
2023年6月26日 11:46
先日、商店街を歩いていると「酒井商店」という小さなリサイクルショップが新しく開いているを見つけた。 店の中は狭く、あちらこちらにごちゃごちゃと物が積まれており、リサイクルショップというよりまるでゴミ屋敷のようであった。 これはすぐに潰れるだろうと思っていると、丸眼鏡を掛けた痩身の店主に声を掛けられた。「まだオープンしたばかりで、散らかっていてすいませんねー。そのうちキレイにしますから」
2023年1月17日 22:58
親の愛情をたっぷりと受けながら育つ夏美は、高校二年の夏を迎えようとしていた。友人達の多くは海へ行く話で盛り上がっていたり、彼氏と祭りへ行く約束をしていたり、青春を謳歌する姿が教室のあちこちで見られていた。 こんな話になると、日頃明るい夏美はだんまりを決め込んでしまう。 中学に入ってから体重が増加し、やたら物を食べるようになった。 両親も娘に手を掛けるのを惜しまず、好きなものは何でも作って食
2022年7月25日 12:46
【前編はこちらから】 ミズナに告白されてしまった夜、家に帰ってもドキドキしっぱなしで眠ることが出来ず、結局次の日は一睡もしないまま出社した。 仕事中も無意識のうちにミズナのことが頭に浮かんでしまい、仕事に全く身が入らなかった。ぼんやりしていると、同僚の安居という熟女好きにポンと肩を叩かれた。「庄野、どうしたんだよ? にやにやしちまってよ」「お……おう、よくぞ聞いてくれた。なんとだな、実
2022年7月24日 11:14
「相原さん! ぼ、僕とお付き合いして下さい!」「はぁ? 無理」 そんな風に職場の相原さんに見事にフラれたこの日は、僕にとって記念すべき日になった。告白失敗数が晴れて三十回を数えたその夜、僕は盛大に泣いた。 中学の頃から僕は全くモテなかった。背は低い癖に眉は太く、身体も太り気味だし、そもそも女の子を前にした途端、緊張してしまってどうにも上手く話せないのだ。その癖、性欲ばかりは人一倍強いから、
2022年7月2日 17:50
暑い、あまりにも暑過ぎる。何故こうも外は暑いのだろうか? 小生は毎年夏になるとこの嫌ったらしいったらありゃしない暑さに参ってしまうんでござる。それに夏休みの時期になると巷に蔓延る学生共は欲棒、いやはや、欲望を剥き出しにして盛り猿のように番になり、街を闊歩し始めるではないか。あれも気に食わない。 今年で四十三になり、生涯独身を貫いて来た小生を少しは見習って欲しいものでござる。 さてさて、小生
2022年6月7日 13:27
六月十日。その日、五回目となるお母さんの命日を迎えていた。母子家庭で育った私は、大人になるとお母さんのことを疎ましく感じるようになった。お母さんは年齢を重ねるたびに物覚えが悪くなり、そのたびに私を頼った。更年期のせいでやたらと心配性になり、三十を越えても独身のままでいた私の将来をお母さんは異常なほど心配し、離れて暮らす私に日を追うごとに干渉するようになった。 彼氏はいるの? なんで作らないの?
2022年3月5日 14:56
海原千晴は肩で風を切りながらバレエ教室のレッスンへ向かっている。その傍で彼女に羨望の眼差しを向け続ける金山美宏は通称「金魚のフン」と陰で呼ばれているが、美宏はそんな噂を耳にしても平然としていられた。踊ることでその才能を世に知らしめる千晴の傍にいられることに、同じ教室に通う美宏は悦びを感じていたのだ。「千晴様、お鞄お持ち致します!」「……やめてもらえない? 今は下校中だから、あまりにも人の眼
2021年10月27日 12:16
俺はずっとダメな人間だった。 高校を中退してからというものの、定職にも就かず遊び呆ける毎日を送っていた。 金が無くなれば親を脅してせびり、それすら尽きると街を歩く奴らから金を巻き上げるようになった。 金はギャンブルに風俗、そして浅い付き合いの仲間に見栄を張る為だけに次々と消えて行った。 消費者金融から借りた金は踏み倒し、裁判所からの呼び出しにも応じなかった。 こんな俺がまともな職に
2022年5月5日 14:18
彼女と僕は共通の趣味がある。それは昭和の薫りを感じることの出来る、古びた商店街を巡ることだ。 週末の今日も千葉にある地方都市へと足を運び、昭和ならではの看板や照明がズラリと並ぶ商店街に訪れていた。「うわぁ、まだ「ナショナル」の店が現役でやってるよ」「洋樹、ほら! 電池の自販機があるよ!」「お! 稼働はしてないみたいだけど、これは貴重だなぁ」 目についたレトロな物に次々と飛びつい