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スキのなかのスキ記事

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#エッセイ

君はぬいぐるみを抱えて闇夜に眠る

君はぬいぐるみを抱えて闇夜に眠る

星降る夜に
君は熊のぬいぐるみを抱えて眠る

自分に呪文をかけてくれるなら
それが
本物でなくたってかまわないのだろう

眠れぬ夜は
闇夜の軋みも耳につき
まどろみと現(うつつ)の間を
君は何度もいったりきたり

安住の地を求めて
さ迷い続ける君
ぬいぐるみは語りかけてくれない
そのはずだ
君が抱いているのは
君自身なのだから

闇夜はいつしか
東の空から暁に変わり
白いレースの小窓から
君に光を

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三人の雪女

三人の雪女

私はたぶん三人の雪女を知っている。

私の母、松田ハルヱは山形県の農家で生まれた。母が生まれてすぐに母の母、私の祖母は体調を崩して他界している。それでも母は三人の兄、二人の姉を持つ末娘として皆から可愛がられて何不自由なく成長したという。そして、十五歳になるのを待たずして年齢を偽り試験を受けて日本赤十字病院に奉職した。南方で従軍していた長兄に会いたいという一心で父親に内緒で受けた試験に合格してしまっ

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名前も知らない兄を通して、父について考える。

名前も知らない兄を通して、父について考える。

 父からLINEがあって兄が亡くなったのを知った。
 兄と言っても父の前の奥さんとの子で、一度会ったことがあるだけで会話を交わした記憶もなかった。
 だから、知らせを聞いても何の感慨もなかったし、父に対する返信も考えてしまう部分があった。

 まず、僕は兄の名前を知らない。
 知っていることは父の前の奥さん(兄からすれば母親)は亡くなっていて、祖父母に育てられ広島に住み、34歳で心筋梗塞で亡くなっ

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「弱さ」もきっと返報性なんだと思う

「弱さ」もきっと返報性なんだと思う

「返報性の原理」というものを聞いたことがあるだろうか。

”人は何かしらの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱く原理”

のことだ。

何かやってもらったら自分も何かやってあげたい、

海外の方はわからないが日本人は結構こういった考え方の人もいるんじゃないだろうか。

最近になって気づいたことがある。

「弱さ」も返報性だな、と。

どういうことか、言語化していきたい。

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個性も社会性もない弱者がこの世界を渡っていくために。

個性も社会性もない弱者がこの世界を渡っていくために。

人間社会というのは群れで生活することを基本として営まれている。現代は“個性”と呼ばれる個としてのオリジナリティーが尊重されてる時代といえるが、それでも社会の本質は変わっていない。

人間というのはこの“社会”というものに対していかに折り合いをつけ、うまくやっていくかに人生をかけ、そして願わくば愛する人々に囲まれて最期を迎えたいと考えている。

しかし、それは人間が人間であるがゆえの矛盾をはらんでい

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冬の海を見ましょう

冬の海を見ましょう

酔っていたい気持ちと今日は酔いたくないぞという気持ちだったり、なんだかどうでもよくって酔ってしまったという口実を使って電話したい人が何人もいること、冬の海が全部忘れさせてくれる気がするよ
#小説 #コラム #エッセイ #本

海になってしまったのさ。

海になってしまったのさ。

海になってしまったのさ。

そう思えば、気持ちが楽になることもたくさんあるよ。

いろんな時の流れを止めようと。

頑張っている人をたくさん見るけれど、

どうしようもないこともある。

そんなときにはこう思えばいい。

海になってしまったのさ。

小さな灯りは街の文具屋さん

小さな灯りは街の文具屋さん

 ✴︎冬ピリカグランプリに出す作品として、幼い頃の思い出を題材に書いていた。しかし、文字数が大幅にオーバー。こちらは応募作として出すのはやめて、記事として出します。

注)ピリカさんより、お知らせ。

✳️エッセイは不可。必ず小説で。
との事です!!

もしかして、私の記事を見てエッセイでも大丈夫なのかな?勘違いさせてしまったら、ごめんなさい🙏

 ショートショートって難しいね🤭
 では、スタ

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自分の機嫌くらい自分で取れ

自分の機嫌くらい自分で取れ

「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」という茨木のり子さんの詩がある。

小学生のとき、この作品を教科書で読んで私は衝撃を受けた。

詩というものは、「クラムボンが笑ったよ」的な(これは詩ではないけど)
やさしくて、きらきらでふわふわの綿菓子のようなものだと思っていたのだ。

全く余談だが、そのときクラスの男子どもは、高村光太郎さんの「道程」に鼻息あらく「ドーテイだ!スケベだ!わーい!」と

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選択の基準はお金か時間か経験か。

選択の基準はお金か時間か経験か。

「贅沢は敵だ」
日本史の教科書に登場する上記の言葉。聞いたことがある方も多いのではないだろうか。
かつての自分の行動選択基準は基本的にこれだった。

裕福といえる環境ではなかった。

家計の空気を読んで、察して「自分が我慢すればいいだけ」、そんなことを言い聞かせてた。

お金のかからない方を選択、コストパフォーマンスが高い方を選択。一度買ったものはボロボロになるまで使い切る。まぁ、そういった意味で

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父親に恋愛した方がいいと言われたあの夏。

父親に恋愛した方がいいと言われたあの夏。

わたしはたぶんずいぶんと長い間

恋愛というものをしていない。

恋愛って正直よくわからないし。

すこしはわかるけど。

いやわからないよやっぱり。

なんでこの期に及んで恋愛の話を

書いているのか。

父親に恋愛をした方がいいと

言われたのだ。

いやいや。

もういいよって思いながらも

ふんって返事した。

それを言われたのも何年か前に

上京してきた父と会った、

ホテルのレストラン

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夢の中で死にたい

夢の中で死にたい

もし世界一優しい世界を作れる人がいるのなら、それはきっと誰よりも悲しいことを味わった人間だ。
たとえ誰かに笑われても、誰も泣かないような幸せな場所があることを信じたい。信じさせてください。
花になって風に揺られて空を見つめていたい。遠くで子供たちの笑う声が聞こえてきて、暖かな空間がそこには広がっている。そのまま僕はこの世界からひっそりと消えてしまいたい。
僕が美しいと思う情景はいつだって夢の中にし

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169 心を耕す

169 心を耕す

雨が去ったと思ったら雲が残って、ぐずぐずした空が続く日々。
叔母の家の近くにある山には、もうリンドウが咲いているらしい。
濃い青色の花は涼しげで、秋の訪れを思わせる。
季節がゆるやかに、でも確実に移り変わる中で、私はコーヒーを飲みながら仕事をして仕事をして仕事をしていた。

私はわりと細かくこだわる方で、例えば人の文章の校正をする時に、気になる言葉があったらとことん調べてしまう。特に専門外のことだ

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恋とか愛とか、結局わたしは知らないことが多いまま。

初めて恋人ができたのはいつ。

その問いかけは静かに私をあの時間へと引き戻し、佇んでいた21歳の私が控えめに答えてくれます。あのとき私はまだ何も知らなくて、ただ大きな焦りと悲しさや惨めさを抱えていただけだったけれど、そこから恋人が救い出してくれたと思っています。元、恋人が。

けれども初めて付き合ったのはいつでしょう。これには答えられない気がします。だって、本当にちゃんと人と付き合ったことは一度も

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