小説のようなもの

海辺の魔女 〜はじまり〜 ①

「もう書くことなんてないよ。
 いったい何を書けばいいの?」

僕は頭を抱えている。

「何を書いてもいいんだよ。」

海辺の魔女は言った。
いつもそうだ。
魔女はグレーがかった肩まで伸びた髪をいじりながら、素っ気無く答えた。

「あんたが好きな事を書けばいい。
 食べ物のこと、天気のこと、自分のこと。
 なんでもさ。
 なんでもいいのさ。」

僕が海辺の魔女と暮らし始めてもうすぐ一月が経とうとし

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かつて好きだったものたちへ

出会いがあれば別れもあるって、言葉では聞いたことがあっても、なかなかその時が来るまで実感をともなわない。

出会うこと。
好きになること。

これは本当に簡単だ。

そしてずっと同じ熱で好きでい続けること。

これは少し難しい。

でも。

しかし。

同じ熱ではないものの。

少し熱が冷めただけで、静かな遠火のとろ火のように、ずっと好きでい続けることはある。

よくある。

かつて愛した絵本やお

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アリガトゴザイマス!ワタシモスキデース
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鳥肌立ちました

カウンセラーにそう言われた。

昨日は、自分から、会いに行った日。カウンセリングと前からお会いしたかった方に会いにいきました。カウンセラーは女性で、可愛らしい方、話を聞いてくれるのが、そう、傾聴してくれるのが嬉しい。

前回のカウンセリングからの振り返り。最初の頃は、良いのだけど、振り返るのは、悲しい作業。気持ちの整理ができているところと、まだ、片付いていないところがあり、その片付いていないところ

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永遠の片想い

私と世界の境界線がまだ曖昧だったころ、わたしはあの子が好きで、あの子もわたしを好きなのだと思っていた。

おはよう、と言われて嬉しくておはようと返す。

詠子ちゃんの持ってる消しゴムかわいいね、と言われて美衣子ちゃんの鉛筆もキラキラしててかわいい!と返す。

初めて一緒に買い物に行ったのは、初めてのブラジャーで、お互いに勇気が出なかったので、一緒なら買えるかも……と行くことにしたんだった。

その

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アリガトゴザイマス!ワタシモスキデース
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大事なぬいぐるみ

私のシーツを洗うためだろう。母が、私のベッドの上に寝ていた1匹のぬいぐるみを、アルトサックス入れの上にちょこんと座らせていた。そのぬいぐるみは、私が娘のように可愛がっているものだ。それなのに母は、何ヶ月も開けられていないアルトサックス入れの埃の上に置いた。

それに気づいたとき、すぐさま下ろして綺麗な自分の、デスクの上に座り直させてあげた。そして、母はデリカシーのないただのぬいぐるみだと認識してい

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…嬉しい。
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あなたって vol.1

あなたってつくづく、本当に欲張りだけどハンパな人間じゃない。

そんなに色々持ってるくせに。

そんなに沢山チャンスが巡ってきているのに。

そんなに好き勝手に振舞ってることが許されてるのに。

その割に、どれもこれも中途半端。極める って言葉の意味、考えたことがあるのかと思う。必ず投げ出すスタンス、傍迷惑しちゃってるわよ?

よく、私にはこれしかない、これしか出来ない人間だ  って言っている人が

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ありがとうございます!
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軒先にて

いつか返そうと思っていた人が、いつかの内に、いつの間にか自分の傍からいなくなっているなどと、ほんの少しも考えてもいなかった。

 変わらずに迎えてくれた古い家。それは、ちっとも変わっていないかに見えたのに、そんなことはありえなかったのだ、と思い知る。いや、変わったのは自分も同じなのだ。

 若い時分には考えもしなかった。まだ若く力強い両親が年老いて行き、いずれはこの世を去ってしまうなどと。そして、

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テレるぜ♡
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仮想通貨ビットコイでは同じコインを別の取引で使うことを二重支払いと呼ぶ。ばれぬようプログラム上で処理し、甘い汁を啜る連中は確かに存在する。だが我々が注視するのは愛の二重払いだ。仮想の『愛してる』を別の人間にも振り撒く行為。二重三重にだ。それを取り締まるのが我々『恋愛警察』である!

告白かい? 罪な人だよ、あなたって人は♡
8

かいつまんで説明すると
5匹目の妹を産んで
ぬらぬらとしたそれを庭に埋め
数週間
すっかり成長した巨大なそれが
我が家に侵入し
七番目の私を食らい
八つ裂きにした

ここまでは理解できるね?

俺を信じるあなたを信じる!
6

今思えば、夢のような季節だった。

私はそいつと出会ったのは春だった。

今まで過ぎ去ったことを思い出さないようにと生きていた。
その私がこんな風に誰かを思い出すことなんて絶対にないと思っていた。
人生に絶対にないなんてないんだなと実感させられて、苦い気持ちになった。
しかも、その実感を渡してきたのがあいつってことが更に気持ちを苦くした。

期間限定。

その言葉がぴったりの関係だった。

勿論、その時は永遠に続くものだと思っていた

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見つけてくれて嬉しいです。
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