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すべての子どもは消耗品じゃない(4)

🎈リキとユキトの場合

■5.リキの母(2)

ふと気付けば、空は明るくなっていた。
もうすぐ5時。
やっぱり眠れなかったな。
ショックなことばかりだったから仕方ないか。

深夜のキッチンは、思考が闇落ちしやすい気がする。
長時間の作業用に置いてある折りたたみ椅子は私だけの居場所だ。
キッチンは私にとっての自室で、ひとりきりになれる大切な要塞。
だけど、考えごとには向いてなかったな。

ダイニングテーブルの一輪挿しの小さな花が目に留まる。
リキがプレゼントだって摘んできてくれた名前も知らない花。
今朝は優しく微笑んでくれる気がする。
ビタミンカラーの花びらが可愛い。
長く咲けるようにお水を変えてあげなきゃ。

あ、だめだ。
リキが自分でするって言ってたんだっけ。
自分でお世話したいだなんて初めて言うから、お花のプレゼントも成長ぶりも嬉しかったなぁ。

うーんと思いっきり背伸びをして、朝の空気を吸い込む。
ゆっくりゆっくり吐き出してからそっと目を閉じる。

さぁ、しっかりしよう。
しっかりリキと向き合わなきゃ。

優しい朝陽が応援してるよって伝えてくれるように、少しずつ部屋をあたためてくれる。

朝のルーチンをスタートさせながら、
ユキト君ママをスーパーで見かけたことをふと思い出した。

記憶よりも痩せていて表情が暗くて疲れているように見えた。
見てるだけで気が重くなって、話しかけようとは思わなかった。
関わらないで済むように、ゆっくり遠回りしてレジに向かった。

なんてひどい奴なんだろう、私って。
自分のことしか考えてない。
ママ友なんて言いながら、ぜんぜん友達じゃなかった。
思い切って「こんにちは」って声を掛けたら、笑顔を見せてくれたかもしれないのに。

あ、だめだ。
リキに「ユキト君と遊ばないで」なんて言っちゃってたんだ。
自分の子可愛さになんてことを言ってしまったんだろう。
私の意地悪な言葉は、ユキト君もユキト君ママも傷付けたはず。
言わされたリキも、嫌な気持ちになってただろうな。

あぁ、我ながら情けなくなる。
酷いことしちゃったな。
発達障害が何かも知らないくせに、ユキト君とユキト君ママのことを知ろうともしなかったくせに。

私、いつのまにこんなに冷たい人になってたんだろう。
学生時代もOL時代も、困ってる人の話を聞くぐらいはできてたのに、
ママになった途端、そんな余裕をひとつも持てなくなった気がする。

リキの為に頑張らなきゃと思うものの、ひとりで頑張るしかないのかなって不安にもなってしまう。
ユキト君ママもこんな気持ちになったのかな。

誰かに助けてもらいたいけど、絶対に実母にも義母にも言いたくない。
面倒くさい質問攻めにあうに決まってるし、騒がれたくない。
「子育てが間違ってたんじゃない?」なんて言われたら、ほんと立ち直れなくなるし。

もちろん、ママ友の誰にも話したくない。
グループLINEでばら撒かれて、私もリキも仲間外れにされるに決まってるから。

あぁ、だけど。
身勝手で都合いい人だと呆れられても、ユキト君ママと話がしたい。

聞きたいことがいっぱいある。
聞いて欲しいこともいっぱいある。
彼女にならいろいろ打ち明けても大丈夫って予感がする。
面白半分に他のママには言わない人だって信じられる。

まずは自分がやらかしたことをちゃんと謝ろう。
そうしなきゃ自分で自分を赦せないから。
ユキト君ママに赦して貰えなくても当たり前の気持ちで、
自分の気持ちに嘘つかないで本当の気持ちでぶつかってみよう。


旦那があんな状態じゃこれから先も頼れない。
私ひとりでリキをサポートしなきゃいけないんだ。
リキが普通じゃなくても、私だけはずっとリキの味方だ。
これから先もずっとずっと絶対に味方でいつづけるんだ。

しっかりしろ、私。
できる、できる、やるしかない!


長文になっちゃったけど、ユキト君ママにLINEした。
心を籠めてごめんなさいと謝って、できるだけ正直な気持ちをそのまま書き綴った。
安易な考えで傷付けてしまった以上、無視されるかもしれないは覚悟の上。
都合のいい時だけ頼ろうなんて考えが迷惑がられるのも覚悟の上だ。

いま私が頼れるのは、
私が頼りたいのは、
ユキト君ママだけなんだから。




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