【詩】その瞳が獣であった頃
頬を撫でる冷ややかな風
薄ぼんやりとした生を
わずかに蘇らせる
まだその瞳が獣であった頃
月は謎めいた明かりをもって
わたしの心を沸き立てた
夜が人々の存在を割り引いた時
そこには無数の孤独が広がり
ひとつひとつの名は失われ
ある種の集合体として
ただ美しくなった
どこからともなく
遠吠えのような慟哭が響き
夜空はそれをたしかに受け止めた
誰も彼もが
それをじっと
眺めていた
一人であるということが
他者との結びつきを一層深めた
その瞳が獣であった頃
私は一人だったが
幸せだ