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【詩】私の住む街

帰り道にふと
足元を見やると
右の靴紐がほどけていた
かがんで
結び直していると
迷惑そうに
サラリーマンが私を避けて
ぬらぬらと輝く夕陽の中へ
消えていった
私の住む街では
立ち止まることすら
気軽ではない

スーパーで買い物をしていると
きれいにラッピングされた
豚肉が半額になっていた
わずか半年ほどで
人生を終える彼らは
何かを考え
あるいは夢を見たろうか
屠殺して商品に変え
それでいて
売れ残している
そんな贅沢を
我々はどんな顔で享受すべきか
などと考えていると
冷凍食品を詰め込んだ
買い物かごのおばさんに
どん、と押された
私の住む街では
なにかに思案することさえ
気軽ではない

大事なお金は自分のために使ってあげてください。私はいりません。