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【詩】はじめて

はじめて目が合ったとき
ふたり
目を逸らした

すぐそばで飛び交う
あいさつや笑い声が
どこか遠くの
汽笛のように響き
たった二人きり
かのように
ふたたび
目を合わせ
今度は逸らさなかった

はじめて手をつないだとき
どこまでも
高鳴る胸に
惑いながら
同じ震える
きみの手のひらを
静かに抱擁した

夜明けのように
街と人々とが
優しく溶け合い
それは
ふたりが
別々の人間であることを
忘れてしまう
ほどだった

はじめて口づけたとき
勢い余って
歯と歯がぶつかり
少しおかしかった

身体の底から
途方もない
情炎が
唇をたどって
火を吹いた
触れ合い
まぶたを開けると
俯く君の瞳に
淡く夜景が
揺らめいていた

今となっては
もう次の
はじめて
はやってこないが
きっと
最後ではないので
君に新しい
はじめてが
訪れることを
心から
願っている



大事なお金は自分のために使ってあげてください。私はいりません。