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スキのなかのスキ記事

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#詩

君はぬいぐるみを抱えて闇夜に眠る

君はぬいぐるみを抱えて闇夜に眠る

星降る夜に
君は熊のぬいぐるみを抱えて眠る

自分に呪文をかけてくれるなら
それが
本物でなくたってかまわないのだろう

眠れぬ夜は
闇夜の軋みも耳につき
まどろみと現(うつつ)の間を
君は何度もいったりきたり

安住の地を求めて
さ迷い続ける君
ぬいぐるみは語りかけてくれない
そのはずだ
君が抱いているのは
君自身なのだから

闇夜はいつしか
東の空から暁に変わり
白いレースの小窓から
君に光を

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世界の終わりには

世界の終わりには

長い歴史の終着点は

どんな風だろう

大きな爆発音とともに

一瞬で消えていくのか

それとも静かに厳かに

フェードアウトしていくのか

または戦争という

愚かな行為で

既に傷だらけの地球を

最後の最後まで

痛めつけるのだろうか

いつどんな形で

その時が訪れるのか

誰にもわからないけれど

世界が終わるということは

地球の歴史も生物も

消滅してしまうということだ

もう無くな

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自分の機嫌くらい自分で取れ

自分の機嫌くらい自分で取れ

「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」という茨木のり子さんの詩がある。

小学生のとき、この作品を教科書で読んで私は衝撃を受けた。

詩というものは、「クラムボンが笑ったよ」的な(これは詩ではないけど)
やさしくて、きらきらでふわふわの綿菓子のようなものだと思っていたのだ。

全く余談だが、そのときクラスの男子どもは、高村光太郎さんの「道程」に鼻息あらく「ドーテイだ!スケベだ!わーい!」と

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森ガール

森ガール

朝の『霧』が 僕たちを包み込む

まるで おとぎの国の幻想

きみは そこに住む森ガール

『雲』はね 地表に近い場所では

『霧』に 呼び名が変わるの

だから元々『雲』でもあるのよ と

手際良く『霧』を 袋に詰めていく

真実を知らない方が いいこともある

遠くにあるから 憧れのままで

夢を見ていられるものなのよ

手が届くと それはもう

夢じゃ無くなるわね

森ガールは いたずらっぽ

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父親に恋愛した方がいいと言われたあの夏。

父親に恋愛した方がいいと言われたあの夏。

わたしはたぶんずいぶんと長い間

恋愛というものをしていない。

恋愛って正直よくわからないし。

すこしはわかるけど。

いやわからないよやっぱり。

なんでこの期に及んで恋愛の話を

書いているのか。

父親に恋愛をした方がいいと

言われたのだ。

いやいや。

もういいよって思いながらも

ふんって返事した。

それを言われたのも何年か前に

上京してきた父と会った、

ホテルのレストラン

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行くあてのない恋

行くあてのない恋

アップルミントの風が

気まぐれに 夏を連れて行く

誰もいない 公園で

空のブランコに 乗った

まるで 波のように

ゆきては帰るを 繰り返し

きみは眼差しを 遠くする

そこからは 何が見える?

もう その瞳に 僕は映ってないけれど

行くあてのない 一つの恋が

黄昏色に 染まっていく

そうして やがてくる夜の闇に

静かに 消えてゆくだろう

明日から 隣にきみがいないけど

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バカンス。

バカンス。

ここから抜け出して
楽しいところへ行こうよ
僕にしか聴こえない声で
君に誘われた7月のこと

迷わず飛び乗った
イルカの背中から
そわそわしてる貝殻たちに
いってきますと手を振った

熱帯魚たちの戯れに
とびきりのウィンクを
花火のように舞い上がって
そのまま星になっちゃった

珊瑚礁に導かれ
辿り着いた砂浜で
パラソルみたいに
クルクル回る

カモメにオーダー
トロピカルジュース
美味しそうに飲

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美しい女シリーズ005: 素敵な後悔をもって天の扉を開けた女。

美しい女シリーズ005: 素敵な後悔をもって天の扉を開けた女。

5月30日。。。日本にいる祖母が 二週間の山と谷を越え 息を引き取りました。
これは そんな大好きな祖母…後悔を抱えながら 天の扉を開けた 美しい女のお話。
私の祖母、栄子に捧げます。
(写真は 祖母が亡くなった日の空です)。

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ー 生まれ変わっても 俺とまた一緒になってくれるか?

トシは 中国のとある山頂で 妻に向かって そっと語

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かくれんぼ

かくれんぼ

言葉にしないと伝えられないのに

分かってはいても
自己満足でないか
押し付けがましくなるのでないか
言いかけ呑み込んで
そのうち
伝えることすら出来なくなるのかも
焦燥感とかくれんぼ

追っかけたり逃げたり繰り返してたら
上手に隠れ過ぎて
誰にも見つけて貰えなくなり

夕刻の公園に取り残されたような
ポツンとする気持ちだけは
かくれんぼしなくても
いとも簡単にわたし達を捕まえてくれる
#詩

詩)花火幻想

詩)花火幻想

機械―それから空と海 

私が美しいと感じることができるのは これだけ

あの晩 彼女はそうつぶやいた

花火の音が木霊していた

誰もが去年と同じように 花火を見て

同じように 歓声をあげているそのときに

人の声と雑踏から逃れるように

川辺に向かった

暗い川面には

せり出した樹が影を落としていた

火の玉が一つ 樹の周りを 飛び回り

昔 ここであったという 戦いが

連想された

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ことばの一生

ことばの一生

ことばの一生

ほんとうののことばを追い求める
すると、確かにこの先に見えたはずのそのことばは、
まるで煙のように すっと姿を眩ませてしまう

見失って、私は立ち止まる
どんなに目をこらしても、必死に痕跡を辿っても、
そこにはなにもない
まるで、最初から存在しなかったかのように

ただ、恋焦がれるように求めざるを得なかったことばが、
確かに存在したはずなのだ
そんな朧げな記憶が、
巨大な喪失感とと

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詩) 痕跡

詩) 痕跡

   痕跡

ふるえを知る者には
生を逃亡の中に駆け抜けることはできない
たとえ俯いたまま歩こうとも

怖れの故に身を寄せ合うものは少なく
嘘を創造するために産み出した美辞麗句には
ああ、何と蟻の如く人々はたかることか

   静謐の中にこの指輪を贈るとき
   かすかな想いは生活によって―――
   ああ、どこへ消え去るものか

人々は街に蹴りを与え
街は風を拒み
風は人々を無視して通り過ぎる

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泉のありかを知っている風

泉のありかを知っている風

何人か、女性の話を聞く機会があった。
性別についての話は難しいのだけれど、それでも自由でない女の人が、この世にはたくさんいて、それぞれに自由になりたがっていた。
娘でいるのが辛い、母でいるのが辛い、女でいるのが、その役割を果たすことが辛いと言っていた。

自由になる前に、逃げなければならない人もいて、逃げても追われてしまう人もいる。
時代が移り変わっても・・・と考えていたら、ある詩を思い出した。

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