連載小説:『七瀬は誰にも探せない』第十四話
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第十四話:『七瀬は誰にも探せない』
いくら泣いても信じられないアタシは、車へと走った。震える足が言うことを聞かず、何度も何度も転びそうになりながら。七瀬との約束をアタシは破った。躊躇いがなかったといえば嘘になる。だが、アタシを止める七瀬がいない今、約束を破ったアタシを非難する七瀬の姿がそこにあることだけを願っていた。ゆっくりと開かれたトランクの中。綺麗に整えられた小さなベッドに、壁に設置された棚。その横に、七瀬の洋服がのぞく洗濯籠。小さなエンド