げん(高細玄一)「もぎ取られた言葉」コールサック社より刊行中!

第1詩集「声をあげずに泣く人よ」2022年6月第2「もぎ取られた言葉」コールサック社よ…

げん(高細玄一)「もぎ取られた言葉」コールサック社より刊行中!

第1詩集「声をあげずに泣く人よ」2022年6月第2「もぎ取られた言葉」コールサック社より刊行 http://www.coal-sack.com/syoseki.html 横浜詩人会、横浜詩人会議、日本現代詩人会所属  茅ヶ崎市在住  「詩集の店」店主

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第2詩集「もぎ取られた言葉」が刊行になりました!

コールサック社様より、第二詩集「もぎ取られた言葉」が10月27日発売になりました。第1詩集「声を上げずに泣く人よ」ともども、よろしくお願いいたします。装画は前作に続きmichiakiさんです。 世界を解釈する際には、その地域で引き起こされている悲劇的な犠牲者の行為そのものを、「既成の言葉」を超えていく「新たな言葉」として認識していく必要がある。高細玄一氏の詩篇は現代詩の限定された言葉の美の世界を食い破っていき、不条理な世界の地域社会で犠牲者となって、この世界から抹殺されてい

    • 詩)脇役

      食べると洗い物が出る 小皿とお椀はまず水で表面を流してから水に漬けて 箸なんかの小物も一緒に 油ものは一通り洗い終わった後に最後 魚を焼く網も水につけて付いた油をうかせ そうすると割と簡単に落ちる 食べることはとても楽しい 楽しいことのあとに 洗いものがある 食べる 捨てる 洗う 拭く 水気をしっかり取って仕舞う また出すときに分かるように さて料理は 主役があって脇役がある 洗い物は要領よくかたずける準備があり 頭でなく手で 𦚰も主もなく 順番にこなす 生きる それは

      • 詩)燃えるようなキス

        燃えるようなキスを しませんか 鹿たちが恋人どうし 触れ合うときに交わすように お互いを見つめ合い お互いの眼の底にある お互いのコンプレックスを突き詰め じっと眼の中の真ん中にある 吐息を呑み込み 息を止め ゆっくりと上唇を近づけ 軽く噛み 含む ゆっくりと舌を入れ 離し ため息を漏らす ああゝ 体の芯をゆっくりと緩め その肩を抱き 愛撫し もう一度 唇を触れ合う 深く深く しっかりと じっくりと お互いの息を感じる 離して もう一度お互いの鼻を近づけ 息を確かめ 見つ

        • 詩)無明

          言葉が生まれる時 話しても話ても話し足りない言葉があり 湧き出す光を手で汲み取り トントンと寝ている人を起こし 小さなぬいぐるみで肩を撫で ひとりよりふたりがいいと思い 手のひらを合わせて そうしてずっと このままだといいと 言葉が生まれない時 話は途切れその先にあるものが重くのしかかる いつ殺されるか 恐怖が時間を支配し 人間の柔らかい皮膚はいともかんたんに破かれ 明日が来ないことを知り 子どもは泣くが誰も振り返らず 見捨てられた誰にも聞こえない絶叫が 干からびた手のひら

        マガジン

        • 異質をたたえる
          141本
        • 妄想
          227本
        • 詩 社会へ 個人へ
          208本
        • 詩 大切なものたち 記憶の中で
          165本
        • stand fm
          6本
        • note詩を読んで~僕が出会ったきらめく詩作品
          36本

        記事

          詩)アンダーコントロール

          僕らは ぼくとぼくは  安心している なぜかも考えないで 生きている 僕ら ぼくとぼくは 本当に誰かが苦しむことを想像しない だって僕ら ぼくとぼくは こうやって問題なく生きている 優先席に若い女性が座る 車内は混んでいる おそらく足の悪い年配の男性が彼女の前に立つ 彼女はスマホで何かを見ている だって僕ら ぼくとぼくは こうやって問題なく生きている 大阪では在日朝鮮人のことをチョンコと呼んだ バカチョンカメラとは チョンがキレる(シャッターがキレる)と シャッターがチョ

          詩)何色でもない花

          昨日午後4時30分ころから藤沢市円行付近より89歳男性が行方不明になっています。身長は160センチくらい中肉中背、髪は短髪で白髪まじり。灰色カーディガン、灰色スラックス、黒色スニーカー、茶色フチの眼鏡を着用しています。お心当たりのある方は。 僕はね どうして日本人はあんな無個性な服を着て会社に行くのかほんとに不思議でね。だってそうでしょう?みんなで示し合わせたように同じ形の背広を着て同じ顔をして同じような眼で同じ方向を向いて飲み屋で会社の悪口言ってるんですよ 本日午後2時

          詩)立ち眩む

          「無駄に並んでしまった」 ガザで避難民となった少年は何時間も列に並んで待っていたが、飢えている家族に食べ物を持ち帰ることができないことが分かった。 「死者」でなく「イスラエル軍に虐殺された人」が3万人、7割が女性や子ども。1時間に2人の母親が「死亡」でなく「殺されている」 立ち眩む なにも語ることが出来ず なにをやってきたのかも どんな意味があるのかも 低い声でささやくことで なにが変わるのだろうか 本当に考えること 僕にはなにが出来るだろうか 本当に苦しんではじめて

          詩)鼓動/窓を大きく開けて

          読みかけの本を伏せて 窓を大きく開ける 今日は少し肌寒い 本を脇にずらして眠る カーテンが揺れる くだける 前でも後ろでもない 縦でも横でもない 言葉でも形でもない なにか 在り続けること 在り続けられないこと 鼓動 人工的な冷たい響きの中でずっと蠢いて来た 違和感の時代に生きなければならなかった 甘くも酸っぱくもなく なにが価値なのか 虚構の幸せを目標にして 格差が上から塗り込まれ あるものは隠されて 汚いものはないものにされ 下へ下へと圧力ばかりがかかる 恥を知らない

          詩)異形の鬼

          それがいつから始まったのか 心のすみに住む鬼が表れて 脳みそに貼られたシールを 一枚ずつ剥がし 頭皮にこびりついたまっ白なボンドを 取れるまで 流してくれる 医者はマジックで書かれた暗号をみながら 「このあたりが少し異常ですね」と いつものように言う 長い時間 味気ない茶色の長イスで待っていたのに 答はいつも同じだった 答なんてもともとないのだ だから答があるふりをしているんだ 帰りの電車の中で いつも誰かの目線を気にしていた 気にしていたという形を 装っていた こんなら

          詩)ひかりはどこに

          ひかりはどこにあるのか 人間の顔と顔 そのあいだに 少年の頃 マックスウェルが開発したと言う 鉱石ラジオを組み立て 電気の必要のないラジオが出す音は 宇宙からの交信そのものであった 黒板で化学の先生から 鉱石ラジオがどうして音が出るのか説明していただくのを 不思議な気持ちで見ていた あの頃 ひかりはまだ短く 人間と人間 宇宙の端に たとえ失うものばかりでも 色彩は貧しくても  存在していた ひかりはどこにあるのか なぜ痛みは感じられず たった一枚の白い布が ずっと子ど

          詩)去る日

          4時51分発の始発は 不思議な連帯感 乗り継いだ列車は 仕事帰りと これから仕事の人間の まるで違う二種類が混じり合う 半分が寝て それ以外はスマホ 夜明けの街 列車の音が鼓動の 今日の始まりを告げる 最後の日はこうやって過ぎた

          詩)不惑 

          カネのあるやつはカネに迷い 地位のあるやつはもっと高い地位が欲しくなり どちらもない僕は ただ 走ることにした 走る この原始とつながる行為 その時 足には 体重の3倍の負担がかかるという 錆びついていた筋肉の一本一本が震え出す 走る なぜ走るのか 走りながら迷い また走る 45歳を過ぎた肉体は イメージ通りには動いてくれない 恐ろしく不格好だ それでも走る 不思議なくらいストイックになり 夜の暗闇を独り走る ブルブルと震える筋肉 単純な言葉がくるくると頭の中を駆けめぐ

          詩)言葉は白い紙に(四行詩)

          白い紙をじっとみている この世界はここにある この世界 見えている世界は僕の心の中 孤独だ 結局は立って生きるしかない 誰かの声を聞きたくて もしかしたら僕は もうひとりの自分が どこかに生きていると信じているひとりかもしれない たぶんどこかで 僕と同じもうひとりが生きていて 向こうで僕は、なにか滅びる予感の中で生きている 光が横断する 日常はそんなことの繰り返し 僕が諦めた世界 屈折した光の眩しさ 美しい世界を描こうとすればするほど 踏まれ傷つき 血か流れ 瞳をみる

          詩)ホムンクルス

          「神奈川県藤沢市今田の下水施設「今田ポンプ場」の建物内で、生まれて間もないとみられる男児の遺体が見つかった」 いまって沈むイメージだね 僕は沈んでいく 穴はだんだん広くなる 終わりがない 方向感覚を失い 行き場をなくし ここにいるしかないけれど ここはどこなのかはっきりとわからない
 毎日朝7時33分に家を出る 茅ヶ崎駅まで14分歩く 48分または53分の東海道線上りに乗る 横浜駅に8時22分に着く 28分の横浜発相鉄線快速に乗る 途中で快速から普通に乗り換え  三ツ境で

          詩)ひとつの言葉

          去る時が来て 男は自分のいた世界を振り返る この世界に生きてきたこと 何を踏み締めようとしたのか 踏み締めたその先には 何があったのか 見せることを禁じられた 胸の奥から 血ではなく まして愛でもなく 鉄の冷たさでもない ひとつの言葉を取り出し 見えないだろう まだ今は なにがうまれるか そこから飛び立つ蝶が いま 羽を広げる準備をしていることなど 蝶はいま おまえのその鼻先を 舞う 踏み締めた ひとつの言葉が 羽音になる

          詩)旧友

          広報にしばらく会っていない旧友の写真が出ていた。じっと見るが、目の所に面影があるが、若いころの決然とした口調で述べるあのイメージはなく、眼鏡の奥は温和な目で、趣味はステレオのアンプの組み立てと語るその雰囲気は、一つの季節が通り過ぎ、その季節の中で風を受け流すことなく、たとえ砕かれても尖った目じりを相手にきっちりとむけてた人間の眼の中に在るとは思えないほど、温和である。 1985年、旧友は国鉄分割民営化に反対する国労の組合員として、「人活センター」という名の隔離部屋に異動させら